喜劇 女は度胸、喜劇 男は愛嬌

 

あの頃映画 「喜劇 女は度胸」 [DVD]

あの頃映画 「喜劇 女は度胸」 [DVD]

  • 発売日: 2012/03/28
  • メディア: DVD
 

 

あの頃映画 「喜劇  男は愛嬌」 [DVD]

あの頃映画 「喜劇 男は愛嬌」 [DVD]

  • 発売日: 2006/05/27
  • メディア: DVD
 

タイトルも対になっているけれど姉妹作のような感じ。登場人物や設定が似ている。

1969年公開の「女は度胸」は森崎東監督のデビュー作とのこと。「男は愛嬌」の方はその翌年1970年公開。

 

男はつらいよ」シリーズでも森崎東監督の撮ったものは異色作といわれているが(↓参照)

dear-tora-san.net

 

上の寅さんのファンサイトの方が「男は愛嬌」について書かれている記事の中の

男はつらいよ』シリーズは第5作『望郷篇』から山田洋次監督のみがメガホンをとり、以降、車寅次郎のキャラクターは回を重ねるごとにマイルドな人格になっていくく。

しかし、もし『男はつらいよ』シリーズが毎回違う監督がメガホンをとる映画シリーズになっていたならば、車寅次郎は本作の渥美清が演じたように、もっと粗暴で、もっとヤバい男として描かれていたのかもしれない。

という言葉、私もいつも思っている。

山田洋次監督の欠点として時々耳にするのは、インテリの上から目線で庶民を描いているという評だけど、森崎東監督の作品世界は庶民生活にもうどっぷり浸かっている感じできれいごととは無縁のたくましさを感じる。二作品とも渥美清が立場的には寅さんのような破天荒な役だが、寅さんみたいな女性には初心などという設定ではなく、女性との交際もあけっぴろげ、大いに楽しいし、そこからの名台詞もたくさん。声を出して笑ってしまうし、めちゃくちゃな感じなのにきらりと胸にささるものもあってそれが後年の寅さんの説教口調ではなく、いい男、って感じ。

二作品とも悪い奴じゃないが、インテリ志向の弟、というのが出てきて、痛々しいことをしでかすというシーンがあるが、ちょっと他人事ではない気持ちにもなった。自分が考えすぎて空回りしている時に似てないか?と。しかしそんな弟の振る舞いも最終的には愛情のある回収、良い心地。

「女は度胸」の方では、河原崎建三演じる弟役が「家族とは・・」とか、青臭いことで悩んだりするが、その言葉が投げやりなような家族に引き継がれるたびドヴォルザークの「家路」のかかるセンス、妙な具合に生きるゲーテの詩集、森崎東監督の著書のタイトルにもなってるらしい「頭は一つずつ配給されている」の台詞など、非インテリ的スタンスといえども、生活の中に生きている箴言、のような空気が流れ楽しめる。

 

二作品の中で特に「女は度胸」の方が良いと思ったが、

羽田空港からの隣接する地域の当時の風景や

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倍賞美津子さんの若き姿などもキュートだった。

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また二作品とも倍賞美津子の友人役で沖山秀子さんが出演。「神々の深き欲望」*1で気になっていた女優さんだ。「男は愛嬌」の方で披露される歌声も素晴らしい。wikipediaの記載によるとジャズシンガーでもいらっしゃったようだ。

大菩薩峠

 

大菩薩峠

大菩薩峠

  • 発売日: 2017/09/15
  • メディア: Prime Video
 

橋本治さんの「完本チャンバラ時代劇講座」*1に「大菩薩峠」の原作の話が載っていて、岡本喜八版を観てみた。タイトで最高。 

仲代達矢演じる主人公机龍之介、橋本さんの本で読んだときなんとも不条理な存在に思え、不可解さで一杯になったのだけど、予備知識があったからこの作品を観たときは驚かずに済んだし、結構理解でき、ダークヒーローなんだけど、理屈はわかるという気分になった。

しょっぱなから巡礼姿で藤原釜足さん。「河童大将」*2に引き続きの出会いに喜び。のちのち机龍之介とも運命的に出会う、その孫お松役の内藤洋子さんの素朴さと賢さをあわせもった雰囲気!「伊豆の踊子*3でもまっすぐな瞳が素晴らしかった。

