伝統芸能

もう少し浄瑠璃を読もう

文楽の公演などで、ある一場面だけを演じられ、そこに至るまでの話はあらすじで追うしかないということがままあるが、橋本さんはその物語の本質、肝要なところに切り込み、あるときは浄瑠璃ではなく同じ題材の説経節などに長い時間をかけて解説し、これはこ…

ひばり・チエミの弥次喜多道中

ちょうどこの映画を京都ヒストリカ映画祭でやっていて、ミルクマン斎藤さんの対談に興味をひかれ、映画祭でみるのが一番なのだけど、次善の策としてビデオで借りてみてみた。 実はひばり、チエミ両者とも迫力がありすぎてわたしは少し苦手で・・わたしにとっ…

立川志の輔独演会

京都造形芸術大学の春秋座にて 三番叟 松永鉄九郎 悋気の独楽 志のぼん 買い物ぶぎ 志の輔 大河への道~伊能忠敬物語~ 志の輔 志の輔さんはテレビで親しんでいるけれど、あの調子で(というか、生の高座の方がずっと遠慮なく自分を出されている感じで)話芸…

小判鮫

映画comwikipediaの衣笠監督のところにはこの作品についてこのように載っているが、*1 1946年(昭和21年)、明治開化期の鉄道建設を巡る利権争いを、東宝オールスターで描いた喜劇映画『或る夜の殿様』が戦後第1作となり、翌1947年(昭和22年)に島村抱月と…

をり鶴七変化

お家騒動に二役をからませてあって、先日観た「桃太郎侍」*1の系譜を思い浮かべたが、ビデオにはさまれた「山根貞男のお楽しみゼミナール」という冊子によると、 お家騒動、女形の役者、二役と見てゆくと、「雪之丞変化」(三五)から「小判鮫」(四八)「蛇…

鬼の詩

movie walker 冒頭 原作者藤本義一と笑福亭松鶴師匠の対談あり。ATGらしさ、70年代の香りも漂って堪能した。 伊勢大神楽の二十三代山本源太夫氏の名前も製作協力のところに。昨年1月にNHKでみた「疾走!神楽男子 伊勢大神楽の若き獅子たち」という番組を思…

歌行燈

以前成瀬版*1をみていて、うっすらとした記憶だが成瀬版の方がうまくまとまっていたように思う。成瀬版をみてからなので衣笠版少し冗長に感じるところがあった。 山本富士子の泉鏡花もの、別の思い人がいるのに旦那に落籍されかけ・・みたいなストーリが似て…

獅子の座

昭和28年伊藤大輔監督作品。ビデオパッケージより 宝生流十五代宗家宝生弥五郎に江戸開府以来第六回目という勧進能が聴許され、その日は将軍家慶も上覧することとなった。演目の“石橋”では太夫の弥五郎が長男石之助と一緒に親子連獅子を舞わねばならず、その…

檜舞台

昭和21年作品。戦争が終わって間もない頃の劇団。その描写がリアル。 「瞼の母」を父親に置き換えたような・・と思ってみていたら、「瞼の父」と書いておられる方がいらっしゃった。(こちら) 長谷川一夫の鏡獅子が見事。日ごろ、ふや町映画タウンの大森さ…

女と三悪人

「三人吉三」*1の話と「天井桟敷の人々」を下敷きにして井上梅次監督が作られたとか・・劇場が舞台なので弁天小僧や娘道成寺などのシーンも出てきて、歌舞伎要素的な楽しみもある。「天井桟敷〜」ずいぶん前にみて、すっかり忘れてしまっているし、いろんな…

北京好日

1992年ニン・イン監督作品。 京劇を上演する劇場の管理人ハンじいさん。舞台を手伝ったりしていて京劇の見識を身につけている。定年退職後、公園で京劇に興じている老人たちにアドバイスしたのがきっかけで、京劇サークルを作って活動。ハンさんの仕切りたが…

さらば、わが愛 覇王別姫

前から見なければ、と思っていたが見て本当によかった。素晴らしい作品。 レスリー・チャンの訃報の時、この映画を観ていたら、どんなにか悲嘆しただろう・・ほんと今頃なんだけど、哀しい想いをかかえつつの芸一筋の、美しい京劇の女形、気品もありぴったり…

義太夫を聴こう

書評で紹介された時、女義太夫の方の表紙で、勝手に普段文楽で接しているものとは違うかななどと思っていたのだけど実際に手に取って読み始めてみたら、普段文楽で接している義太夫や三味線の理解が深まるものだった。ソフト版という体裁も読みやすくてあり…

中村勘九郎 中村七之助 錦秋特別公演 2016

ロームシアター京都にて。まず歌舞伎塾、立役、女方のできるまで。楽屋にしつらえた中で着替え、顔をつくるところを実演してくれる。そして、用意のできたところで正札附根元草摺。(曾我五郎と舞鶴という女方のやりとり。)姿も晴れやかでとてもきれい。中…

人形浄瑠璃文楽 平成28年 錦秋文楽公演

演目はこちら。普段演目の中にとっつきやすい世話物が入っているとリラックスしたりする方なのだけど、今回は、オーソドックスな松羽目もの「勧進帳」がものすごくすばらしくて感動した。舞台も音楽も能のような感じなのだけど、もうシャープでなんとかっこ…

變臉(へんめん)/この櫂に手をそえて

「変面」という一瞬のうちにマスクを変えて表現していく一子相伝の中国の伝統芸能を披露しているお年寄りのひっそりとした舟の上の暮らし。後継ぎを希求するところから一人の子供と出会うが・・何人もの人に売られてきたという子供の生きる力のリアリティ、…

