たそがれ酒場

 先日「東京映画地図」という本を購入した。

 

東京映画地図 (キネマ旬報ムック)

東京映画地図 (キネマ旬報ムック)

 

 

映画をみるとロケ地はどこだといつも気になる自分にぴったりの本なのだが、その本によると、

この映画は現在思い出横丁になっている新宿西口マーケットにあった百円酒場「富士屋」がモデルだとか。列車の音、店の下を通るデモ隊など当時の新宿駅近くの雰囲気がわかる。

とのこと。これを感じたくてこの映画を借りた。

昭和50年代、自分が上京した時、確かにこの一角、副都心などとは一線を画す雰囲気だったように思う。

記憶をたどるためにみた思い出横丁関係のページがおもしろい。

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 まだ全部はちゃんと読めていないが、焼き鳥屋の宝来屋店主金子正巳さんの自叙伝「やきとり屋行進曲」からのものらしい「西新宿物語::第二宝来家」に書かれていることは、まさに闇市時代を描いた映画のようだ。

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さて、タイトルの「たそがれ酒場」だけど、これは昭和30年内田吐夢監督作品。中国から帰還した内田監督が「血槍富士」につづいて撮った映画とのことで、戦中を生きてきた人の戦後のつらさがにじみ出ている。去年あたりから満州に興味を持ち、内田監督の満州での苦労もきいていた*1ものだから、なお一層そういうことを経験されたあとの内田監督がこの映画を撮られたのだという思いもあった。

戦後のつらさ、などと戦争体験者でもないわたしが書くと軽い言葉になってしまうが、先日「探検バクモン」というテレビの国会議事堂特集をみていて、田原総一朗氏が政治に関心を持ち続けるのはなぜだという問いに対して、戦後平気で前言撤回する世の中を体験し、本当に政治家のいうことは信用できない、だまされてはいけないという気持ちが骨の髄まで染みた、だからどこまでも問いただすのだという話をされていて、それまで田原さんってもしかして引っ掻き回しておられるだけでは?と思ったりして少し冷ややか目に番組をみたりしはじめていた気分が少し変わった。関心を持たせるための政治討論ショーみたいな部分は否めないけれど、「探検バクモン」での田原さんの言葉はこちらの胸にしみたし、戦争体験者からの生の声が届かなくなる世の中の到来、本当に気をつけなきゃと思った。

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どんどん話が映画から離れて行っているが、大衆酒場での一日の群像劇を描いたこの映画、一番目を引くのはストリッパー役の津島恵子だ。本当に美しく、ダンスの素養があるのに裸をさらす商売をしなきゃいけないという境遇のつらさが、津島恵子の持つ品の良さで確かに描かれていた。

この大衆酒場、ピアノと舞台が備えてあって、客が舞台の上で壺阪道中をうなったり、「ソーラン節」に大いに盛り上がったりがあったかと思えば、常連のさしがねで、この酒場の歌い手の実力をみせるためにカルメンの「闘牛士の歌」が演奏されわいたりとなかなかだしものも多岐にわたっている。ほかに音楽はなく、この演奏されているものだけが音楽というのが、ビデオに同梱されていた山根貞男氏の解説によると、ワンセットの劇であるということなどにも並び、内田監督の実験手法であるらしい。

酒場の名ピアニストは成城大学の音楽教授 小野比呂志氏、酒場の歌手には新進のバリトン手宮原卓也氏が扮していたとのこと。

酒場で働く女性たちのなかでスポットがあてられている野添ひとみのやはり群を抜くかわいらしさ。宇津井健が交際相手の男前の役で登場。(出番短い)

野添ひとみをめぐって争うちょっとやくざもの風の男に丹波哲郎。さらっとした出方。帽子のかぶりかたなどしゃれている。

戦争中の上官と兵士の結びつきと哀歓を東野英次郎と加東大助が手堅く演じている。

 

 みたのは、vhsの日本映画傑作全集として出ていたものだけど、参考のためにdvd版の情報をはっておく。このdvdの表紙になっているのが迫力のある美しさの津島恵子

たそがれ酒場 [DVD]

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*1:例えば「満映とわたし」など