また、発端の新珠美千代演じるお浜とのやりとりや神尾主膳役天本英世氏の怪演、そして一番自分がひかれた西村晃演じる裏宿の七兵衛の人物表現は本格的なカメラワークによる仲代達矢氏演じる虚無の人間ドラマに娯楽的色彩を足しており、物語をひっぱっていってる。西村さんのかっこよかったこと!アクションもいけるのか!少し前に観たテレビ版の座頭市*4の、過去の重みを感じさせる親分役ではっとさせられたが、もう今後西村さんから目が離せない。また気になる渋俳優さんが増えた。

河童大将

www.kadokawa-pictures.jp

 

水練もの。泳ぐアラカンさん。

水練といっても戦国時代なので実戦の中の話。泳いで上陸→さっと最低限の鎧を身に着け戦闘という感じで薄着での立会いにハラハラする。

日本泳法というのはこういう使い方をしていたのか!という感じで新鮮。

水中撮影なども見どころ。

ラカンさん演じる碇之助と羅門光三郎氏演じる鮎之助(それぞれ名前からして水由来!)の友情と結婚にまつわる話が主軸となっているが、恬淡飄々とした碇之助のキャラクターがアラカンさんの雰囲気にぴったり合っていて心地よい。

ラカンさんの従者兵六に藤原釜足氏。(藤原鶏太名義)。兵六がすごくいい味で、ホンネトークをぶつけ碇之助の心情を引き出す。

 

舞台は月山富田城山中鹿之助という名前も出てくる。自分の好きな山陰の話であるな、と親近感。

yasugi-kankou.com

弥太郎笠

 

弥太郎笠 [DVD]

弥太郎笠 [DVD]

  • 発売日: 2019/06/12
  • メディア: DVD
 

 沢島監督の明るい東映時代劇を続けざまにみていて、この映画の耐えて耐えて、という構成に少し驚くが、「時代劇映画とはなにか」という京都映画祭の記念に作られた本の中で、佐藤忠男さんがマキノ監督の二面性というか、「次郎長三国志」や「鴛鴦歌合戦」のような調子よく威勢のいい軽妙なタッチのエンタテイメント作品で評価されている一方、東映の前身東横映画時代から威勢なんか悪い、じっと不遇に耐える鬱屈した気分がしっとりと行き渡っている作品群があるということを書かれていて、その系譜も感じた。途中まではのんきに進むのだが、こちらの気を緩ませておいての展開・・してやられた。

マキノ監督、「阿波の踊子」*1でも群舞を使ったシーンが巧みだったが、こちらでも盆踊りでお面をつけた集団の表面陽気なだけに持つ不気味さがうまく表現されていた。

パッケージの表紙に「暴れん坊兄弟」*2以来気になって仕方のない東千代介さん。錦之助演じる元旗本の渡世人りゃんこの弥太郎の元の世界での友人でまっすぐなお役人。似合っている。

この映画では、千秋実氏が市場の吉太郎といういかさま賭博師なんだが、とても光っている。愛嬌とたくましさ。かなり気持ちを持っていかれる。

ヒロインの父、落ち着いて年輪を重ねた良い感じだと思っていたら大河内傳次郎氏だったらしい・・まだまだ時代劇俳優の年代を追ったお顔の把握ができていない・・

国立文楽劇場錦秋文楽公演

www.ntj.jac.go.jp

 

ここ何年間か毎公演全演目を欠かさず観てきた文楽公演だが、今回は一緒に行く父の体力が本調子ではないので一演目のみ鑑賞。いつも一日中いるので一部で帰るのはあっという間の夢の時という感じだったけれど、実際父の様子をみていると、ほんとにあれでギリギリ(ないし、ギリギリ未満)だった・・とりあえず久々の開場という歴史的な公演。一演目だけでも駆けつけられてよかった。

 

冒頭リンクを貼ったページから文楽劇場のコロナ対策の動画が見られるがなかなか愉快に作ってある。

 

鑑賞したのは第一部 

源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)
 矢橋の段
 竹生島遊覧の段
 九郎助住家の段

 

