時代劇ざんまい

四連休中もふや町映画タウンから時代劇を色々借りてきて観ている。少し前の記事にも載せた橋本治氏の「完本チャンバラ時代劇講座」や春日太一氏の「時代劇入門」を読むことによって以前とは違うところにも目がいくようになった。

まずみたのは「鞍馬の火祭」(昭和26年大曾根辰夫監督)。

 

鞍馬天狗 鞍馬の火祭 [DVD]

鞍馬天狗 鞍馬の火祭 [DVD]

  • 発売日: 2008/09/01
  • メディア: DVD
 

 

 

鞍馬の火祭~鞍馬天狗・決定版~ [VHS]

鞍馬の火祭~鞍馬天狗・決定版~ [VHS]

  • 発売日: 1992/05/20
  • メディア: VHS
 

 ↑みたのはこちらのVHSにて。出演は、嵐寛寿郎美空ひばり(杉作少年役)、そして、杉作とさらに新吉という少年が預けられている国学者香取の娘に岸恵子。アラカンさんとの間にほのかな恋心みたいなのが表現されていてこれには驚いた。(べたべたしたものではなかったが・・なにか取り合わせとして珍しい気がして。)

春日さんの著書には、アラカンさんについて、「運動神が物凄くよくて俊敏、体が柔軟だった」と、さらに斬り上げる時の姿勢の美しさについて触れられている。橋本さんの著書には伊藤大輔監督の「鞍馬天狗横浜に現はる」で、300メートルの疾走、大移動撮影において、裾が乱れるほどの臨場感を監督は狙ったけれど、歌舞伎出身のアラカンさんは裾を乱さずに走り切ってしまった・・それは監督の肉体を持たない観念は、技術を持った肉体に負ける、ということと書かれている。そんな話を念頭にこの映画をみていると、今まで、自分はアラカンさんの持つ飄々とした空気が好きでアラカンさんの映画を観てきたけれど、立ち回りの姿本当に美しいなと、わくわくする気持ちで映画鑑賞ができた。毎年10月22日に行われる鞍馬の火祭の風景ももちろん取り入れられ、迫力を出している。

次にみたのが、「丹下左膳」(昭和27年松田定次監督。)

 

あの頃映画  丹下左膳 [DVD]

あの頃映画 丹下左膳 [DVD]

  • 発売日: 2012/12/21
  • メディア: DVD
 

 (みたのはVHS版)

山中監督の映画*1にも出て来たこけ猿の壺の話。丹下左膳というと大河内傅次郎が有名なのだけど、こちらはバンツマさん版。大河内さんの名台詞の言い回しの真似をきいて育ってきた自分にはちょっと違うなという感じがあった。淡島千景丹下左膳の彼女役なんだが、これが物凄く良い。淡島さん、「自由学校」みたいに変に元気良すぎる役でなく、よくわかった、そして色気のある女というのがなかなかはまり役のように感じた。「夫婦善哉」の蝶子もちょっとこの系列ではないだろうか。。

もう一本は「水戸黄門」(1960年 松田定次監督)。

 

水戸黄門(1960年)

水戸黄門(1960年)

  • 発売日: 2016/12/09
  • メディア: Prime Video
 

オールスターキャストもの。だけど薄まるという感じもなく心地よい。

一番心の歓声をあげたのは、錦之助の出番。短気な火消しが黄門さまに・・という笑えるしテンポもよい場面。ずっとすごい早口で江戸っ子ぽさを振りまいていた。

そして個人的に嬉しいのが左卜全の易者。長屋の一人なんだが、左さんはそういう時いつも特別の光があたっているかのようなおもしろさ。二度もその場をさらう場面あり。

先日初々しい右門姿(むっつり右門というニックネームだけに無口に推理して解決していくクールな役)を観た大友柳太朗*2がTVの花山大吉風というかなんとも親しみやすいお人よしの浪人役。こういうのもされるんだ。新鮮。大友さんのことをwikipediaで読んでいたら伊丹監督の「タンポポ」のラーメンの先生役だったか!そして、「タンポポ」の自分の場面を全部撮り終えていることを確認されて自殺されたとは・・右門でもまじめな雰囲気が漂っていたが、今さらながら、いや、家族や自分が年齢を重ねていくという現実を見つめている今だからこそつらい。

脚本は小國英雄。テレビの水戸黄門に慣れた目には新鮮な展開であり、とても楽しめた。

*1:丹下左膳余話 百萬両の壷(1935) - 日常整理日誌

*2:wikipediaには友の字のところに点が入っているのが正しいと書かれている。

冒険者たち

 

冒険者たち [DVD]

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  • 発売日: 2011/12/09
  • メディア: DVD
 

