平成二十八年度 松竹大歌舞伎 獨道中五十三驛

地元京都造形大学春秋座にて 筋書きの市川猿翁さんの巻頭挨拶にもあるように究極の娯楽作品。途中の口上や、弥次喜多の配置の仕方など観客が迷子にならない工夫が一杯あった。
東海道中膝栗毛」に着想を得た鶴屋南北が仇討を主軸に「岡崎の猫」や「お半長右衛門」など有名な場面が綯い交ぜの趣向で採り入れられ初演時に主役を勤めた尾上菊五郎がひとり十役に扮したことが「獨道中(ひとりどうちゅう)」と言われる所以とか。
わたしのみた回は猿之助さんが十三役早替わり、ダブルキャストの巳之助さんが化け猫役。反対の趣向もまた感じが違っておもしろかっただろうけれど、これはこれでよかった。反対の場合化け猫に化け猫っぽい貫禄が出そう。巳之助さんの化け猫はとてもキュートでなんとも魅力的だった。ぱーっと派手な十二単を着て声色を変えて登場するところのかっこいいこと。その前の導入部の猫のぬいぐるみとの踊りなんかも妖怪シーンだけどかわいらしくもあり、なんか石黒亜矢子さんの描く猫のような美しくこわげなんだけど、ユーモラスな感じもあるという私の好きな雰囲気が漂っていた。
猿之助さんの演じた十三役の中でもいなせな役、勢いのある役がよかったと思う。一番好きなのが沢瀉の模様の着物を粋に着こなしたお六の立ち回り。私、歌舞伎でわらわらと傘をさしたような連中がかけつけて将棋倒し的にやられるシーンとか大好きで。 
土手の道哲という僧形の役もなかなかよかった。
とにかく退屈させなくショーっぽく楽しませてくれる舞台だった。

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