お加代の覚悟

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1939年の島津保次郎監督作品。田中絹代扮するお加代は三宅邦子扮する踊りのお師匠さんの内弟子三宅邦子の夫は出兵していて銃後の守り。慰問袋の工夫、お加代さんの立ち居振る舞い、ご飯のシーンの箱膳など当時の暮らしぶりが自然に描かれているのも貴重と感じた。「この世界の片隅に」を観て以来そういう視点が備わった。

後半お加代が舞う「お夏清十郎」を題材にした踊り「お夏狂乱」のシーン、自分は子どもの時、日本舞踊を習っていて、この作品の村の子ども役を同級生らとつとめたことがあり、恋に破れたお夏を村の子どもがなぶるのを子ども心にキツいなあと思っていたのだが、ストーリーを知っていることで、このシーンのこの映画における効果をしっかり感じることができたように思う。

 

お加代の覚悟

お加代の覚悟

 

 

HOUSE

 

HOUSE (ハウス)

HOUSE (ハウス)

 

以前はホラーがあんまり好きでなく、この作品を見るまでに時間がかかってしまったが、別に怖がるような作品でなく、映像の遊びと飛躍と青春、戦争の爪痕をまぜこんだ大林監督そのものという感じの作品で大変楽しめた。ローテクだったりちゃちと思われるところも愛らしく、出てくる女学生たちの70年代後半ぼさもこそばいような懐かしさ。池上季実子も含め、脱がされているシーンがいくつかあるのはびっくりした。池上季実子、わたしはリアルタイムでは「男女七人夏物語」くらいから認識しているのだけどこの映画やこれより少し前の「おれの行く道」など女学生姿も新鮮。大林監督自身が少し出てきてヒッチコック的だったり、寅さん風の登場人物が出てきたり遊びも多い面白い作品だった。

ハレンチ学園

 

ハレンチ学園

ハレンチ学園

 

 

やっとこの自分の小学生時代の話題作を。荒唐無稽で、今の時代には全くそぐわないけれど、男子中学生の妄想みたいな変な魅力がある。「親びん」とか「~でげす」という言い回しにおぼえがあるのだけどこの作品が語源?それとも汎用されてた?小松方正バンカラ教師その名も荒木又衛門ならぬ荒木又五郎という役なんだけど、今まで小松さんのいかついならいかつい、危ないなら危ない一辺倒の役をみてきたが、この作品では強権的だけど笑顔がかわいいみたいな妙な魅力があった。個性的な面々による百花繚乱的な画面づくりなんだけど、ヒロイン児島みゆき(なかなかきりっともしていてかわいらしく、いい感じ)のいかつい母を演じたミッキー安川の場面、アップでは男バレバレだからか割合ロングで撮ったりマンガで置き換えたりしていたのだけどその小出しのいかつさがおもしろかった。左卜全の用務員さんが「老人と子供のポルカ」を校内放送でかけたり、かなり長時間あの曲が楽しめる。(少なくとも二回出てきた。)うつみみどりのまん丸メガネがかわいく、確かにカエルみたいで「ケロンパ」といわれていたのがよくわかる。(←と、思いきやうつみさんのwikipediaをみたら、「ロンパールーム」で清純なイメージだったのか「ゲバゲバ90分」に出始め非難されたとき、前田武彦氏が擁護した「ケロっとしたロンパールームのお姉さん」という言い回しからと書かれていた。そうでしたか。。)助監督のところに小沼勝監督の名前が。うれしくなる。

www.nikkatsu.com

絲的ココロエ

 

絲山さん、存じあけずに作品をたのしんでいたが、双曲性障害で、病気のため会社をやめて時間ができたときに文章を書きはじめられたらしい。この本は当事者としてどういう風に病気をてなずけてきたかのことで、なかなか当事者のそのときの感じを分析しながら書いたものに今まで巡りあわなかったものだから、そういう感じなのかと参考になった。(どれくらいのしんどさだったら医者にかかったらいいかのバロメーターなども自分がせねばならないことの面倒くささをA~Fまでのランクにわけてこの位のことができなくなったら医者に相談せよという指針を出されたりして明瞭だ。)自分の心のバランスを失いかけた時の処方箋にもなりそうな、落ち着いた頼もしい書物であった。

絲山さんはゆっくり時間をかけて計画をたて実行するのは得意だが、仕事の内容が流動的だったり、土壇場で予定を変えられたりするとパニックになってしまい、普通の状態に戻るまで何時間もかかるそう。主治医に相談したところ「自閉症スペクトラムのどこかに位置していて、アスペルガー障害の傾向がある、との認識で間違いない」といわれたそう。そして、スペクトラムに属している人は濃いほうから薄いほうまで含めれば、決して少なくはないはずだと。確かに。特徴を勉強してなるほどと思うことは多いとのことで、「おのれの弱点を知れ」とはこどもなんかにはよくいっていたが、自分での実践、自分をまずみつめ、特徴を知って折り合いをつけるという考え方は生きやすくなるために有効だろうなと思う。