みたのはVHS版。

京都にレティシア書房という品揃えのよい本屋さんがあり大好きなのだけど、映画好きのひとにその話をすると、「レティシアといえば『冒険者たち』のヒロイン」という返答をきくことしばしば。なので、遅れ馳せながら観てみた。

冒険というものとほど遠い生活をしており、メカニックや飛行機乗り、海底に沈んだお宝などの要素も普段の自分の暮らしからかけ離れているため、はじめは傍観者的に観始めたのだけど、中盤から、一見無関係と思う生活をしている自分にも同感するところが大いにあり、最後にはメッセージを受け取った。人生は未完で終わったりするものだ、しかしだからこそロマンを持て、生き方、金の使い方を考えよ、ということを。そして自分の中で愛すべき映画という位置づけになった。レティシアのいとこの使い方なんかも良かった。

レティシアを巡る二人の男性がリノ・ヴァンチュラアラン・ドロン。(羨ましいほど信頼しあってる友人。)リノの方は当初おっさんって感じで対象外では?みたいな気持ちで見始めるんだけど途中から、たのもしさ、安定感にすごい魅力を感じる。中年の魅力というもの、確かにあるなあ。

聞き覚えのあるテーマ曲も素晴らしい。(途中からの口笛みたいな部分)

youtu.be

男と女

 

この映画も先日観た「フェーム」*1同様音楽が有名すぎ、またよく紹介される場面が印象的すぎて、観たような気になり、何か自分とはかけ離れた話みたいに思っていたが、観てみたら思ったよりずっと親しみやすい。出会いはこどもの寄宿舎、男も女もこどもを大切に思っている親であること、今はひとりでこどもを育てていること、それぞれの仕事を大切に思っていることなどが説明的でなく、さらっと映像を通してわかるようになっていて、二人との心の距離がぐんと近くなる。男の内省が結構事細かに描かれているのも微笑ましいような空気を醸し出している。

逆輸入的な考え方だけど、斎藤耕一監督が和製クロード・ルルーシュのようにいわれていて、先に斎藤監督の映画をみているものだから、映像詩的な表現だとか確かに斎藤監督の元祖といわれるのは納得がいくなあ、美しいなと思う。そして、心地のよい着地。出会ってからのごく短い期間の気持ちの動きを上手に表現してあると思う。

色々好みがあう人がアヌーク・エーメのことを大好きで、この映画を勧められたのだけど、本当に知的で美しく、みていて気持ちが良い。

寄宿舎の舎監の、保護者の男女に対するさばけ方というか大人な視線もフランスっぽい豊かさを感じた。

ミシシッピ・バーニング

 

ミシシッピー・バーニング [DVD]

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  • 発売日: 2009/04/24
  • メディア: DVD
 

先日アラン・パーカー監督が亡くなられた時、この映画のことを挙げておられる方が何人かいらっしゃったので、予備知識なしに観、公民権運動の運動家が殺害された実際の事件に基づいて作られたことを知る。KKK団の跋扈する世界。

wikipediaには物語の中ではウィレム・デフォー演じるFBI捜査官が、ロバート・ケネディの支持のもと徹底した捜査をしたように描かれているのが、現実とは違うというような抗議があったと書かれていたが、事実との差異はともかく、インテリ系若手上司ウィレム・デフォーと、現場叩き上げ系おやじジーン・パックマンの葛藤と協力のドラマは見ごたえがある。ジーン・ハックマンのウィンクの魅力的なこと。デフォーの若々しいこと。フランシス・マクドーマンドが副保安官の若き妻役。90年代以降の落ち着いてからの彼女がベースにある自分にはとても新鮮。

風船

 

風船

風船

  • メディア: Prime Video
 

 1956年川島雄三監督作品。

森雅之が演じているのが実業家として成功しているけれど、ふとその生活の継続に疑問を感じている人物。リタイア目前みたいな風情だが、私、今までいろいろみてきた森雅之の姿の中で一番といっていいほどいいなと思った。彼が思いを馳せるのが昔暮らしていた京都のこと。

f:id:ponyman:20200912211341j:plain四条通にあったカメラのムツミ堂が映ったり、

f:id:ponyman:20200912211450j:plain川口松太郎原作の映画「夜の蝶」のモデルとなった 京都 木屋町のバー「おそめ」のおそめさん(上羽秀さん)も出演。石井妙子さんの著書「おそめ」*1によると、セットでなく現場を使ったとのこと。貴重な映像だ。

