ジーサンズ

ジーサンズ はじめての強盗(字幕版)

ジーサンズ はじめての強盗(字幕版)

  • 発売日: 2017/10/27
  • メディア: Prime Video
なんともがっくりする邦題だけど、原題は「Going in Style」、79年の(「ハリーとトント」の)アート・カーニーなどが出演の同じ原題の映画のリメイク。(こちらも渋い味わいの作品なのに「お達者コメディ シルバーギャング」*1という妙なタイトルがついている。)タイトルに惑わされて触手ストップになったらもったいない作品。
マイケル・ケインモーガン・フリーマン、そして、「リトル・ミス・サンシャイン」でいいなと思っていたアラン・アーキンが今回の主人公でまずそこだけでも嬉しいが、とにかく終始洒落ていて楽しめた。
前作も見直さなきゃと思っているが、今回地域社会との関わりの部分を強く感じたけれど、たまたま観た自分が地域でお役をするような年齢になっているからだろうか。。今回は三人の年配者の、社会との楽しみながらの関わりがとても素敵だった。地域のイベントなどというと時々遭遇するもっさりしていてお義理で参加、なんて感じでなく、こんな感じならいいなあと思えるようなしゃれっ気のある雰囲気でこうありたいよなと思えるようなもの。アラン・アーキンに気持ちをよせるアン・マーグレットが地域のお祭りのステージで披露する歌のシーンなども実はこんな身近に盛り上げ上手が!と思えるような種類の素晴らしさだった。アラン・アーキンが高揚するシーンでサックスもかっこいいし、大事なシーンで引用される、フランク・シナトラディーン・マーティン、サミー・ディビス・ジュニアというところも痺れる。三人のものの考え方も共感できる感じでとても良かった。
刑事役で出ているマット・ディロンもいい味。今まで自分は彼、どちらかいうと取り締まられ側みたいな役をよくみていたものでこういう感じになっているんだーというのも楽しめた。クリストファー・ロイドも三人の地域社会のお仲間みたいな感じでよい味で参戦。
「忘れられぬ人々」*2を観た時も思ったが、一緒に年を重ねていける人って大事な存在だな、と自分は失ってしまった人もいるからこそ実感。

忘れられぬ人々

 

忘れられぬ人々

忘れられぬ人々

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 三橋達也、小津映画の子役突貫小僧、青木富夫、大木実の三氏が老境を迎えた戦友役。シニアの登場に胸躍る自分には本当に喜ばしい映画。

私が愛用している名画座手帳(後述)という手帳を作っているのむみちさんという方が大木実氏のこと(や、twitterアイコンにも使用されている飯田蝶子氏)をお好きでいらっしゃるもので、のむみちさんの文章を読むうちに私まで大木実氏に注目するように。

大木実氏は、「張込み」*1のあの若者がーと思って観たし、青木さんも突貫小僧の面影ありだと思ったし三橋達也さんも川島監督作品のお姿と比べたり。。名画座的な楽しみ方一杯の映画。また青木さんのあこがれの女性として出てこられる風見章子さんの佇まいの素敵なこと。風見さんのことは、山田太一のドラマ「深夜へようこそ」で、やはりあこがれの老婦人として出てこられているお姿も良くて記憶に残っていた。

www.nihon-eiga.com

(↑上のページの写真コーナーで四枚目の写真に風見さんが写っている。)

また大木実氏の奥方を演じられた内海桂子師匠、普段よく慣れ親しんでいるポンポンとした語り口というよりもう少し控えた感じで、病を得て、人生の大切なものをしっかりと認識し、それを伝えようとしている居酒屋のおかみさんを出すぎないタッチで演じ切られていて心に残った。

お年寄りたちの平和な世界に忍び寄るのが、悪徳商法の連中だけど、そこで働く兵隊養成研修や、お年寄りに近づく手段などがリアルで巧妙でつらいものがあった。この映画の時代よりさらに今こういうことは悪い意味で進化しているように思える。悪徳商法の親玉が篠田正浩氏だが、お若い頃の爽やかな印象が素地にあって、大物感が出ている。

 

篠原誠監督はこの作品でも「おかえり」*2でも入り込みやすくベタベタしないタッチなのにしっかりと訴えるものがあってこれからも観ていきたい監督さんだ。

 

名画座手帳について

名画座手帳2020

名画座手帳2020

  • 作者:のむみち
  • 出版社/メーカー: 往来座編集室
  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: Diary
 

名画座手帳はタイムスケジュールも便利に記録でき、エアチェックにも便利で、しかもとても持ちやすい作りにもなっていて一回使い始めたら他は使えなくなっている。ちょうど今週のむみちさんがFMに出ておられたアフタートークがアップされ、こちらで名画座手帳の説明もあったので記念にリンク。

t.co

さらにおまけで、ちょうど今週のサンデー毎日に青木富夫さんの息子さんのインタビュー記事が掲載されている。そのことを、のむみちさんがtweetされている。ちょうどこの映画を観た週に!なんとなんと!

