王子と踊り子

 

 

王子と踊り子(字幕版)

王子と踊り子(字幕版)

  • 発売日: 2015/04/15
  • メディア: Prime Video
 

キャサリン・ヘップバーンとの軽いドラマ「恋の旅路」や、監督作品「結婚」を観て*1、ちょっとした ローレンス・オリヴィエブームが自分の中に訪れ、この映画も観てみた。「王子」という邦題がついているけれど、wikipediaによると、このタイトルの「prince」は「大公」の意味とのこと。オリヴィエは、王子なんて感じでなく、国王の父で摂政、確かに「王子」の訳では違和感あり。この映画でのオリヴィエはちょっと津川雅彦風。

この映画で大事なのはマリリン・モンロー演じる踊り子の役。大公も軽い気持ちで滞在先に呼び、観ている方もそんな気持ちで彼女を観始めているのだが・・というストーリー。展開もイギリスの舞台劇が原作らしい空気。

マリリン・モンローは、映画化権を購入しこの作品に取り組んだようだけど、オリヴィエがどうも現場で彼女に対して厳しかったようで。。「マリリン7日間の恋」というのはこの映画の裏話が描かれている作品らしい。

 

 

マリリン 7日間の恋 [DVD]

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  • 発売日: 2012/08/03
  • メディア: DVD
 

 

 

 

 

夜明け前

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木曽路はすべて山の中である」という有名な冒頭の言葉だけは知っていたけれど、ストーリーの方は何も知らずにみてみた。滝田修演じる青山半蔵という馬籠の庄屋の家に幕末に生まれた男が嫁をもらい、親の後を継ぎ、平田篤胤の教えのもと、よき地域社会を作ろうとするが。。という物語なのだが、これがちっとも退屈しない。宿場町ゆえ、天狗党新選組(の前身?)、錦の御旗の行列などが馬籠を通っていき、どの時代まで来ているのか追える。そして、この半蔵という、島崎藤村のお父さんをモデルにしたという人物がまじめに煩悶するところに、親近感をおぼえる。物語の最後、半蔵が自分の現在の年齢と同じであったというのも、この年齢ともなるとそういう気持ちになるなと思ったり、昔の56歳は、ずいぶん年寄り扱いなんだなと思ったり・・

牛方のストライキの場面での中心的存在殿山泰司、迫力あった。

主人公半蔵の娘役、乙羽信子が可憐。新藤兼人製作・脚本のゆえん?

以前松本に行くとき特急しなのでみた寝覚の床のような風景が出てきて懐かしい。撮影は宮島義勇

kiso-hinoki.jp

↑山の中の浦島伝説。名前も不思議な寝覚の床。

泪橋

 

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80年代、村松友視が世に出た頃、「時代屋の女房」と一緒に読んだと思うのだけど、原作はもう少しさらっとしたものだったような・・映画は脚本が唐十郎村松友視ということで、とても唐十郎風味。養鶏場で、鳥の羽根が画面一杯に舞い散るところや、隠微で耽美な屋根裏部屋、廃墟のような場所など、80年代に観た唐十郎の舞台を思い出した。

殿山泰司と、瀬川新蔵という役者さんが芝居狂の老人で、鈴ヶ森刑場の近くの泪橋という場所にちなんで、白井権八の出てくる「鈴ヶ森」を演じたりするのだが、白井権八*1、少し前、幡随院長兵衛ものの映画「大江戸五人男」*2でみていて、イメージがすぐ湧くのが嬉しかった。

(瀬川氏が特に芝居っぽい演技をたびたびされるが、前進座の人で時代劇によく出ておられたよう)

幡随院長兵衛と白井権八はお話の世界では*3一緒に権力に立ち向かう人間で、それと、過激派として追われていた渡瀬恒彦(苗字は白井)をかばう老人たちというのがきっちりリンク。

もう一度しっかり「大江戸五人男」のあらすじを読んでいたら、この映画で老人たちが匿う女性(佳村萌)のことを呼んでいる小紫の名前も出てきており、もう一度「大江戸~」や幡随院ものを観るとさらにイメージが増幅しそうだと思った。

f:id:ponyman:20200331113400j:plain匿っている女性の部屋でのシーンにはお人形さんも。

またこの女性に「イエスの方舟」や近親相姦的な要素もからませてあるのがとても唐十郎的と感じた。女性が指人形がうまく、病気の子の慰問に行っていたという話の中で、ちらっと披露する洋風パペットも気になった。