 

こちら↓のページ、とてもわかりやすくこの本のことがまとめてある。

www.web-nippyo.jp

14章のハラスメントと承認欲求なども私もそう感じること多いな・・

婚約三羽烏

 

婚約三羽烏 [VHS]

婚約三羽烏 [VHS]

 

今まで「松竹三羽烏」のうち上原謙佐野周二はなんとなくわかる気がするけど、佐分利信は老け込んでる気がして、ちょっと異質なものを感じていた。権威的な役なんかすると岩みたいに見えて。しかし、この作品は、佐分利信の魅力が炸裂。バンカラで破天荒な感じがとても良く、なるほど昔からアイドルというのはそれぞれファンの好みにあわせて色々取り揃えているものなんだなと思った。

ストーリーは他愛ないけど、昭和12年の作品なのだけどしょっぱなから佐野周二三宅邦子と同棲していたような設定でびっくりした。繊維会社のサービスステーションが舞台とのことで、華やかな雰囲気なんだけどこちらのtweetによるとかって銀座三丁目にあったカネボウのビルらしい。

 

十九歳の地図

中上健次原作作品。
19歳の、新聞配達をして生計をたてている予備校生の鬱屈。すごい情熱で配達先の気に入らない人間のリストや地図を作成し酷い目にあわせてやろうと日々夢想。電話をかけたり直接行動にも出るという、大人になってしまった人間からはどうにかしてほしいような状況が綴られている「タクシードライバー」的作品。(「タクシー~」が76年、こちらが79年。)主人公の年上の同室の文学くずれみたいた蟹江敬三がいい味を出している。彼が慕うマリアという女性(マグダラのマリアのイメージかな?)、沖山秀子の体当たり演技のすごい存在感。新聞配達所の店主の妻原知佐子は色っぽい魅力がある。

ライムライト、アンノウン・チャップリン

DVD>ライムライト (<DVD>)

DVD>ライムライト ()

 

 みたのは、VHS版。(朝日ビデオ文庫)

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こちらのパッケージの方がずっといい。淀川長治さんの解説冊子つき。装丁和田誠

小学生のとき、「街の灯」、「キッド」、「黄金狂時代」などを喜んでみていたのだけど、「ライムライト」の、いつもと違ったチャップリンの姿についていけないものを感じ、そこでチャップリンは卒業、それ以来遠ざかってしまっていた。今回見て、やはり「ライムライト」のもの哀しさは小学生の私には無理だったなと再認識。淀川さんの解説によると、「ライムライト」を撮った時、チャップリンはハリウッドを追われかけており、チャップリンの心の中の煩悶(「私がどのように楽しい映画を作りづけたかも、もう忘れたのか」という思い)そのままが脚本になり、映画になっているということだ。

今回みてみたのは、先日からバスター・キートンに目覚めたからなのだけど、キートンの出番は少ないけれどとてもかっこいい。相変わらずの乾きっぷりがなかなか良かった。そして、益田喜頓さんはこの雰囲気受け継いでいる!と体感した。(この映画のキートン坊屋三郎さんにも似ているが・・) 「ライムライト」は、チャップリン演じる往年のスター、ネビルが名前を隠して演じた時と名前をだして演じた時の観客の反応の差がくっきりとわかったりするところが描かれており、「芸」に本当に受けているのでなく名前だけに受けているんだ、「芸」の力ではもうだめなんだよ、とも読み取れるけれど、別の方向でいえば、自分の好きなスターが、監督が、舞台にたつ、新しい作品を発表する、それだけでもうれしいものだよ、というものの見方もできる。「ライムライト」の中のネビルの姿は、哀しいだけではないように思う。

 

 「ライムライト」と同時にこちらのドキュメンタリーも。

チャップリン・その素顔と未公開映像 [DVD]

チャップリン・その素顔と未公開映像 [DVD]

 

 

(↑みたのはVHSで出ている3巻セット)

「ライムライト」ではあの有名な主題歌がすばらしいと思ったのだけど、チャップリンの作曲。やはり彼が作曲した「街の灯」の音楽も素晴らしかった。

おかしかったのは、「街の灯」のあの可憐な少女と途中トラブルがあり、彼女が一度は降ろされ再契約で撮りなおしたということ。チャップリンの完璧主義の気持ちを無視するような大雑把なところがあったらしく。。でもそんな彼女ゆえの・・って思えるような魅力のある作品だ。