欲望

 

欲望(字幕版)

欲望(字幕版)

  • バネッサ・レッドグレーブ
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さらば青春の光*1に出てきた60年代ロンドンスタイル、もっと観たくなり検索したらこの映画がヒットした。いつか観ようと思っていたがアントニオーニ監督、難解なのかなと後回しになっていた。カメラマンが主人公のこの作品、「オースティン・パワーズ」のようなスウィンギング・ロンドンの出で立ちの面々が多数登場。楽しませてくれる。ファッションカメラマンかと思いきや街を歩いて色々な渋い顔も撮影、乗ってる車の内装や街に停まっている車もどれもこれも絵になり導入部分はただただ楽しい。主人公が売れっ子故かモデルなど自分が使う立場の相手だとえらい傲慢なのに出版社だかなんだかお金をもらう相手には結構丁寧だったりして人間的な小ささもちゃんも描写、こいつどうなることやらと中盤からのサスペンス的な部分もぐいぐい引っ張る。

結末まで観ると不条理な作品といわれていたなあと思い出すのだけど、結局主人公はモデル相手の表層的な仕事に飽いて、もっと自分を興奮させてくれる内からわき起こるものを撮りたかったのでは?と勝手に推測しつつアントニオーニをとりあえず味わえたことに自己満足を覚えながら幕。

さらば青春の光

マイケル・ケイン主演の「アルフィー*1など60年代のイギリスファッションに惹かれるものがあり「60s UK STYLE」という本を購入。

「モッズ」スタイル映画の代表作として紹介されていた「さらば青春の光」をやっと鑑賞。

 

さらば青春の光 [Blu-ray]

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  • フィル・ダニエルズ
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フォロー・ミー*2で70年代ロンドンの風景を観たことにもひっぱられたかな。

(「さらば青春の光」は79年に作られたけれど舞台は60年代。)

「60s UK STYLE」で予習していたので細部まで楽しむことができた。(リーバイスジーンズをお風呂で身につけタイトにすることや、髪には整髪剤つけないこと、「踊る大捜査線」の主人公青島のようなモスグリーンのパーカー、カスタマイズされたスクーター、男のアイメイク、フレッドペリーなど)ほんとにおしゃれ命な人たちで上半身ハダカなのに帽子とネクタイはしていたりキマっている。

仕事は単純労働、週末に発散する感じ。暴れたりもするけれど酒場での軽口などからほのみえるもともとは凶悪じゃない感じは「土曜の夜と日曜の朝」*3などとも共通するな。

バンド「ポリス」のスティングがちょっといい役で出てくる。(自分の好みではなかったが。)

フォロー・ミー

 

以前から映画愛で一杯の知人にすすめられていて、いつか観るつもりではいたけれど、「伊集院光の今週末この映画を借りて観よう vol.2」に周防監督のおすすめとして紹介されていて時が満ちたのを感じ鑑賞。

72年、キャロル・リード監督。ほんとに洒落た逸品。私も大好きになった。周防監督もおっしゃっているが、70年代前半頃のロンドンの風景がたくさん映っていてそこも見どころ。ヒロインはミア・ファロー。後年のウディ・アレンとの話などで(真相をちゃんと知っているわけではないが。。その応酬のみの印象)なんかおっかないようなイメージを持ってしまっているが、もうすでに思い詰めたような頑固な感じもあり、でも笑顔はとびきりで、このヒロインにぴったりに感じる。

皆さんこの映画でほめるのは(そしてもちろん自分もそう思ったが)彼女につけられた探偵の魅力。天使のような白い衣裳を着て、黒っぽいスーツをばしっと着た夫に依頼された仕事をこなす。そして・・という楽しいストーリーだが、気の利いた展開、脚本はピーター・シェイファー。「アマデウス*1の脚本の人だ。双子の兄弟アンソニー・シェイファーと、彼の功績を三谷幸喜のコラムで読んだように思う。(スキャンしたはずの新聞記事データを紛失。けれど、「鎌倉殿~」の義経梶原景時のやりとりなどにも「アマデウス」へのリスペクトを感じるものだった。)アンソニーの脚本のヒッチコックの「フレンジー*2などもロンドンの街の描写を楽しめたなあ。