森雅之の、脳性麻痺の後遺症が残る娘、芦川いづみがとてもかわいらしい。また、三橋達也演じるその兄と恋仲なのが、新珠美千代。私、幼い頃、新珠美千代の哀しげな美しさにえらく惹かれていたのだけどその時の気持ちがよみがえった。新珠美千代と対照的にモダンでさばけた感じで出てくるのが北原三枝裕次郎が亡くなった後悲しんでおられた様子しか印象にない人には新鮮であろうお姿。

衣裳担当は森英恵。かわいらしかった芦川いづみの服装など愛読しているキネマ洋装店に紹介が載っている。↓

cineyoso.movie.coocan.jp

怪談

 

怪談 [DVD]

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  • 発売日: 2003/06/21
  • メディア: DVD
 

長いし、小林正樹監督ということで(容赦なき本格派のイメージを勝手に持っている)身構えたが、民話的な空気漂うオムニバスであった。世界に向いているというかオリエンタリズム漂う作品。「耳なし芳一」、起きた事態も大変な超常現象ではあるけれどむしろ経文を書いた顔のビジュアルのインパクトが強いんだよな。幼き時に読んだ読本でもそうだったけど今回またそう強く感じた。田中邦衛花沢徳衛寺男がいい味。志村喬の住職が嬉しい。耳に経文を書き忘れた副住職がバリトン歌手の友武正則氏。友武氏、70年代に宝塚公演ではない「ベルサイユのばら」で吟遊詩人を演じておられたのが印象的だった。当時宝塚公演にとても行きたかったのだけど、チケットが取れなく、母が代替案として出してきた公演・・「これは違う・・」という思いも強かったけれど逆に今となっては珍しい公演に行った思いもあり・・ブログであの公演のことをまとめておられた方がいらっしゃったのでリンクを貼らせてもらう。

ameblo.jp

 

家光と彦三と一心太助、森の石松、右門捕物帖 片目の狼

こちらの三本もふや町映画タウンのおすすめ作品。

「殿さま弥次喜多 捕物道中」*1が楽しかったので同じく中村錦之助中村嘉葎雄の兄弟が明るく活躍する「家光と彦三と一心太助」を。

db.eiren.org

中村錦之助が家光とそっくりさんの一心太助に扮する「王子と乞食」みたいな話。お殿様と町のチャキチャキが入れ替わる面白さ。錦之助の演じ分けがうまく楽しめる。一心太助が親分と仰ぐ大久保彦左衛門の頼みにより命を捨てる覚悟で家光に化けてお城で過ごすのだけど、何も考えないで楽しくみりゃいいものをつい現代の眼で人の命の軽重というか、封建社会の厳しさというかそんなものもちょっと感じてしまう。ま、感じていいのかな、実際歌舞伎の「寺子屋」みたいにそうなんだし。(あんなシリアスな展開ではないけれど。)

森の石松」は美空ひばりが石松を演じる和製ミュージカル風味の作品。

www.toei-video.co.jp

 今、橋下治さんの「完本チャンバラ時代劇講座」

 

完本チャンバラ時代劇講座

完本チャンバラ時代劇講座

 

 

をちょっとずつ読みながら沢島監督の東映時代劇なども次々観ていて、橋本さんに読み解き方を教えてもらっているような次第だけど、セット中心で作りこまれた東映時代劇というのはどこか世話物歌舞伎っぽいというか、とにかく観て面白いショー仕立てという感じを受ける。

「ひばりの森の石松」では竜宮城まで飛び出したり趣向が楽しい。若き里見浩太郎が軽妙でよい感じ。

右門捕物帖 片目の狼」は、むっつり右門というアラカンさんがやっていた時代劇推理シリーズを大友柳太朗が引き継いだもの。

movies.yahoo.co.jp

 

ラカンさんのバージョンは1951年に新東宝で「右門捕物帖 片眼狼」として作られているよう。堺駿二氏演じるおしゃべり伝六という腰ぎんちゃくを使いながら、進藤栄太郎演じるあば敬+喜美こいしというライバルチーム(と勝手に先方がそう思っている)との対比で話が進む。右門氏、変装して潜入捜査して、アル・パチーノの「セルピコ」みたいな感じも。この映画でも里見浩太郎がほっそりいなせな雰囲気。春日太一氏の新書「時代劇入門」によると、里見氏はもともとは錦之助大川橋蔵に次ぐ形で出てきた、東映期待の若手美剣士系二枚目のスター候補生だったらしい。この映画では堺駿二氏に注目してみた。息子の堺正章氏、やはり駿二氏と目元とか似ているように思う。大好きな山形勲氏が伊豆守という華々しい役で嬉しい。「雁の寺」*2の住職、三島雅夫氏が暗躍。ちょっと今観るとびっくりするような設定あり。

 

時代劇入門 (角川新書)

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