父はこの演目グロテスクであまり好まないらしいが、新聞にも記事が載って

www.asahi.com

 

この演目に行こうということに相成った。確かに、スプラッター的であり、大胆である。「矢橋の段」では、歌舞伎で七之助が演じている*1のを観たことがある小まんという女性が乱闘ー大活躍。「愛のむきだし*2満島ひかりみたいである。「竹生島遊覧の段」は二艘の船を対照的に使った舞台が見どころ。楽しめた。でも語りに一番乗れたのは、「九郎助住家の段」の錣太夫さんのつとめられた「後」の箇所。悪役として登場する瀬尾十郎の大舅というお人形が、なんかくっきりしていて、東映時代劇の悪役俳優のような、どうかするとコミカルにもみえないでもない好みの顔であり(こちら参照)、彼について大いに語られる「後」は、錣太夫さんのリズムの良さともあいまってとても楽しく聴くことができた。*3

普段からtwitterinstagramを拝見している咲寿太夫さん、snsを毎日読んでいると、文楽に出会われた経緯(三浦しをんさんの「仏果を得ず」*4とのかかわり)*5や、先だっての大阪市廃止の住民投票への思いなど知れて親近感がわき、家族のような気持ちで、こちらの出番(「竹生島遊覧の段」の宗盛)も普通以上に楽しめた。

座頭市とスターたち 松坂慶子 辰巳柳太郎

 

 1974年から1979年にかけて全100作が放映されたテレビ時代劇シリーズ「座頭市物語」、「新・座頭市」。ポニーキャニオンがその中から20作品を選んで出したのが「座頭市とスターたち」というビデオシリーズ。これはその一本。

松坂慶子出演で75年1月23日に放映された「めんない鴉の祭り唄」(森一生監督)と辰巳柳太郎出演で75年1月30日に放映された「赤城おろし」を収録。

先日アラカンさんの国定忠治もの「国訛道中笠」*1を観て、解説によると「お馴染みのドラマ」といわれているのに、自分には初見で事情のわからなかった板割の浅太郎と叔父の挿話というのが、「赤城おろし」のテーマだった。国定忠治座頭市が出会っていて・・というお話で、座頭市に見せ場が作ってあるのでオリジナルとは違っていると思うが、少し理解が深まった気分。

「めんない鴉~」の方は、西村晃氏が、座頭市がたどりつく地域の親分なんだが、こちらが素晴らしかった。相手をきっちり視る眼。修羅場も乗り越え今は落ち着いているがいざという時は・・という風情。

松坂慶子に好意を寄せている男に浜畑賢吉氏。浜畑さん、どういう経緯だったのかわからないが、中高時代に母校で講演をされたことがあり、親近感を持っている。自分の中ではその時や、ラジオかテレビのトーク番組中の印象の方が強い方なので、心の揺れる、根は善良な兄貴を好演されているのが嬉しかった。組の一番の下っ端みたいなのを下條アトム氏。座頭市に対して兄貴分きどりのふるまいの、文楽でいうところの詰人形のような滑稽パートを引き受けておられた。

ミックス・ナッツ イブに逢えたら

eiga.com

 

恋人たちの予感*1の脚本、「ユー・ガット・メール」や、かわいらしい佳作「マイケル」*2や「奥様は魔女*3の監督・脚本のノーラ・エフロン監督・脚本作品。wikipediaには、「史上最低映画の一つ」などと不名誉なことが書いてあったが、そんなに酷いものに思わなかった。クリスマスって、happyじゃないとあかんみたいな空気が流れて人を追い詰めるよね、というような台詞が、「いのちの電話」業のスティーブ・マーティンの台詞であるのだが、その通りであり、そんなコンセプトのもとに進むストーリーはそう悪いものでないし、私はむしろ好きだな。

若きアダム・サンドラーウクレレを奏でる若い衆なんだけど、ウクレレに合わせて歌う歌も結構センスがいいし、登場人物の一人が壁画画家なんだが、最後に出てくる彼の作品もかわいらしくてとても好み。妊婦役のジュリエット・ルイスもクライマックスシーンでは聖母マリアのようだったし、この映画そんなに悪くない。ノーラ・エフロンの経歴に傷をつけるようなことはないと勝手に判断した。