旅と日々

 

旅と日々

旅と日々

  • シム・ウンギョン
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三宅唱監督 2025年

面白かった。二つのつげ義春の作品をもとに作ってある。ちゃんとつげ義春の世界を消化して自分の映画にしてある感じでとても好もしい。

前半の海の物語は韓国人の女性脚本家(名前が「李」とこれまたつげ義春の登場人物のよう)によって翻案されたつげ義春の映画化作品、それが大学のような場所で上映され、質疑応答みたいなのが行われるところから、李の実生活が前に出てきて、その後は彼女が旅に出る後半になる。

後半の東北の宿の話が断然面白いが、人との邂逅、そしてそのことによって遠いところに行ってしまうのでは?というハラハラ感が前半からの影響で後半に及ぼされており、重層的。

およそ即物的だが、なにかわけのありそうな宿の主人(堤真一 うまい)とのニヤニヤしてしまうような作品論のシーンで出てきた「ユーモアのあるなかでの哀しみ」(意訳)が漂う良い作品だった。そして、脚本家が考えていた通りのいいシーンの映画として最後はできあがっている面白いつくりの作品だ。

つげ義春原作の映画「ゲンセンカン主人」*1に出ていた佐野史郎の出演も嬉しい。「李さん一家」もオムニバスの一話になっていたな。

狩人の夜

 

狩人の夜

狩人の夜

  • ロバート・ミッチャム
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1955年 チャールズ・ロートン監督

傑作

ちょうどこの直前にキング・ヴィダー監督の「ラ・ボエーム」を鑑賞。リリアン・ギッシュ演じるヒロインがものすごくかわいらしいのは眼福だけどあまりに犠牲的な話で辛くなっていたところだったもので、次に観たこの作品でのリリアン・ギッシュの逞しさに驚きとともに目を見張った。彼女は寄る辺のない子どもたちを家に引き取って助けている婦人の役だが、年頃の女の子がムードに酔ってロクでもない男にひっかかったりするのを危なっかしいなという視線を送ったり、だけど、そんな女の子にも頭ごなしじゃなく気持ちに寄り添った接し方をしていて、彼女が演じさせられていた自己犠牲ばかりのメロドラマのヒロインへの目配せも感じとても頼もしい。ただ偉そうに男を遠ざけよ、といってるのでなく、息子が寄り付かなくなった自分への反省もにじませていて本当に好ましい。

リリアン・ギッシュは後半活躍で、通して出てくるのは得体の知れない牧師のロバート・ミッチャ厶。演説だけうまいとんでもない悪人。こどもを追い詰める役。とても気持ち悪かった。ロバート・ミッチャ厶の演説に手もなく熱狂してしまう善意の人が、状況の変化で今度は暴徒と化したり。。今も昔も同じだ。その中でただ一人、リリアン・ギッシュのロバート・ミッチャ厶への冷めた視線がまたいかす。そして、とても頼りになる振る舞い。あのリリアン・ギッシュが!という思いもある。うまいつくりだ。

ロバート・ミッチャ厶に追い詰められる子どもたちがまたいい。賢そうな兄とかわいい妹。

子どもたちの逃亡シーンなどで動物の大写しがあるのもムードがある。

監督のチャールズ・ロートン、「ヘンリー8世の私生活」てはヘンリー8世をいやな感じで、「運命の饗宴」では指揮者を物悲しく演じていた。気になる個性派俳優という感じだが、監督作品もとてもいいな。

シネマ大吟醸

 

知人に貸してもらい単行本版で読了

 

自分も観て楽しいなと思ったもののなかなか情報に出会わない映画のことを取り上げてもらって嬉しい。

たとえば「阿波の踊子」*1や「与太者と小町娘」*2など。「春秋一刀流」*3の絶賛も嬉しかった。

「与太者と小町娘」の項には出演者上山草人のことが出てくる。「バクダッドの盗賊」*4の中国人役の人。「与太者~」を観た時は「バクダッド~」未見だったもので、つながっていって嬉しい。