 

大奥 17

 

大奥 17 (ヤングアニマルコミックス)

大奥 17 (ヤングアニマルコミックス)

 

和宮(というか、この作品では替え玉だけど和宮として振る舞っているのでそう書いておく)大活躍。京都出身者らしさ満載!いけずぽいけど一旦心を開いたら頼もしいあの感じ、ものすごくよくわかりおかしくなってしまう。

この作品は男女逆転させることによって普段歴史ものに接する時、見てみぬふりして処理しているエロスが際立つ部分ありそこがまた魅力なんだよな。

M/OTHER

M/OTHER [VHS]

M/OTHER [VHS]

  • 発売日: 2000/05/25
  • メディア: VHS
籍は入れずの同棲生活(といっても、70年代の同棲もののようなしみったれ感はなく、趣味の良い一軒家をシェアしている二人は考えた末お互いを尊重する意味での暮らしという風に見える)をしている三浦友和渡辺真起子演じるカップル。三浦友和の別れた妻との間の息子を、元妻の入院で預からなければいけなくなり。。というストーリー。面倒なことがいやだからこその同棲という形であろうになんやかやと女の義務みたいなものがのしかかり、じわーっと甘えられ、渡辺真起子も本当は心地よく過ごしたいし、いい顔したいのに、当たり前みたいに押し付けられることや前妻を意識してしまうことでしんどくなってしまう。これ、我が子の世話でも、現状の日本のありかたでは、子どもに何かあった時、仕事の都合をつけたり拘束されたり責任を負わされたリするのが結局仕事が不安定雇用の女性側になることが多くて、女性は子どもが生まれた途端意識改革を迫られることが多いと思うけど、それをこの形で描くことでさらに気持ちがわかりやすくなっていると思う。子どものいる友人と子どもを遊ばせながらしゃべっている時の渡辺真起子のリラックスした表情、これ、ほんとに気持ちがわかる。元妻の退院が決まり息子が帰ることになってもこれはこれで良かったね、風に丸くおさめようとしている、三浦友和の雰囲気もリアル。都合の悪いことは半分目を閉じる感じ。でも悪気があるわけではなく、そういうものという感じ。預からなきゃいけないのが小学生というのも絶妙だなあ。これが老親だったりしたらもっと辛くなるしいたたまれない。自我の加減がちょうどいい。

風花

 

風花

風花

  • メディア: Prime Video
 

小泉今日子浅野忠信相米慎二監督、三人とも輝いている気がして別世界のひとのように考えがちであった。この映画もそんな理由でなかなか見なかったのだけど、大河ドラマ「いだてん」で大友良英氏の音楽が全然べたべたしていないのに心に沁みて大友さんの音楽担当つながりでみることにした。こちらの映画でも画面の邪魔をしないのに、自分史上最低に落ち込んでいる主人公二人の状況(なんていいかたをしたらおどけているようだけど、シリアスで自分が嫌いになるような状況)にぴったり寄り添っていてとても良かった。浅野忠信の高級官僚ぶりリアルであった。最近「いだてん」「沈黙」*1と彼のそういう役を見続けているけれどもしかしてこの作品のあたりからなのかな。ビデオジャケットにも浅野氏のことばとして「自分でも今まで観たことのない表情が写っている」というコメント。

国立文楽劇場開場三十五周年記念 初春文楽公演

第1部 午前11時開演
七福神宝の入舩(しちふくじんたからのいりふね)

竹本津駒太夫改め
六代目竹本錣太夫襲名披露狂言
傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
  土佐将監閑居の段

曲輪ぶんしょう(くるわぶんしょう)
  吉田屋の段

第2部 午後4時開演 
加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)
  草履打の段
  廊下の段
  長局の段
  奥庭の段

明烏六花曙(あけがらすゆきのあけぼの)
  山名屋の段

 

若い頃はお正月の改まった雰囲気、いろいろなことをさせられる感でいっぱいで大嫌い、平常モードが一番という感じだったのだけど、近年、お正月特有の雰囲気が好きになってきた。松なんかの模様もいいな、と感じ始めている。

文楽劇場も新春らしい装い。舞台正面のにらみ鯛。(関西特有のものとか?)

