スクラップ集団

野坂昭如原作らしい飛躍ありつつのコミカルでシニカルな作品。同じ野坂原作の「とむらい師たち」も思い出す。元医師の三木のり平が、釜ヶ崎の飲み屋で前職が、し尿処理、ケースワーカー、くず拾いの三人を見つけスクラップ会社を設立し。。という話。戦後昭和的というか、なかなか乱暴な手腕を発揮して繁盛させるのり平が妙に頼もしくみえたりもする。極端に描かれているけどこういうタイプの人たくさんいただろうな。

スクラップといっても壊す一方でなく、リサイクルを兼ねて商売にするという発想やボタ山廃墟を見せ物にしようという発想など先見の明ありともみえる。(見せ方はあくまでも昭和的だけど。) そこから行き過ぎて、すべてのものはスクラップするためにあるという発想になってしまうのも、ちょっとわからないでもない。

前半、スクラップ集団が釜ヶ崎に流れ着くまでの回想話になっているのだけど、ケースワーカー露口茂のエピソードのところで出てくるのが笠智衆の父親と宮本信子の娘や、左朴全、ミヤコ蝶々など。豪華だ。水上生活の描写は「泥の河」も思い出した。

釜ヶ崎でのスクラップ集団の下宿先の女の子が奈美悦子。奈美さんを映画でみるの珍しいように思うが、なかなかチャーミングだつた。

小沢昭一は哲学する屑屋みたいな役だけど小沢さんご本人の雰囲気とぴったりな感じがした。

スクラップ集団 [VHS]

スクラップ集団 [VHS]

 

 

死の接吻

若きマット・ディロンが少し路線変更して悪役を演じていて確かそのことが話題になっていたのが気になってみてみた。

不気味でショッキングな悪みたいなところはすごく90年代ぼい映画と感じたし、途中ヒッチコックの「めまい」をヒロインがみているシーンが出てくるのだが、監督はヒッチコックが好きでそういう方向で映画を作っているのだなあと思った。サスペンスとしてのおもしろさ重視、少々の無理は承知みたいなところが。

父親役のマックス・フォン・シドーはとてもよかった。この父親の守りは磐石だろうに、弱点は娘という風なところは説得力があった。

あともうひとひねりあるかと期待してみていたがそこはなく終結。でもヒッチコックもそういうときあるように思う。

死の接吻(字幕スーパー版) [VHS]

死の接吻(字幕スーパー版) [VHS]

 

 

遠い追憶の日々

ポール・ニューマン監督作品。ポール・ニューマンの作るもの、ほんとにいい。

この作品は死の病に冒された人々のサナトリウムが舞台。50を過ぎると結構直面してしまう身近な生と死の問題を丁寧にまっすぐに表現していて、それがつらくなく、うんうんわかる、そうだそうだと談話室にきたかのようなここちよさ。ずっと心に生きるであろう素敵な映画。ラスト近く、出てくる、失ったものをみるのでなく、今あるものを大切にしようという言葉は昨年亡くなった大切な友人windshipさんが亡くなる何日か前におっしゃってた仏教の「爾今」の考え方と本当に同じだった。

手紙は憶えている*1以来、魅力に目覚めたクリストファー・プラマーがこの映画でもたいそうよかった。というか、少ない登場人物、みな素晴らしい。隠れた佳作!

 

 ↑「ホラー」の言葉は版元にかかっているのかな??

 

ズレてる、私!?

 

ズレてる、私! ? 平成最終通信

ズレてる、私! ? 平成最終通信

 

 毎年、年末に出る中野さんのサンデー毎日のコラム。このひとの小粋な趣味が大好きですすめてくださる映画、本、デザインなどは全幅の信頼を置いている。今回も楽しく読んだ・・が、練りまくっているのでない、ほんとに日常感覚のおしゃべりが中野さんのコラムではあるけれど、今回社会や政治のことに関しては、ちょっと首をかしげて読んだ瞬間もあった。

それは、サウジアラビアジャマル・カショギ氏殺害事件の話題で、イスラム教のはなしが書かれ、まるで見当のつかなかったイスラム圏だけど、80年代イランのキアロスタミ監督の映画をみて関心を持てた、しかし、カショギ氏の事件を契機に1991年の「悪魔の詩訳者殺人事件」を連想し、「言論や思想に対して、なんて乱暴なんだろう」、「イスラムこわい、わからない」と思ってしまう。でも、「偏見の人」になってはいけないと、「キアロスタミキアロスタミキアロスタミと三回、心に唱えて、平静を保つようにしている。」との文章。