周防監督や伊集院さんも語っているのだけどちょうどいい塩梅の終わり方。脚本の力もとても感じる。

それにしても魅力的な探偵を演じたトポルという俳優さん、きいたことがなかったなあ。テルアビブ出身のイスラエルの俳優さんで「屋根の上のヴァイオリン弾き」なんかに出てるらしい・・この映画ではすごい輝きだった。

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君去りし後

 

或る夜の出来事*1のクローデット・コルデールが、母親役。「或る夜の〜」でも感じていたがアメリカの高峰秀子のように感じる。活躍期間長くて、ちょっとコミカルにぽんぽんいう役もしっとりした役もハマる。

タイトルがシリアスぽくてしょっぱなから愁嘆場ではという危惧があり観るのに時間がかかったが、さすがみせる技術に長けているアメリカ映画。夫が従軍したクローデット・コルデールの沈んだ心のうちからさっと娘たちに展開。気難しそうな下宿人もさっと登場させ、じめじめさせない。父の不在と娘たちというあたりで「若草物語」がふと頭に浮かんだが、wikipediaにも「第二次世界大戦下における『若草物語』現代版を企図」と書かれている。

心細い時期の家族の暮らしを夫に少しずつ書く報告の手紙に沿った展開。少し前にゴールディ・ホーン主演の納得いかない銃後もの「スイング・シフト*2を観たのであちらと比べてしまう。描かれている事柄は結構共通だったりして、登場人物に共感しづらいあちらのあかん加減が際立った。

娘役がジェニファー・ジョーンズシャーリー・テンプル。シャーリー、ほんとに小さな子役時代の写真は観たことあるけど演技しているのを初めて観た。16歳のシャーリー、ふくよかでかわいく、姉妹の設定もコントラストがついていて見やすい。

軍事の名家に生まれ、優しい心映えなものでうまくその流れに乗れない男の子の葛藤がじっくりと描かれる。士官学校を中退した話が語られるが、その時「ウエストポイント」という言葉が聞き取れた。「長い灰色の線」*3の舞台だ。あそこからはあふれてしまう人物に光をあてているのは好感が持てる。立派な祖父に感じてしまうひけ目やプレッシャー、形は違えどもいよいよ大団円を迎えようとしている百人一首大河マンガ「ちはやふる」にも描かれているテーマだ。

ふや町映画タウンおすすめ作品。

或る夜の出来事

 

或る夜の出来事(字幕版)

或る夜の出来事(字幕版)

  • クラーク・ゲイブル
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この作品はその昔、HPの掲示板で紹介してもらっていて*1、いつか観るつもりのリストに挙がっていた。アマプラで公開していたので視聴。

バス旅行のはなしをすると、父が「或る夜の出来事」?「森の中の淑女たち」?などとタイトルを挙げてきていた。ようやっとあの会話にまともに返事ができる時には、もう彼岸。

新聞記者と逃げ出した令嬢の珍道中。。これは「ローマの休日*2の元ネタ?と少し観たところで思ったら、みなさん思ってらっしゃるようでこのタイトルを入力しただけで「ローマの休日」と並列して検索結果が出てくる。

上の画像もだけど令嬢役クローデット・コルベールの表情がなんともかわいい。ちょっと娘時代の高峰秀子が「なにさ」って言ってる時のような勝ち気な顔、そしてチャーミングな動作で惹きつけられる。

どうみたって彼女が結婚することになっている男よりバスで出会ったクラーク・ゲーブルの方が格段いい。どう決着がつくのだろうなと思っていたら。。最後に二捻りくらいあってニヤッとさせられる。こう来たか!うまい。

