殴られたお殿様

Movie Walker

丸根賛太郎監督ほんとにいい!好きだ。
食い詰めた旅役者の二人が、給料代わりに渡された金持ちの爺様風の衣装(水戸黄門風)を着用して宿屋に泊まっては夜中に逃げ出すという旅を続けていたが、ある城下で夕立金左衛門という男と出会う。ひょんなことからこの三人がお忍びの巡察視と間違えられ・・・というストーリーだが、飄々とした味わいのある笑いあり*1、かといって甘すぎる展開でもなく、監督デビュー作「春秋一刀流*2もそうであったと、もっともっと監督の作品をみたくなった。
市川右太衛門が演じる夕立金左衛門という男が、城内の悪事をみて義憤にかられ、勘違いされているのを利用してそれを糾していくくだり、これは、名前からしても遠山の金さんということ?と期待させておきながら、最終的に遠山の金さんのように権力を使って糺すのではなく、という展開もえらく気に入った。そのあとのシークエンスも楽しめたし、現代でも通用するおもしろさだと思う。
だいたいこの城の腐敗というのが、農民のただ働きだとか、悪事を訴えてもしらばっくれるだとかちょっと今に通じるところもあって・・流れとしてはビデオの山根貞男さんの解説によるとちょうどこの映画の封切の1946年頃、農地改革が始まっていてそういう時代の空気も反映させているらしい。下のものが責任を上にさっさと回す感じも好ましかった。

山根さんはニセ巡察視の話を中心としたドラマ展開はゴーゴリ―の「検察官」にヒントを得たものであろうと書かれている。「春秋一刀流」もフランス映画「我等の仲間」からと書かれつつ、一見そうと思えないところに、つくり手の才能が光っていると書かれている。*3

丸根監督のものをもっとみたくて調べていたら、以前よく拝見していたサダナリデラックスというHPの定成寛さんの書かれた丸根監督に関するブログ記事が出てきて嬉しくなった。定成さんも丸根監督大好きだとのこと。天の巻はこちら。地の巻はこちら

*1:今だとひょっとすると問題になるのかなという吃音がらみのギャグもあるけれどこれもそんなにいやな感じがしなくて。

*2:http://d.hatena.ne.jp/ponyman/20160226/1456443095

*3:後述する定成さんによると、丸根監督の作品は「髷を結った欧風喜劇」とのこと