老いた親とは離れなさい

茶の間においておきにくいタイトル。もちろん姥捨て的な話ではない。 介護のお休みをとることの厳しさとか現状すごくかゆいところに手が届く感じで書いてある。でも厳しい厳しいって嘆いているのでなくどう現状に落としどころを決めてやっていくかに力点が置…

人形有情

吉田玉男さんの芸談聞き書き。先日古いビデオをみていたら玉男さんの特集が録画されていて、わかぎえふさんなども玉男さんがとても好きということで出てこられていたけれど、この本にも玉男さんのお茶目な感じの人柄などもにじんでいる。何度か文楽に行って…

作家と猫のものがたり

コロナブックスから出ている「作家の猫」は、作家のプロフィールをネコを通して綴っているような感じだったけれど、これはネコを題材とした作品のオムニバスのような感じ。自分の飼っているネコの話を書いている人もあれば、ネコ論的な人もいる。 一番好きだ…

あしたから出版社

夏葉社という出版社のことを私は知らなかったのだけど、 夏葉社は1万人、10万人の読者のためにではなく、 具体的なひとりの読者のために、本を作っていきたいと考えています。 マーケティングとかではなく。 まだ見ぬ読者とかでもなく。 いま生活をしてい…

還暦からの電脳事始

一番おもしろかったのは「政治や経済とネットについて考えた」の項。お金がなくても誰でも立候補できる世の中、誰でも法案を出して議論を重ね投票し成立すると政府もそれについて審査しなければならない制度、など実現したらよいなあ・・還暦からの電脳事始(…

猫の本棚

猫をネコかわいがりしているヒトがどうも苦手な木村衣有子さんが、猫本についてまとめたもの。「愛別外猫雑記」の笙野頼子さんのの現実的で自分の足でたっていく視点、「ムーミン谷の彗星」における、ほの暗いけれど、暗部を描くことによってみえてくる希望…

溝口健二 集成

溝口健二の文楽もの「浪花女」のあらすじが載っているということで、家の奥まった本棚から出してきてみていたのだけど、自分の知らない、公開当時の「赤線地帯」の音楽をめぐるやりとり*1や、山田五十鈴や依田義賢などいろいろな身近な人からの寄稿がヴィヴ…

京都の喫茶店:昨日・今日・明日

前著「京都カフェ案内」からもう12年!もともと浮ついたところのない木村さんの著作だけどさらに深みや落ち着きを増していて、今のこちらの気分にちょうどあっている。 きちんと喫茶店の人に取材してその店の歴史をまとめてあり、とりあげられれている事柄…

染五郎の超訳的歌舞伎

染五郎さんが監修された歌舞伎の衣裳図鑑の本*1の端々から染五郎さんの意気が伝わりこの本も読んでみた。 さまざまな演目の解説を演じ手からのポイントで書かれていてとても読みやすいし、次の鑑賞ガイドにもなる。 野村萬斎さんの「萬斎でござる」*2も、伝…

ねうちもん京都

「お金をかけずに京めぐり」なんてサブタイトルがついているけれど、「お金をかけない」というところが主眼でなく、京都に友人が来たらこういうところに案内したいというような、ちゃんとした、私もお墨付きしたいような場所が並んでいる。値段も許容範囲内…

歌舞伎のびっくり満喫図鑑

客席からぼんやりみていたらわからないような細かいところにその役者さんにちなんだ紋様があったり、歌舞伎の小道具とそして大道具の工夫について書いてある本。写真も多くとても楽しい。 この本を読んでいたから「小栗栖の長兵衛」をみたとき*1もかわいい桃…

3人がいっぱい 1

小説新潮昭和48年1月号から昭和51年6月号に連載していたもの。前半は3人選んで、和田誠さんが質問して絵の横にその答えを書いている形式。途中からは写真のように和田さんは絵担当で、その時々の書き手が同時代の3人を「一見弱そう」とか「キザな三人」と…

歌舞伎のかわいい衣裳図鑑

文楽をよくみにいく友人は双眼鏡で衣裳のすみずみをみていたけれど、これは歌舞伎だけどなるほど衣裳や小道具というのはこんなに隅々まで工夫されているんだと読んでいて楽しくなる本。 今風に楽しくかわいらしく構成されており、楽しい。 コラムでのこぼれ…

新・東京23区物語

東京の土地鑑のない息子に東京のことをきかれ、自分は泉麻人さんの本を普段から好きなもので、この本は読んでないにも関わらずすすめてしまい、やはり自分で中身を確かめた方がいいなと読んでみた。 久しぶりに泉さんの本を読んでみて表現のうまさ、そして、…

八二一のにゃんぽの達人

八二一さんの本をはじめてみたのは枡野浩一さんとのコラボ本。そこで出会って、そのあと「はっちゃん」という猫を保護されての記録写真がとても美しく追っかけてきたけれどこんなのも出ているんだ・・関西のいろんなお店の看板猫を追った猫びよりの連載が本…