それから随分前に観たものの楽しい合いの手だけは覚えている「昨日消えた男」*5、渡辺篤とサトウロクロ―のコンビ、とある。渡辺篤の方は時々他の映画でも名前をチェックしていたなあ。

あとは、「女医絹代先生」で田中絹代が運転しているのがダットサン・スポーツカーとのことなど。。また再見したら改めて読みたい情報も多い。

 

ぼちぼちと読んでいたのだけど、先日、愛好している「暗黒迷画座」、石田民三監督の「むかしの歌」の回で、石田民三監督について「太田和彦さんが絶賛してた」と著者の名前が出てきて読書にもターボがかかった。(この本でもとりあげておられる「三尺左吾平」*6の名が挙がり、そして、寄席の話、とおっしゃっているのは「化粧雪」*7ではないだろうか)

youtu.be

「むかしの歌」は、この本の中でも取り上げられている。「小村雪岱の日本画を思わす粋で秀麗な画面」という表現。石田民三、原作に小村雪岱の挿絵のある「喧嘩鳶」*8も撮っていて、自分はこれも雪岱風を感じたなあ。

 

「家庭日記」*9は自分の印象とまるで違う。自分は、学資のために恋人を袖にする佐分利信に怒り心頭だったんだが、それを恋人に正直に話して別れる佐分利のことを「現実を冷静に見る実利主義者」と解説、私みたいにかっかなっておられなかった。桑野通子のことをずっと「上原の妻」と書いておられ、観る人によって違うものだなあと感慨。

 

後半は「名画座放浪記」。この本がまとめられたのは平成6年(1994年)だけど、自分が東京に居た1980年代、ほんとにたくさんの名画座が東京にあって、学生だったこともあって今から思えば安くでたくさんの映画を観られたような気がする。

「ぴあ」上で名前だけはよくみていた名画座の名前がたくさん出てきた。

素ッ裸の年令

鈴木清順 1959年

ふや町映画タウンのVHSで鑑賞

赤木圭一郎のデビュー作とのことで、冒頭の、彼を兄貴分と仰ぎバイクで飛ばすローティーンたちの様子に、ひょっとしてガマンしてみなきゃいけないやんちゃなタイプの作品?と心配になるも、その後、ローティーンたちの暮らしが丁寧に描かれていて、背伸び気分は理解できるものに。彼らが親しくしている空き缶集めの左卜全との関わりで、もう一気に好きな映画となった。左さんの「どん底」(57)*1に引き続きの天使っぽさ。

赤木圭一郎はとりあえずおいておいて、主人公の少年の賢そうだけど、半分あきらめているような表情がすごくいい。

佐藤利明さんのnote

note.com

に指摘の、「野菊の如き君なりき」の手法ににやり。

「戦艦ポチョムキン」(未見なんだが)の有名なシーンもいただいていたような・・

 

ザラッとした口当たりを保ちつつ、テイストは違うもののふとその後の日活の教育映画の名作(例えばこの映画の助監督 武田一成の1977年「先生のつうしんぼ」)への道筋がふと頭に浮かぶような佳作だった。

www.nikkatsu.com

現代やくざ 人斬り与太

 

1972年 深作欣二監督

csで放送していて私向けかどうか半分心配ながら薦めていただいた作品 

刑務所から出てきた菅原文太演じる主人公。

貧しい境遇で身を売って暮らしを立てる母の姿をみながら成長したものだから、とにかく人の使い走りというものがイヤで仕方ない。

ケンカは強いし、人をひきつけるなにかがあるが、計算とか裏の話し合いとかお構いなしにツッコんでいく。。なのでヤクザ世界でも適応せず。

そんな主人公に昔の自分を感じ、肩を持ち続ける近代的やくざの安藤昇。これがかっこいい。

ムショ入りする前の文太に上京するなり強姦され夜の商売に売り飛ばされた女、渚まゆみとの因縁の出会い。

おすすめしていただいたメールで渚まゆみが「斬る」*1で市川雷蔵を慕う妹役だった人と教えていただき大いに驚く。

経歴*2をみると渚まゆみ氏は秋田出身で初主演作は「夕やけ小やけの赤とんぼ」。命名も山田耕筰。あらすじ*3を読むと境遇ゆえちょっとグレてるが、ハートウォーミングな物語の主人公のようで、その経歴が劇中のこの女性とリンク。激しさを突き動かすのは彼女の持ち前だった素朴な心、という演出と彼女の体当たりの演技が胸を打った。