原田芳雄が、佳村萌の兄として、濃い存在感で出てくるが、その妻を演じた宮下順子の自然なたたずまいが良い。気が付かなかったが、どぶさらい(この言葉も唐風)として石橋蓮司がキャスティングされているが、原田さんと石橋さんはほんと良く一緒に仕事されているんだなあ。「竜馬暗殺*4もだったし、黒木組によく参加されているのかな。

鈴ヶ森刑場跡にお参りに行くシーンがあるが、八百屋お七天一坊もここで処刑されたらしい。83年の映画だが、泪橋付近の住まいの風情がとても良い。今あの景色は残っているのだろうか・・

泪橋 [VHS]

泪橋 [VHS]

  • 発売日: 1986/07/21
  • メディア: VHS
 

 

*1:芝居の世界では白井、本名は平井らしい

*2:大江戸五人男 - 日常整理日誌

*3:現実には年代的にほぼすれ違いらしい

*4:竜馬暗殺 - 日常整理日誌

かくも長き不在

 

かくも長き不在 (字幕版)

かくも長き不在 (字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

 少し前、wowowで放映しているのを途中から見て、その時、途中なのに画面にひきつけられるものがとてもあったので、今回ちゃんと最初から観てみた。

説明的でないのにヒロインのカフェの女店主の置かれていること、気持ちがすごくわかり、ぐんぐんひっぱられる。

カフェの前を歩く記憶喪失の浮浪者は、収容所に連れていかれ、死んだ知らせだけ来てる行方不明の夫なのか?夫の叔母が出てきて検分したりするけれど、彼女にとってはもう10何年もの前のこと、行方不明の甥っ子の名前を息子につけたけれど、その息子も立派に大きくなり。。今さらややこしいな、という思いもある感じ。

ちょうどNHKの「ねほりんぱほりん」という番組で、震災で家族が行方不明の人を呼んで話をきくという回があったが、割合早くお葬式などをして、心の決着をつけたい夫の母と、つけられない本人というようなシチュエーションが紹介され、まさにこの映画のようだなと。

調子のよい終わり方をするわけではないけれど、カフェの女主人の一生懸命が胸をうつし、挿入曲をきくだけでも胸が詰まるが、いやな気分の詰まり方ではない。自分にいいきかせるように語るラストのヒロインのつぶやきをきいていると、すぱっとあきらめたりせず強い思いを支えに暮らしを続けていってほしいと願ってしまう。

もしかして、カウリスマキの「過去のない男」はこの映画への返歌?過去を思い出すことがなくても新しくやっていくこともできるというような・・

くず拾いをしている浮浪者の男が熱心に作る切り紙細工、口ずさむオペラ、それらが簡単に過去への手掛かりに結び付くわけではないけれど、今の男の心根をあらわすようで心憎い設定。

翔んだカップル

 

翔んだカップル [DVD]

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  • 発売日: 2001/12/05
  • メディア: DVD
 

観たのはvhsで。

twitterで鑑賞眼を信頼している方が邦画ベスト10ムービーに挙げておられるのを見、また、相米慎二監督の映画、今頃出会い直したみたいなところが自分に起きていて、みてみた。

ほんと自分にとっては同世代映画で、ロードショー時には、こんな能天気そうな青春ムービー、自分には無縁でござい、などとえらそうに決め込んでいたのだが、そんな青春の屈託もちゃんと描かれていたし、とにかく描き方、省略の仕方がやはりうまい。柳沢きみお原作ということで、お色気中心の、男子中学生が喜びそうなものと思い込んでいたが、不動産屋の手違いというとりあえずの不可抗力でもって、そのシチュエーションの中、異性への興味とどう向き合うかという青春小説的な作りの物語でとても好感を持った。

80年代頃のファッション、ちょっと前だったら当事者すぎてはずかしい、みたいな気持ちになったりしていたけれど、薬師丸ひろ子のオーバーオール姿が今は懐かしくも可愛らしくみえる。

