クライ・ベイビー

 

 少し前に観た「タンク・ガール」*1がなかなか破壊力、ユーモアともに愛すべき感じで素晴らしかったので、その監督レイチェル・タラレーがプロデュースしたこの作品もみてみた。ジョン・ウォーターズ監督作品、すごく久しぶりにみたが、50年代songsに乗って踊りまくり、歌いまくり、反骨精神出しまくりでおもしろかったー。いやったらしいブルジョア表現とかも面白い。プレスリー風の甘い歌に乗ってジョニー・デップがパフォーマンスとか、なかなか楽しい。「テロリズムの夜」*2のモデル、パトリシア・ハーストが緑のおばさん役で出てくるのだが、「若者よ前に進むときは、左をよくみて、右をよくみて」みたいなセリフをいう当てこすりがおかしい。なかなか楽しい映画だった。

痴漢電車 下着検札

痴漢電車 下着検札

↑センシティブな表紙だけにテキストだけリンク

 

おくりびと」の滝田洋二郎監督のポルノ映画。滝田監督は「コミック雑誌なんかいらない」*1でもだったのだけど、その時代の風俗をよく映しこまれるそうで、「痴漢電車」のシリーズもそうだときき、私はそういうのが大好物なもので借りてみた。タイトルから想像できるような、ありえないようなシーンも出てくるが、それもばかばかしいの域にまで達している。竹中直人が「松木清張」という文豪(笑)の役どころ。清張さんのものまね。でも、結構真剣にやっていて、悪くなかった。昭和三年関東軍の謀略により、張作霖の黒真珠が・・とかいう、スケールだけは大きな設定で清張さんぽさを演出。80年代の深夜テレビみたいな香りもする。女の子の部屋のペンギンの絵、ウォークマン的なもの、フラッシュダンスっぽいステップなど時代はたくさん盛り込まれそういう意味では楽しめた。

さすらいのカウボーイ

 

 ピーター・フォンダが先日亡くなった時、twitterでこの映画を追悼として呟く方を多くみかけたが、確かにピーター・フォンダの詩情を感じる映像とストーリーだった。7年間放浪したあげく、ふらっと妻のもとに戻ってくるピーター・フォンダ演じるハリーと、旅の同行者アーチ。妻ハンナには留守中男に関する悪い噂も流れている・・それへのわだかまりと妻の答え、そしてハリーの受け止め。ここの部分、デリケートかつ雄々しくて良い。そののちのハンナのアーチへの嫉妬、焦り、そしてそれを口にする姿をみて、驚きの図太さを感じたが、そんなたくましさは彼女の歴史をみれば当たり前なのかもしれない。そして、アーチとハンナ、ハリーにとっての重要人物の対比的表現は頷くものがあった。

霧の波止場

 

霧の波止場【字幕版】 [VHS]

霧の波止場【字幕版】 [VHS]

 

名画の風格あり。ヒロイン、10代の役のミシェル・モルガンは1920年生まれなので1938年、この映画の製作当時18歳なんだ・・すごく落ち着いた大人の美しさ。山田五十鈴の若い頃も思い出す。港町ル・アーヴルで、自分のルールで酒場を経営するパナマという男。自立とはこういうこと。とても惹かれる。ジャン・ギャバン演じる脱走兵ジャンがやっとこさ描く夢・・デ・パルマの「カリートの道」のようなロマン。寄り添う犬のすばらしさ。カウリスマキ作品を思い出す。調べたらやはりアキ・カウリスマキのトップ10の29本(!)に選ばれている。←カウリスマキのトップ10リスト、堂々たる作品の中に、愛すべき小品と勝手に自分が位置付けている「スパイナル・タップ*1がランクインしていて微笑んだ。でもとてもわかる気がする。

野いちご

 

「空の巣症候群」なるものの存在をきいて、以前から警戒していたのだけど、最近久しぶりに子どもに会って別れた後など、これがまさにそれ?というような気分に出くわす。ぽかんと穴があいたみたいになって自分の生きる力の行方を探すような・・ふと、それはベルイマンの「野いちご」をみるベストな時期のように思えて鑑賞。正解だった。「野いちご」の主人公が栄えある名誉博士号を授かる日の朝、今までの人生を振り返って・・という話なのだが、ひとつのものが区切りを迎えた時のもうそれについては今からやりかえることもできないという締めくくり感は、件の「空の巣」とも共通するような気がする。

