雪之丞変化

 

名前だけは以前から知っていたこの作品、長谷川一夫林長二郎時代にも撮っているし、大川橋蔵美空ひばりも演じている。今回観たのは市川崑監督作品。長谷川一夫300本記念映画。

主人公が二役の舞台をからめた仇討ちものということで既視感があったのだけど、以前その系譜の石田民三監督の「をり鶴七変化」*1という映画を観た時、ビデオにはさみこまれた山根貞男氏の解説で

お家騒動、女形の役者、二役と見てゆくと、「雪之丞変化」(三五)から「小判鮫」(四八)「蛇姫道中」(四九)まで、長谷川一夫の映画がつぎつぎ思い浮かぶ。

と書かれていた。確かにこの形式の映画多いな。仇討ちも、早変わりも歌舞伎の見どころによくなっているし、格好のネタなんだろうか・・

舞台での姿が冒頭と終盤にうまく取り入れてあり、またそれがとても決まっていて、楽しませてくれる。雪之丞の師匠役八代目市川中車のしっかりとした演技も舞台場面の落ち着きにかなり寄与している。この方は初代市川猿之助の次男で、時代劇映画やテレビ時代劇にも出ておられるようで、これからそのつもりでちゃんと観たい。

よくふや町映画タウンの店長大森さんが長谷川一夫の所作の美しさについて語っておられるが、この作品をみて、長谷川一夫や二代目鴈治郎さんのちょっとした動作の端々に踊りの基礎を感じ美しいなと思った。

山本富士子が、元軽業師の女すりみたいな役。衣笠監督の「小判鮫」*2山田五十鈴がそのポジションだったが、山本富士子の軽やかさがとても良い!「女経」なんかでもだったけれど、山本富士子のまじめすぎない役私はいいと思う。「女経」はオムニバスものだったけれど、山本富士子の出演作もこちらと同じく市川崑監督だったようだ。市川崑のドライな感じの演出のお富士さんが私は好きなのかな・・

eiga.com

撮影も部屋がとてもシンプルになっていたり、黒が強かったり、屋根瓦の美しさなどが表現されたり市川崑監督らしさを感じる。

市川雷蔵勝新太郎が控えめなポジションで参加。雷蔵さんは、長谷川一夫のもう一役「闇太郎」に対する引き立て役的な「昼太郎」という役なのだが、軽妙さがとても良く私の気持ちをさらった。