この世は落語

落語に詳しくない自分でも楽しめるかなと思いながら読み始めたが、そういう私が楽しめる本で、さまざまな噺を噺家さんによるバージョンの違いも説明しながら、中野翠さんのいつもの、実人生で感じたことをうまくまとめるコラムタッチで読みすすめていける。そして、言及されている高座にふれたあとでもう一回楽しめる本だと思う。

頷いた文章

落語世界の住人にとって、「気が利く」=生活的教養の持ち主というのは学があるとか、金があるとか女にモテるとかいうのより、もっとかっこいいものと見なされていたかのようである。相手や周囲に余計な不快感を与えないこと。衣食住にまつわる「物」それぞれの特性をよく理解し、それにふさわしい扱い方をすること。しかも、静かに小ぎれいにスピード感をもって事を運ぶこと。それが一言で言うなら「気が利く」ということであったろう。そして、それはきっと「粋」という言葉にもつながっていたのだろう。

(p141 「やんわり返せ、やんわりと」の項)

この世は落語

この世は落語