平成二十八年度 松竹大歌舞伎 獨道中五十三驛

地元京都造形大学春秋座にて 筋書きの市川猿翁さんの巻頭挨拶にもあるように究極の娯楽作品。途中の口上や、弥次喜多の配置の仕方など観客が迷子にならない工夫が一杯あった。 「東海道中膝栗毛」に着想を得た鶴屋南北が仇討を主軸に「岡崎の猫」や「お半長…

菊之助挑む!「歌舞伎を受け継ぐ男の試練」

まずはこちら のHPにも載っている、お正月国立劇場の「通し狂言 小春穏沖津白浪―小狐礼三―」。伏見稲荷のようなたくさんの鳥居のシーンなどみていてとてもあでやかで楽しそう。どういう話なのか調べてみたらきちっと書いてくださっている方がいらっしゃるの…

平成28年 4月文楽公演 通し狂言 妹背山婦女庭訓

第一部 初段 小松原の段 蝦夷子館の段二段目 猿沢池の段三段目 太宰館の段 妹山背山の段第二部 二段目 鹿殺しの段 掛乞の段 万歳の段 芝六忠義の段四段目 杉酒屋の段 道行恋の苧環 鱶七上使の段 姫戻りの段 金殿の段話の流れが整理できるように、三段目が二…

月夜鴉

yahoo movie川口松太郎の原作。脚色秋篠珊次郎と依田義賢。井上金太郎監督。飯塚敏子さんという方が演じる三味線のお師匠さんの気質が気持ちいいし、お父さんの苦しい立場もちゃんと伝わる。そして、場をなごますおじさん(こちらのtweetによると、富本民平…

今夜も落語で眠りたい

第一章では話の筋中心、第二章では落語の登場人物を切り口に、第三章では、中野さんの落語との出会いの話を、いつもの中野さんらしい、粋に楽しく、でも江戸情緒って方角からでなく、楽しい洋画を鑑賞するような方向からのまとめかたで、おすすめCDとともに…

歌舞伎ッタ!

こちらのブログの記事がきっかけで読んでみた。よく歌舞伎や文楽をみにいくとき、あらすじを読んでも詳しすぎてちんぷんかんぷんになることがあるのだけど、勘三郎さんの舞台説明はかいつまんでいてとてもわかりやすい。1996年12月から1999年7月に演劇誌「ソ…

国立文楽劇場 平成27年錦秋文楽公演

第一部 碁太平記白石噺 桜鍔恨鮫鞘 団子売第二部 玉藻前曦袂定期的に文楽に行くようになって多分4年目になるのではないかと思うけれど、ようやっと筋を必死で追うというのでなく、浄瑠璃をききにきているというような気持ちになれている気がした。ちょっと…

大阪平成中村座

昼の部をみにいく。 コンパクトで役者さんがすぐそばの劇場。楽しい!幕間で食べたお弁当のごみなどの回収もスタッフが回ってこられたり、とてもいきいきキビキビしている印象。役者さんの演じ方も、とにかく観客と近い感じ。親しみやすさ楽しさが一番の舞台…

阿弖流為

大阪松竹座にて。 劇団☆新感線のいのうえひでのり氏の演出。新感線の舞台はTVでちらっとみたくらいなもので、はじめものすごい動きとセリフ回しや場面展開の速さに驚いた。 そんな中で、勘九郎さんや片岡亀蔵さんの明瞭な芝居は手掛かりになって助かる。故・…

「絵本合法衢」 立場の太平次

平成27年大阪松竹座左枝大学之助・立場の太平次 … 片岡仁左衛門 うんざりお松・弥十郎妻皐月 … 中村時蔵 田代屋与兵衛 … 中村錦之助 田代屋娘お亀 … 片岡孝太郎 松浦玄蕃 … 市川男女蔵 高橋瀬左衛門・高橋弥十郎 … 中村歌六 太平次女房お道 … 片岡秀太郎 …

国立文楽劇場 第139回文楽公演

第一部 親子劇場 ふしぎな豆の木 解説 ぶんらくってななに 東海道中膝栗毛第二部 生写朝顔話 宇治川蛍狩の段 真葛が原茶店の段 岡崎隠れ家の段 明石浦船別れの段 薬売りの段 浜松小屋の段第三部 きぬたと大文字 生写朝顔話 嶋田宿笑い薬の段 宿屋の段 大井川…

この世は落語

落語に詳しくない自分でも楽しめるかなと思いながら読み始めたが、そういう私が楽しめる本で、さまざまな噺を噺家さんによるバージョンの違いも説明しながら、中野翠さんのいつもの、実人生で感じたことをうまくまとめるコラムタッチで読みすすめていける。…

市川猿之助特別舞踊公演

京都造形芸術大学春秋座にて。歌舞伎のみかた 市川段一郎 立ち回りの実演 市川澤五郎 猿翁十種の内 独楽 市川猿之助 双面水照月 法界坊、野分姫の霊 市川猿之助、おくみ 市川笑也、渡し守 おしづ 市川笑三郎、手代要介実は吉田松若丸 市川門之助「歌舞伎のみ…

中村勘九郎 中村七之助 新緑特別公演

大阪NHKホールにて。勘九郎、七之助、新悟による芸談。 中村仲之助、仲四郎、鶴松による「女車引」 勘九郎、七之助、慎吾、鶴松、小三郎の「仇ゆめ」。私は七之助さんの声がとても好きで、演じているときだけでなく、芸談でも声をきけて、うれしくてたまらな…