大日向村

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戦国群雄伝*1前進座の人たちの作品をもっと観たくなり前進座にとって初めての現代劇というこちらを。満州への移住で有名な大日向村、この映画は昭和15年に作られ国策色がとても濃い。今みると「キューポラのある街」で最後北朝鮮に夢をみて渡っていく人々をみるような複雑な気持ち、さらにそれが自分の国の事柄であるという切実な感情が起こる。満州から引き揚げてきたなかにし礼さんや宝田明さんの話をきいたことが大きいと思う。少し前にロケ地の美しさ目当てで再見した「瀬戸内少年野球団」でも教科書に墨塗りさせられたり、子どものかいた軍艦の絵を進駐軍に気兼ねして燃やさせるシーンが80年代に観たときよりずっと胸に迫った。かこさとしさんや、昭和一桁生まれだった温厚な義父が生涯自分が体験した戦時、戦後の経験をもとに「学校で教えられることをうのみにするな、自分の頭で考えろ」といっていた生の姿が重なったからだと思う。

とにかくその後のことを知っているから終始落ち着かない気分にはなったのだけど、話の進め方としては満州に代表が視察に行きどんな土なのかどんな農作物が育つのかと具体的で(もちろんこの土地についてもどんな経緯で日本人が使うことになっているかとかきいている身としてはまたなんともいえない気分にもなるのだが)日本での借金の問題をどうするかなども語られ小津監督の「戸田家の兄妹」*2を観たときのように満州に行けばすべて解決するのか?なぜ?というような疑問符を残す気持ちにはならなかった。だからこそ国策映画なのだろうが。

大日向村のその後を描いたドキュメンタリーがあるらしい。この映画の話も出てくる。

sasurai.biz

こちらを読んで、書いてあることに頷いた。土地がどういう経緯で日本人が使うことになったかということ、村の人も原作者の和田伝も知らなかったということ、まあ知らなかったというか考えようとしなかったというか、そういう感じになるかもなあと思った。

豊田四郎監督では「小島の春」*3も当時とすれば精一杯ヒューマニスティックにハンセン病のことが描かれているのだろうけれど、今からみると隔離政策そのものでどうしても複雑な気分になってしまったなあとそのこともちらっと思い出した。