確かに文太の考えなしのバイオレンスには呆れるものもあり、おすすめいただいた方の逡巡もわかる。が、それを乗り越え渚まゆみの凄みを紹介したくて薦めていただいたことに大いに理解と感謝。とても楽しめた。

お前のこと応援したいのにバカだなあと劇中の安藤昇のような気持ちにさせられる文太の行動

11年後に登場する「スカーフェイス」(83)のトニー・モンタナ味もある。

出所するとき文太に声をかけられる三谷昇の少ない出番での存在感。もう一つの人生。

また出所後の文太になにかを感じ、川崎を仕切る従来型ヤクザと近代的経済ヤクザ、この二つの組の間で独自にやっていくことを提案する小池朝雄の存在も共同経営にまつわる問題そのもので面白い。彼の終盤の芝居の滑稽味とはかなさ!こちらも胸にきた。

華岡青洲の妻

 

1967年 増村保造監督

タイトルとどういう話かだけはずっと知っていたが初鑑賞。

白黒で撮られているのが紀州の旧い村の気分をすごく表していて良い。それを杉村春子のナレーションですすめるのも出てくる人たちと距離があってクールでとてもいい。良き構図多数。

伊藤雄之助の怪演が華岡家の実態を説明的でなく表しており面白い。

そしてそこに描かれる感情のやりとり。美しいお姑さん高峰秀子の嫌味、息子しか愛してない感じ。でも世継ぎ世継ぎっていわれる世界、こんな感じなんだろうな。

それを受ける若尾文子の抑えた感情表現が素晴らしいし、自分はこうやっていく、というのが感じられる媚びない空気のラスト、増村監督らしくすかっとするものを感じた。なんだかとてもかっこいいものを観た気分。

「銀座化粧」 再見

 

銀座化粧 [DVD]

1951年 成瀬巳喜男監督

溝口健二の54年作品「噂の女」*1と印象が一緒くたになって年を重ねた田中絹代が辛い目に合う話、なんて頭の中でくくっていたが、周りの方にすすめられ再見したらなんと面白い。前に観た時*2、田中絹代のやさぐれ感になじめぬような感想を書いていたが、今回働くバーでもリーダー格でいろいろ任されているけどいい加減くたびれている女をなんと見事に演じていることか、そこがいいんじゃないか!と過去の自分に対してツッコんでしまった。くされ縁みたいな三島雅夫は男女の仲というよりお金のことで頼ってくる零落した元旦那。人柄だけは優しく情けないけどほっとけないような空気を持ち合わせなんだか結局お金を渡してしまったり、持ち合わせのない客の資金回収で痛い目にあったり、バーのための金策で吝嗇家の東野英治郎にイヤな思いをさせられたり。。調子のいい友人花井蘭子の、表面上はアツアツみたいな様子に苦笑いするさまなど、なんて細やかで多弁な表情!と思いながら鑑賞。

田中絹代が下宿してる一階の住人 柳永二郎もいい雰囲気。「藤村詩集」を、三島雅夫演じる「藤村(フジムラ)」の詩集だと思って読んでみるかわいらしさ。

田中絹代の息子ハルオも素朴で素直でよい感じだし、ところどころにはさまれるユーモアの味わい、当時の銀座の風景、和風流しの珍しさも興味深く、こんないい映画だったんだと感嘆。

初見との間に役者さんの知識が多少は身についたのも助けになっている。

年を重ねた女のつらさを描きながらも、少し微苦笑風に主人公に寄り添い、そっと応援するような気配も感じさせ、観たあととても気持ちがいい作品だった。20年でなんという自分の感想の変わりよう・・