清水次郎長、丹下左膳余話 百万両の壺

山中貞雄脚色の「戦国群盗伝」*1にハマって以来、山中監督とゆかりのある作品を数珠つなぎ式に観ている。

先日観たのは山中貞雄門下といわれている萩原遼監督の「清水次郎長」。

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若き日の次郎長を描いたもので、ちょうど先日ふれたところの「男の愛」や錦之助の「若き日の次郎長」シリーズ*2と重なる。この映画では石松の少年時代が出てくるのが楽しいところ。大人になってからのシリーズに登場するちょっとばかだけど一途でかわいい感じそのままの姿。猫をとってもかわいがっていつも一緒。石松がやらかした失敗のためにみんなが貯金する猫の貯金箱まで登場。なんて洒脱なセンス。

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ビデオに同梱されていた山根貞男さんの解説によると招き猫は山中監督の「丹下左膳余話 百万両の壺」を意識しなかったとは思えない、とのことで、それを確認するため「百万両の壺」を再見。

いやあすごく面白かった。初回に観た時*3も面白いと思っていたが、スピンオフ的余話でない方の丹下左膳*4もみてからだと余計に楽しい。

丹下左膳が居候している射的屋の描写のテンポの良いこと、大河内さんの丹下左膳と射的屋の女主人の関係がもうチャーミングで、すべてにピタッとタイミング良く笑えること。壺の顛末などすっかり忘れていたがとっても洒落た着地。お家騒動的なことになりかねない事情を抱えた城の次男ののんびりしていること。*5なんと成熟したストーリー。

色川武大さんの「なつかしい芸人たち」*6を読んで以来、気になる存在になりひょこっと出てくると嬉しくなってしまう高勢 実乗さんもとぼけたくず屋(なかなか大事な役回り)で登場。旧い邦画(に限らず映画全般に?)、観れば観るほど楽しくなるものだなあ。↓高勢さんのwikipediaには「百万両の壺」出演時の写真。

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そうそうそして確かに「百万両の壺」にも「清水次郎長」に出てくる貯金箱とそっくりの招き猫が登場してることもちゃんと確認。

「百万両の壺」はふや町映画タウンのおすすめ作品。

*1:「戦国群盗伝」「国定忠治」「六人の暗殺者」 - 日常整理日誌

*2:「男の愛」、「若き日の次郎長 東海の顔役」 - 日常整理日誌

*3:丹下左膳余話 百萬両の壷(1935) - 日常整理日誌

*4:自分がみたのは中川信夫監督の「新編 丹下左膳 隻眼の巻」、これも新編と謳っているのだからオリジナルではないわけだが・・一応丹下左膳のああいう姿になった事情が描かれていた。

*5:道場主は沢村国太郎沢村貞子加東大介のお兄さんだった!

*6:なつかしい芸人たち - 日常整理日誌