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三番叟のお人形のそばの餅花。

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午前の部がはじまる15分くらい前に舞台を清める意味で、ノンクレジットで人形遣いの方も顔を出さない幕開き三番叟というものが舞われるけれど、最近ぐっとくるようになった。これから、だんだん名前が出て、顔も出るようになってくるんだな、というような・・(こちらの記事を拝見していたらまったくの一番若い人というわけでもないそうだけど、どちらにしろ、これから感はあると思う。)


舞台の方も七福神宝の入舩という七福神が全員舟に乗っているおめでたく、かつ舞台装置もにぎにぎしい楽しい演目から始まり、廓ぶんしょう(文楽の書き方だと文と章という字が組み合わされて一文字になっている)の揚屋吉田屋も餅つきから始まったり、お正月のかわいらしいお飾りがついた餅花の装飾など、お正月ムード満載。七福神、それぞれが芸を披露というかわいらしい内容だったが、弁天さんの髪飾りの鳥居や福禄寿の頭が伸び縮みなど造形的にもとっても楽しめる。しょっぱなから海の青と紅白がとても鮮やかできれいな舞台。

ほかの演目も流れ的には無理やりでもほとんどハッピーエンド的なおめでたい内容になっていたように思う。

「吉田屋〜」は、零落した御曹司が着ている紙衣、これがパンフレットの表紙に使われていたが刺繍の縫い取りで、衣装をよくみる楽しさというのもあるなあと思った。


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今回は錣太夫さんの襲名ということもあり、「傾城反魂香」は、やはり襲名にかかわるストーリーだったし、確か違う演目でも(七福神?昨日のことなのに曖昧・・)錣太夫さんの襲名を祝福するワンシーンが挟み込まれ素敵だった。「傾城反魂香」、いつ見てもちょっと地味な演目のように思えるのだけど、もともと江戸時代に口が達者で有名な坂田藤十郎に、あえて、吃音キャラを演じさせるというしばりがウケた演目だそう。踊りの上手な人の「棒しばり」みたいな感じかな・・

一番場がはりつめて集中していると思ったのが午後からの「加賀見山旧錦絵」。「いだてん」や「スカーレット」で黒島結菜さんという女優さんが気になりはじめ、「アシガール」というコミカルな時代劇のCSでの再放送を見ているのだけど、女の子の活躍ものって大好きで、この加賀見山はまさしく女忠臣蔵ともいわれる、召使お初大活躍のストーリーで、 お初を遣っているのがいつも優れた運動神経を感じさせる桐竹勘十郎さんで、もうはまり役。長局の段の二分割画面もとってもいい!劇場全体の集中の圧がすごかった。

この演目から作られた映画の鏡山*1も、今回とストーリー少し違うんけれど、いいんだよな。(映画の方の記事のコメント欄にはかなさんが文楽の「加賀見山」をご覧になった感想もありとても参考に・・)

 

最後の演目「明烏六花曙」の手代は人間で演じるなら笹野高史さんだなあ。お人形が笹野さんにしか見えなかった。

アシガール DVD BOX

アシガール DVD BOX

  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2018/06/02
  • メディア: DVD
 

 

 

 

沈黙

沈黙 -サイレンス-(字幕版)

沈黙 -サイレンス-(字幕版)

  • 発売日: 2017/07/12
  • メディア: Prime Video
イッセー尾形さんがすごいということを購読させてもらっているブログ*1で拝見し、録りだめしていたこの作品をみた。彼が演じたのは物事の本質をつかまえられる本当に頭のいい人物であった。
日本の庶民が英語でコミュニケーションをとっていることをのぞいたら日本製の映画のように日本の描写がしっかりしていて違和感なく作品に集中。
公立の小学校からカトリック校に進学した自分は当初、思想というより修道院での生活やマリア像の美しさなど平時のキリスト教の美にうちのめされ、この映画の最後の読経みたいなもの(それは京都で育つとあまりにも日常的)から逃れたい一心で傾倒し、その流れで「沈黙」も読んだのだけど、心を惑わすとんでもない問いかけをしている本という印象を持ち、ただ事象を読んだだけで終わっていたように思う。
今もわかっているかどうかだけど、(それが教会であっても)人間の作った制度に従うのでなく、目の前の人間とどう対峙するか、それがイエスの伝えた「愛」だということだという風に私はこの映画を理解した。神の沈黙ゆえに無神論に走るというような話ではない。
先日「いだてん」で、浅野忠信氏が保守系議員のいやな感じを上手に演じている姿に驚きかつ感心したのだけど、こちらの映画でもそっち系の人間をうまく演じている。
またイチゾウという切支丹村の精神的支柱になっているような人物を演じている笈田ヨシという俳優さんの神々しさにもうたれた。塚本晋也氏と彼のコンビネーション、素晴らしい。
現世と天上をつなぐ象徴のような窪塚洋介もほんとに適役。彼の持つものをとてもうまく引き出して生かしている。
マーティン・スコセッシの映画のカトリック的な悩みが描かれたものって、みた瞬間は地味な印象だったり、この映画で語られるそれこそ沼の日本に生活している自分にはそこまでピンと来なかったりもするのだけど、生活の中でじんわりと迫ることかある。以前みた「救命士」*2なども、みたときの感想を読むとさえないけれど、救わなきゃいけない相手が無限に発生する中での無力感とか、ふと客のすごい高齢化が進んでいる近隣のショッピングセンターにいるときに思い出してしまったりすることがある。