不機嫌なメアリー・ポピンズ

「日の名残り」*1を読んだ後、確かアマゾンで「この本を読んだ方はこちらの本も・・」みたいなリストのところに載っていてこの本に出会った。「眺めのいい部屋」「大いなる遺産」「コレクター」*2などの作品は映画ではあまり表現されていなくても階級の問題…

日の名残り

映画よりイギリス流の皮肉っぽい笑いの要素を強く感じた。主人公の執事、映画版*1より辛辣に描写されていると思う。思わず笑ってしまうようなところも原作の方が力が入っている。日の名残り (ハヤカワepi文庫)作者: カズオイシグロ,Kazuo Ishiguro,土屋政雄…

戯作三昧・一塊の土

ものすごく久しぶりに芥川龍之介の作品を読んだ。言葉遣いの美しさにうたれ、それでいて読みやすいところが意外なほどだった。芥川に対して、勝手なイメージで、すっとして、離れた所から人生を描いているというようなイメージを持っていたのだけど、「一塊…

萬斎でござる

変な謙遜とかなくて気持ちのよい本。芸とちゃんと向き合っている。狂言に興味を持った。 同時期に読んだ「統合失調症がやってきた」と「萬斎でござる」、両方とも人間として生まれてきて与えられた使命を与えられた時間でどう生きるかということを考えさせら…

統合失調症がやってきた

おふたりのことは最近テレビでみたことがあった。「松本ハウス」という漫才コンビで、ハウス加賀屋(はいっておられたグループホームからつけられた芸名らしい)さんが統合失調症にかかり、10年くらい活動停止していて2009年にコンビを復活したこと。「電…

高峰秀子 夫婦の流儀

人生で大事と思うことを見極めて必要ない部分をそぎ落とす潔さ、これが二人の生活の幸せの基盤だな・・シンプルな趣味の身の回りの物もみていて心地よいし、高峰さんらしい感じがあふれている。高峰秀子 夫婦の流儀 (とんぼの本)作者: 斎藤明美出版社/メーカ…

ばかもの

ずっと前に買って冒頭の結構激しい描写になんとなく気後れしそこで本がストップしていたのだけど、文庫本を持って出かけたいときにふとこれを携えてしっかり読み始めたら、ああこんな人たちがここに生きていたのにずっと自分は知らずに置いていたんだ!と思…

55歳からのハローライフ

NHKでドラマ化され*1、その番宣で村上龍氏の新境地と紹介されていたのに興味を持って読んでみた。ドラマみてからのが二つ、あとの三つはドラマより先に。ドラマとはちょっとずつかえてある。「ペットロス」の終わりの方とか、「キャンピングカー」の設定とか…

野武士、西へ

久住昌之さんのつくるものが好きだ。泉晴紀さんと泉昌之名義でつくられた「ダンドリくん」やダンドリくん (上) (ちくま文庫)作者: 泉昌之出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1998/12/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 28回この商品を含むブログ (16件) を…

アニメーション学入門

先日から東映動画の映画をみてそのタッチに惹かれ、東映動画出身でジブリに行く人も多いことから、アニメーションの歴史について知りたいなと思い読んでみた。アニメショーンの定義からはじまって大学で講義を受けているような感じ。知りたかった、どの作家…

小さいおうち

いまごろ読んだのだけど、とてもよかった。読む前、装丁などからおとなしすぎるのでは?という危惧があったのだけど、昭和初期のモダンなおうちと、現代との交錯がうまく、書き手の女性の親戚の子への遠慮ない言葉でバランスがとれ読んでいておもしろい。出…

亀のひみつ

先日、倉敷の蟲文庫というところに立ち寄った時*1、店主の田中さんの書かれたこの本が並んでいて、ふと手に取ると猫を追い掛け回すカメさんの生態描写、写真につけられたキャプションのおもしろさに惹かれた。なので、京都に帰ってきてからしっかり読んでみ…

評伝 ナンシー関

この著者の本は「アマゾン・ドット・コムの光と影」というのを読んだことがある。アマゾンにバイトとして潜入したルポ。この本も同じ著者らしく足で稼いでナンシーさんの人生を周りの人の証言と作品でかためていってる。自分は本当にナンシーさんが好きだっ…

歴史の読み解き方

テレビで歴史上の人物の功績などを説明する磯田さんの新しくて愉快な語り口にとても惹かれ一冊著作を読んでみた。自分の知る磯田さんのあのままの口調で書かれたわかりやすく興味深い本。 歴史を過去が遺してくれた教訓として、一次資料によって分析し、今日…

文楽へようこそ

同学年の文楽鑑賞の先輩に教えてもらったのだけど、ほんとに文楽をみはじめた自分にぴったりのよき本だった。表紙の人形遣いのお二人を中心に、あとは昭和40年生まれ前後の(中堅とお呼びしていいのかな?とにかく生まれた年代が自分と近いものだから感覚…