日本映画傑作全集

雨情

「夫婦善哉」や「猫と庄三と二人のをんな」など森繁久彌によるダメ男系の作品がヒットした余波ということもあるのだろうが、一応創作と謳ってはいるものの野口雨情の伝記映画のような体裁なのに、もうとことん森繁演じる主人公の野口雨情が情けなく描かれて…

桃中軒雲右衛門 再見

この映画、2012年に一度観ているのだけど*1、11年を経て記憶に残っていたのは桃中軒雲右衛門というのは厳しい人だったなあということだけ。 近年、「人生劇場」*2などで、いぶし銀の月形龍之介さんの魅力に気付き、そういえばと主演のこの映画を再見し…

清水次郎長、丹下左膳余話 百万両の壺

山中貞雄脚色の「戦国群盗伝」*1にハマって以来、山中監督とゆかりのある作品を数珠つなぎ式に観ている。 先日観たのは山中貞雄門下といわれている萩原遼監督の「清水次郎長」。 www.allcinema.net 若き日の次郎長を描いたもので、ちょうど先日ふれたところ…

大日向村

www.allcinema.net 「戦国群雄伝」*1で前進座の人たちの作品をもっと観たくなり前進座にとって初めての現代劇というこちらを。満州への移住で有名な大日向村、この映画は昭和15年に作られ国策色がとても濃い。今みると「キューポラのある街」で最後北朝鮮に…

牢獄の花嫁

東京のラピュタ阿佐ヶ谷というユニークな映画特集をよく耳にする名画座でバンツマ×田村高廣映画祭をしていて、観に行かれた方がtwitterに感想を書いておられたので私も鑑賞。 www.laputa-jp.com 荒井良平監督は「水戸黄門」*1がとても面白く「戦国群盗伝」*2…

文豪ものふたつ

気が付けば文豪原作の映画を続けて観ていた。 豊田四郎監督の「暗夜行路」と森田芳光監督の「それから」。 「暗夜行路」はふや町映画タウン所蔵の日本映画傑作全集VHSで鑑賞。 movies.yahoo.co.jp タイトル通り池部良演じる主人公がふさいだり、自分の気持ち…

男ありて

moviewalker.jp 先日父が亡くなり、大学映画部というつながりの中でおつきあいさせていただいていた方々がお参りくださった。それまでにお会いしたのは数えるほどなのに、映画の話を直接会ってお話しできるという機会は、細かいニュアンスもお互いによくわか…

復讐浄瑠璃坂

eiga.com 直木賞の名前の由来、直木三十五の原作。 二川文太郎と並木鏡太郎の共同監督作品。二川文太郎、映画「カツベン」*1にも出て来た無声映画「雄呂血」*2の監督で、クラシック監督のイメージなので昭和30年のこの作品も監督されてたんだ・・と息の長…

河童大将

www.kadokawa-pictures.jp 水練もの。泳ぐアラカンさん。 水練といっても戦国時代なので実戦の中の話。泳いで上陸→さっと最低限の鎧を身に着け戦闘という感じで薄着での立会いにハラハラする。 日本泳法というのはこういう使い方をしていたのか!という感じ…

国訛道中笠

movies.yahoo.co.jp 昭和12年嵐寛寿郎プロダクション作品。 国定忠治の物語。「赤城の山も今宵限り」というセリフだけは知っていたが、トータルのストーリーは知らないもので、山根貞男さんの解説には「お馴染みのドラマ」と記されている冒頭の板割の浅太郎…

藤十郎の恋

movies.yahoo.co.jp 先日、文楽初春公演*1のイヤホンガイドで「傾城反魂香」は話術が得意な初代坂田藤十郎にしゃべることが不得手な役をさせる妙味という話がでてきて、坂田藤十郎のお話をみてみようという気になった。 江戸からの芝居に押され気味になって…

夜の素顔

「夜の河」「夜の蝶」に続く吉村公三郎の「夜」シリーズ第3作目とのこと。「夜の河」は京都の染めに携わる女性が主人公、イノダコーヒなども登場、「夜の蝶」は京都のバーのマダムおそめさんがモデルの物語であり、今回も日本舞踊の世界とのことで京都が関係…

お市の方

野淵監督、私には「恋三味線」*1というアラカンさんの映画の監督さんというイメージだったのだけど、新劇運動をされていた方で、自分の祖父とも同級生だったことを最近になって知った。それで、祖父の生きていた時代を何かしら感じたくなってこちらを鑑賞。 …

日常の戦ひ

all cinema 石川達三の新聞小説(毎日新聞←どおりで、主人公佐分利信の弟役藤田進氏が毎日新聞の人になっている。)の映画化。1944年8月3日封切。配給、女性のモンペ姿などが日常的であり、「この世界の片隅に」*1のリアルタイムバージョンとも感じら…

泣蟲小僧

movies.yahoo.co.jp 昭和13年に作られた、転がり込んできた母の交際相手とそりがあわず、母親の三人の妹のところに預けまわされる啓吉という少年の物語。啓吉は十二歳であるが、ちょうど「誰も知らない」の柳楽君の設定くらいの年齢だな・・母への思いと裏…