物語の教授がそれまでを振り返ってビターな気分になったりすることで、こちらも憂愁にとらわれる・・のではなく、自分の患部を教授の患部に置き換えて、救済を感じる物語。

初期ベルイマンの画面の美しさについてきいたことがあるが、こちらも素晴らしい映像表現で、はっとさせられながら見入った。「不良少女モニカ」*1と同じカメラマン、グンナール・フィッシャーによるものらしい。また映画の初めから心地よい緊張感があり、ぐいぐい引っ張られる。さすがである。素晴らしい仕事をみた満足感で充たされた。

テロリズムの夜

 

 ビデオジャケットより

市民ケーン*1のモデルとして有名な新聞王ウィリアム・ハーストの孫娘のテロ組織による誘拐と、その後彼らの一員となった彼女の変貌が全米を震撼させた「パティ・ハースト事件」。この実話を元に、「タクシー・ドライバー」で脚本を担当した鬼才ポール・シュレーダーが映画化した衝撃の問題作。

 最初のパティの普通の大学生という様子から始まり、一応パティの心情を中心に描かれているこの映画、なかなか面白かった。「ストックホルム症候群」みたいなものやら、生存するためのぎりぎりの選択やら混ざっているのか、ゲリラ組織一員となってからはその集団から認められたい一心となって、なんだか異常に同調したり、ゲリラ組織にはすごいいい顔、外には虚勢を張っているような姿が妙に身につまされ、でも、この人が自分が陥ってしまうかもしれないことを代わりに演じてくれてるんだという思いで興味深く最後までみられた。

ハースト家の新聞というのがタカ派系の、スキャンダル諷刺をかきたてるようなものというような話を読んでポール・バーテル監督の映画「スキャンダル・スパイ」*2を思い出してしまった・・

泣蟲小僧

movies.yahoo.co.jp

 

昭和13年に作られた、転がり込んできた母の交際相手とそりがあわず、母親の三人の妹のところに預けまわされる啓吉という少年の物語。啓吉は十二歳であるが、ちょうど「誰も知らない」の柳楽君の設定くらいの年齢だな・・母への思いと裏切られていることへの哀しさ、行動には出せないけれどそれらを悟ってしまっている気持ちが表情で出ていてうまい。

昨今の子どものネグレクトや「誰も知らない」のもとになったことなどは事件として扱われるけれど、戦後の豊かな体制が落ち着くまでの日本って、もしかしたら助け合っての子育てとかいっても意外と責任者不在になってしまうようなこともあったのかなと思ったりも・・「長屋紳士録」にしろ、「秋立ちぬ」にしろ、今ほど子どもについては管理しきれていない世の中のようにも見える。飲み屋にも子どもの流しがやってきたり、行方不明時も届け出という感じになかなかならないし・・次女寛子は「隣りの八重ちゃん」*1の逢初夢子。その夫の売れない小説家勘三はいい感じ。藤井貢氏とのこと。三谷幸喜氏の「わが家の歴史」という作品の中で山本耕史氏がやはり次女(なんと後に実生活でも結婚する堀北真希氏)の夫の売れない小説家を演じていて、社会とは少し外れた風通しの部分があって面白かったが、こういう、その子の責任者ではない大人との交流、「おじさんの系譜」ってあるように思う。(北杜夫原作で松田龍平が演じた「ぼくのおじさん」もだし、それの本家?ジャック・タチの「ぼくの伯父さん」もではないかな?)

貧乏画家と結婚した四女のちょっとモダンな家、電気を止められて夜体裁が悪いからって「ずっと灯火管制だといいのに」みたいなセリフ、時代も感じるし、朝ドラ「まんぷく」の画家の妻のところの生活、ある時期こんな感じではなかったっけ?(とびとびにみていたので言い切れない)とも思ったり・・

随所に、音楽で少年の心や状況を表現しているのがとてもいい。(トイピアノ、酒場で出会う流しのこどもの唄、無責任なおじさんのせいで迷子になり、尺八のおじさんのところで習う「箱根の山」など)

なかなか拾い物の映画だった。