秀才役の尾美としのり。そのつもりで凝視しないと気が付かないカメレオンっぷり。

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円広志のコミカルな関西弁の先生、最近では関西ローカル番組のコメンテイターの姿しかみないので珍しい気分。

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薬師丸ひろ子は今もこのときも変わらぬ可憐さ。

石原真理子の賢こそうな美しさ。

鶴見辰吾、「早春スケッチブック」で、山崎努に振り回される秀才を演じているのをみたが、この映画では、九州からやってきた無骨ものの高校生を好演。わたしの耳には自然な九州ことばにきこえた。

オルカ

 

オルカ [AmazonDVDコレクション]

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  • 発売日: 2019/03/22
  • メディア: DVD
 みたのはvhs版。

公開時「ジョーズ」のパチモンみたいな言われ方も耳にしたが、そんなことはないんだぞ、という声を信頼できる人からきいてみてみた。

動物学を専攻している人からよくきく「人間が特別偉いなんて思うなよ」という言葉を思い出す、生き物への畏敬の念に彩られた作品。

最初は水族館に卸して金儲けなんて映画「ハタリ!」みたいな発想のリチャード・ハリスが思い直し、真剣にな表情に変わっていくところにリアリティがあるし、彼をそういう気持ちにさせるきっかけを作るのがシャーロット・ランプリング演じる学者。スベシャリスト魂の持ち主。この二人の間にデレデレしたものが流れなく、話も予定調和なところがないところがストイックでいい。

カッコーの巣の上で」でとても印象的な役、チーフを演じていたウィル・サンプソンという役者さんがこちらでも大事な役で出てくる。

三者三様のオルカへの考え方。リチャード・ハリスの当初の商業主義に釘を指すつもりでオルカの能力の話をしたシャーロットが、ついていけなくなるほどの気持ちになるリチャード。それは、彼自身のつらい経験をすっかり重ね合わせてしまったゆえだろう。ウィル・サンプソンは、いかにも昔からの土地のものという感じで、オルカのこわさも知っているが、振り回されるのとは違う冷静な考え方。リチャードは、もう、完全に男と男の決闘という考えになっている。彼の人生そのものの決着をつけにいくという考えだ。それ故シャーロット・ランプリングとの関係もああいうものだったんだろうな。パニックムービーなどでは全然なく、描いているのは、背筋をまっすぐに人生に立ち向かっていく男の生き方だ。そして、オルカの方も、退治するなどという、人間の思い上がりが通用するような存在でなく、もし人間が演じるとしたら三國連太郎のような、スケールも大きければ激情も力も信念も強そうなそんな相手だ。

そして、人間の小ささを感じさせるような美しい映像。

しかしもともとの事件の起こりであるメスのシャチを捕獲してその子どもが。。というシーンでは、人間に近いものを感じさせる音声もリアルでなんとも嫌な予感に満たされた。

家族会議

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横光利一の小説が原作でわたしがみたこのバージョンのあとリメイクもされている。

短縮されているようでところどころそれを感じるつくり。

株をたくさん買って攻防戦、とか、「ハゲタカ」*1に出てくるような仕事を原初的な形で佐分利信がしている。それに恋愛話がからませてあり〜というストーリーだけど、高杉早苗扮する令嬢のゴルフや車などの風物、つくづくモダンで豊かだなあと思う。高杉早苗、すらっとした美人という感じだったが、ダンサー出身で梨園に嫁がれ、今の猿翁のお母さん、つまり、香川照之の祖母だということ。

佐分利信が一応主人公でモテモテなんだが、ライバル役の高田浩吉氏が光っていた。戦前の高田氏、えらくなよなよしている作品「月夜鴉」*2をみたりして、戦前は主にそういう感じともきいていたけど、この作品では、佐分利信の信頼のおけるどっしりハンサムに対し小回りのきくちょっといいところのある敵役という感じで目を引いた。

私の大好きな桑野通子さんが当て馬的な役。(佐分利信及川道子の引き立て役。佐分利信とのお見合いが歌舞伎座というのに興味を惹かれた。時々昔の映画でみる表現だけど、昔はそういうやり方がポピュラーだったのかな。。)対する儚げなヒロインを演じた及川道子さんはこれが最後の出演作で、この少し後に二十代で早世されたそう。