君も出世ができる

君も出世ができる [DVD] 出版社/メーカー: 東宝 発売日: 2008/07/25 メディア: DVD クリック: 8回 この商品を含むブログ (9件) を見る みたのは、日本映画傑作全集VHSにて。 VHSに封入の「山根貞男のお楽しみゼミナール」によると、日本初の本格ミュージカル…

春の饗宴

山本嘉治郎監督のミュージカル映画。ほっそりしている時代の轟夕起子と、笠置シヅ子の歌の場面が多い。笠置シヅ子はジャズの歌い手。音楽は服部良一。少し前テレビで笠置シヅ子の特集をしていたとき、ピンチの時、服部良一に励まされた話が出てきたなあ。*1 …

南の島に雪が降る

濱田研吾さんの「脇役本」(ちくま文庫)で知って、観てみたかった、加東大介氏のニューギニアでの芝居体験の実録エッセイが原作の映画。渥美清氏、三木のり平氏などが出てこられるとスポットライトがあたったようにすごく面白い。さすが。 途中「浅草の灯」の…

馬喰一代

馬喰一代 FYK-172-ON [DVD]ゆ 出版社/メーカー: 角川映画 大映現代劇 オフィスワイケー 発売日: 2012/04/04 メディア: DVD クリック: 7回 この商品を含むブログを見る 日本映画傑作全集vhsで鑑賞。 三船敏郎演じる北見の馬喰片山米太郎と金貸し小坂六太郎を…

阿波の踊り子(剣雲 鳴門しぶき)

昭和16年 マキノ正博監督作品。 仇討ちを阿波おどりにまぎれて行うはなしだけど、確かにトランス状態の群衆、そして人によっては仮面など、なにが起こってもおかしくない状況が、なにか陽気さの影にあって、参考になった映画はあるらしいが*1、よい目のつけ…

かくて神風は吹く

ビデオジャケット解説によると、敗戦色濃くなった昭和19年春に公開された特撮映画とのことで、情報局国民映画で、陸軍省、海軍省、軍事保護院の後援とのこと。 タイトルからしてまごうことなき国策映画だが、扱っているのは元寇のほうで、博多湾上の海戦を、…

新佐渡情話

www.nikkatsu.com ビデオジャケットには 「寿々木米松の名調子に乗って描く最もポピュラーな浪曲映画の決定版」とある。 昭和10年の映画でとてもクラシックなんだけど、寿々木米松の浪曲が本当にかっこよくすんなりくる。(新のついてない「佐渡情話」の方…

たそがれ酒場

先日「東京映画地図」という本を購入した。 東京映画地図 (キネマ旬報ムック) 作者: 宮崎祐治 出版社/メーカー: キネマ旬報社 発売日: 2016/07/28 メディア: ムック この商品を含むブログを見る 映画をみるとロケ地はどこだといつも気になる自分にぴったりの…

鳥人

先日から大注目の丸根賛太郎監督作品。 またまた愛すべき作品であった。 大空を鳥のように飛びたいと研究に研究を重ね、狂人呼ばわりされ実在の人物、鳥人 浮田幸吉をアラカンさんが演じている。丸根監督ははじめはあいつなんだ?ってところからはじまる男の…

エンタツ・アチャコの新婚お化け屋敷

宮沢章夫さんのカルチャー論を録画していたものをみていたら、「書を捨てよ、町に出よう」から糸井重里の「本読む馬鹿が、私は好きよ」へ移行する、肉体中心から頭脳への時代の流れという中で、チャップリンなどが源流のからだの動きによる笑いとは違うタモ…

殴られたお殿様

Movie Walker丸根賛太郎監督ほんとにいい!好きだ。 食い詰めた旅役者の二人が、給料代わりに渡された金持ちの爺様風の衣装(水戸黄門風)を着用して宿屋に泊まっては夜中に逃げ出すという旅を続けていたが、ある城下で夕立金左衛門という男と出会う。ひょん…

小判鮫

映画comwikipediaの衣笠監督のところにはこの作品についてこのように載っているが、*1 1946年(昭和21年)、明治開化期の鉄道建設を巡る利権争いを、東宝オールスターで描いた喜劇映画『或る夜の殿様』が戦後第1作となり、翌1947年(昭和22年)に島村抱月と…

博多どんたく

博多八丁兵衛という九州博多の奇人を阪東妻三郎が演じている。昭和23年丸根賛太郎監督作品。 総じて笑いのテンポなどは今と少し違っていたけれど、それがのんびりした空気を出してはいる。 八丁兵衛については八丁兵衛の営んでいた西濱屋のサイトに詳しく載…

江戸の春 遠山桜

若き日の遠山の金さんを描いたもの。 以下、ビデオに同梱の山根貞男さんの文章を読んでのまとめ。 北川冬彦という詩人で映画評論家が、「キネマ旬報」でこの映画のことを「『百萬両の壺』*1その他で、この作の面白いところは用いつくされている」と断じ「(…

人生は六十一から

1941年斎藤寅次郎監督作品 ビデオ同梱の山根貞男さんの解説によると、当時の映画評はあまり評判がよくないらしい。山根さんもテンポはそんなによくないし、ギャグも弱いとしながらも、「が、妙なおかしさがある。話がどんどんズレていく迫力というか、画面展…