自分の周りの昭和世代の女子をみていても、意外と父親の厳しい目って大事なところ突いてあたりして。。と思うことがあるんだけど、この作品をみて友人から聞いていた彼らの姿が明滅した。

ゲーブルと上司の関係も良いポイントになってるし、バスの中で盛り上がった唄が後半出てきて効果的に使われたり、なかなか洒落た逸品。脚本優れている。

ベルカ、吠えないのか

 

この小説、2005年の直木賞候補になった故か2006年に読んでいるのだが軍用犬を通して世界の近、現代史を描く構想が当時の自分には難しく読了するだけでやっとという感じだった。

今年に入って古川氏の「平家物語 犬王の巻」*1を読み、その流れで、これが映画でも観た第二次世界大戦ものとしては珍しく日本軍の成功に終わり後味が悪くないキスカ島からの撤退作戦、その中で唯一心残りだった島に置き去りにされた犬の話から始まると知り再読してみた。キスカの映画*2を観たとき犬たちのことが気になって仕方なかったから。

「犬王」を読んだことも手伝って、古川氏が勝ち組に都合のいい歴史の中でないものとされた側からの物語を描きたかったのだと強く感じることができた。キスカの映画をはさんだことでとっかかりの犬への思いが強くなり、流転しながら生きていく犬の系譜を頼もしく読み、犬に形を借りた自分の物語として読むことができ、ラストでは感動。初回と全く違う読書となった。自分の中ではむごたらしいシャロン・テート事件を題材に別の展開を紡いでみせたタランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」*3のような手触り。

暴力脱獄

ピーター・バラカンのFM番組を聴いていたら伊集院光のゲストの回で「暴力脱獄」の話が出ていた。伊集院光が観たことのない映画をゲストに紹介してもらい、観る前、観た後にトークをする番組があったそうでそこでバラカン氏が紹介したのがこの作品だったとのこと。本にもなっている。

 

番組はこちら(映画の話は14分54秒くらいから)。この回に関しては2022/8/14までだけの限定配信とのこと。ポッドキャストでは流すのを省略されていたが主題曲 が紹介されていた。

 

暴力脱獄

暴力脱獄

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アコースティックで叙情的な曲がポール・ニューマン演じる節を曲げないが不思議な愛嬌もある主人公ルークにぴったり。ごく要所でしかかからないのがまた効果的。音楽の力を強く感じさせられ、心動かされる。

原題は「Cool Hand Luke」。バラカン氏もラジオで話しておられたが邦題から受けるアクション的で猛々しいものでなく丁寧な表現の人間ドラマ。

彼は武勲を挙げた人間なのに降格して除隊したという経緯が冒頭刑務所に入所するときさらっと読み上げられる。理由は具体的に描かれなく、その横顔は訪ねてきた余命いくばくもない母親の言葉などから類推するしかないというような寡黙な表現、それが彼の生き方とぴったりあっていて、きちっと心に届く。プロフィールでなく、いまここでどういうことをする人間かということで観ている者も作品内の監獄の仲間も彼を理解する。

手のうちは空っぽでも節を曲げない人間、それゆえ酷い目にもあい、それに耐える姿をヒロイックばかりじゃなくものすごく人間らしく、ほんとバカだなあ、みたいなエピソードも交えて描いているところにこの作品の魅力がある。ポール・ニューマンの代表作としてこれを選ぶ人が多数なのもよくわかる。完璧じゃなく、劇中「あいつは根性だけだ」といわれるようなその性根の輝いていること。みているこちらも自然に自分の社会で納得のいかないことに対してどう向き合うか、心の中のルークならどう振る舞うかということを意識させられる。余韻を残す良い作品。

牢名主的なジョージ・ケネディが1967年のアカデミー助演男優賞受賞。彼がニューマンに心動かして表情に変化が表れるの印象的だったものな。

暴力的な監獄のボスのサングラスの演出も心に残る。