泣蟲小僧

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昭和13年に作られた、転がり込んできた母の交際相手とそりがあわず、母親の三人の妹のところに預けまわされる啓吉という少年の物語。啓吉は十二歳であるが、ちょうど「誰も知らない」の柳楽君の設定くらいの年齢だな・・母への思いと裏切られていることへの哀しさ、行動には出せないけれどそれらを悟ってしまっている気持ちが表情で出ていてうまい。

昨今の子どものネグレクトや「誰も知らない」のもとになったことなどは事件として扱われるけれど、戦後の豊かな体制が落ち着くまでの日本って、もしかしたら助け合っての子育てとかいっても意外と責任者不在になってしまうようなこともあったのかなと思ったりも・・「長屋紳士録」にしろ、「秋立ちぬ」にしろ、今ほど子どもについては管理しきれていない世の中のようにも見える。飲み屋にも子どもの流しがやってきたり、行方不明時も届け出という感じになかなかならないし・・次女寛子は「隣りの八重ちゃん」*1の逢初夢子。その夫の売れない小説家勘三はいい感じ。藤井貢氏とのこと。三谷幸喜氏の「わが家の歴史」という作品の中で山本耕史氏がやはり次女(なんと後に実生活でも結婚する堀北真希氏)の夫の売れない小説家を演じていて、社会とは少し外れた風通しの部分があって面白かったが、こういう、その子の責任者ではない大人との交流、「おじさんの系譜」ってあるように思う。(北杜夫原作で松田龍平が演じた「ぼくのおじさん」もだし、それの本家?ジャック・タチの「ぼくの伯父さん」もではないかな?)

貧乏画家と結婚した四女のちょっとモダンな家、電気を止められて夜体裁が悪いからって「ずっと灯火管制だといいのに」みたいなセリフ、時代も感じるし、朝ドラ「まんぷく」の画家の妻のところの生活、ある時期こんな感じではなかったっけ?(とびとびにみていたので言い切れない)とも思ったり・・

随所に、音楽で少年の心や状況を表現しているのがとてもいい。(トイピアノ、酒場で出会う流しのこどもの唄、無責任なおじさんのせいで迷子になり、尺八のおじさんのところで習う「箱根の山」など)

なかなか拾い物の映画だった。