私もキアロスタミ監督の映画でイランという国を近く感じられたことは確かなんだけど、キアロスタミ監督はイラン当局に冷たい扱いを受けておられるしなあ*1、とそこが気になった。イスラム圏ひとくくりにするのでなく、もう少し細やかな説明があるといいのになと。日本に置き換えて考えた場合、一部の偏った意見の人をもってして、日本は全部ダメみたいな意見をみたらやはり私もいい気分はしないし、中野さんのコラムというのはだいたいそういうざっくりした意味合いで書いてあるんだけど。

あと、オウム幹部の死刑について。被害者遺族へのインタビューをまとめた村上春樹氏の、普段は死刑には賛成ではないけれど、この件に関しての揺れる気持ちが書かれた毎日新聞の記事*2を引用され、最終的には中野さんの中では、「ギリギリOK」との言葉。私も死刑制度について考えがまとまっているわけではないけれど、OKとの意見はやはり書けないな・・春樹氏のように揺れているというのが一番よいのではないか・・特にあの時の一挙の処刑はなにかとても落ち着かない気持ちになるものがあった。なんら解決されていないのに蓋をしたような・・

そういうしち難しく考え込んでしまった部分以外は、楽しいの連続。上のように少し考え込んでしまうようなところも私にはちょうどよい感じかもしれない。なんというか当初は意見が違っていても話を交わしたらおもしろくなりそうな気配。

先日周防監督との対談で興味を持った玉川奈々福さん、中野さんの編集者だったらしく、楽しい発見。テレビで流れたのも編集者スピリットがとても生きているおもしろい舞台。周防監督の活動弁士の映画も楽しみだし、中野さんがみにいかれてほめておられた若き弁士坂本頼光氏にもとても興味を持った。

www4.nhk.or.jp

 また、去年の本も装丁が素敵だと思っていたら、確か日本橋の榛原の千代紙のデザインで気に入っていたものを偶然装丁家の方が使われたようなことも書かれていた。(今、再読すれどその箇所が見つからず)榛原、まだ行ったことはないけれど、ますます行きたくなった。あちら方面では中野さんが町並が変わってしまったけれど、楽しい気分になる例外和菓子屋桃六が気になる。

tabelog.com

映画ではおじいさん映画「ラッキー」が気になった。

www.uplink.co.jp

結局なんやかやいっても中野さんいい!今年の年末もコラム買います。

ぼくの心はバイオリン

台詞の少ない映像詩のような作品。自然がともだちのような環境で音楽に目覚めた少年が出会う音楽家の老人との夢のような時間。二人をとりまくメキシコの情景が現実的でもあり幻想的でもあり。あの世とこの世、動物と人間、老人と子供、呪術と医学・・二つの要素が入り混じって作っていく作品世界。冒頭のアッシジのフランシスコのように鳥たちと心を通わす少年の姿や、相当な経歴を持っているような老人の、今はお菓子を売りながら音楽をきかせて日銭を稼いでいる姿、少年と出会った時のとまどい、そして交流をしているときの素晴らしい表情、万霊節のシーンなど、素朴だけどとても心に残る。よい作品と出会えて嬉しい。

movie.walkerplus.com

 

求婚物語

50年代の若き二人の新婚コメディ。感じたのは60年代にやっていたテレビ「奥さまは魔女」風味。(音の感じなども。)ウィンクして微笑むってテイスト。登場人物に嫌な人がいなくていい感じ。個人的には長年の結婚生活で忘れがちの初心にかえるような気分になるところもあった。

filmarks.com

 

 

ガラスの動物園

ボール・ニューマンの仕事ってほんと名前のメジャー感からは想像つかないほどの地味で繊細なところに目が行き届いていて接すれば接するほど好きになる。

この監督作品「ガラスの動物園」も繊細な表現でジョン・マルコヴィッチ演じる主人公の姉ローラに寄り添っており、ポール・ニューマンの心意気のあふれるものだった。南部で贅沢に暮らしていた時代が忘れられない母親の、オレ流のたまらなさ、これ20代でみていたら、なんという嫌な母親!で済ませていたかもしれないが、50代の現在みると、母親の気持ちもわかるし、他者からみたら彼女の必死さが空騒ぎみたいにみえてしまう哀しさもわかる。そして、それが肉親であるからこそかなわんなあと思ってしまう子の心も。

ジョン・マルコヴィッチがずいぶん若くて雰囲気が違っていて驚いた。

タイトルのガラスの動物園とは、内気なローラが大切にしているガラス細工の生き物たち。それらを介してのことばがローラ自身という感じで、こういう作品の心を伝えるポール・ニューマン、ほんとにいいな。

 

ガラスの動物園 [VHS]

ガラスの動物園 [VHS]