オーディブルで聴いた小説 「うどん陣営の受難」「令和の雑漠なマルスの歌」

オーデイブルでちょこちょこ色んなものを聴いている。メモが必要な内容のものには向いてないかもだが、雨の日の待ち合わせだとか、単調な家事をしながらにはとても向いている。

 

昨日ちょうど聴き終えたのは津村記久子さんの「うどん陣営の受難」

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荒唐無稽に面白がらせるようなタイトルなんだけどさにあらず。津村記久子さんは会社や仕事が舞台の小説をよく書いているイメージだけどこれも多種多様な人と一緒に働く会社の味わい(いいことも悪いことも)が滲んでいる。会社の代表選にまつわる悲喜こもごものストーリーだが、人の弱みにつけ込んで自陣営に取り込もうとするやり方がえぐかったりしてほんものの国政や地方の選挙の話あるいは宗教の勧誘話を会社の話にしてある?という感じ。会社に置き換えてあるからこそのユーモラスさがある。会社で働く主人公の日常の描写はえらく細かくてリアリティがあって何かへのなぞらえとか関係なしに面白い。

自陣営に取り込むために人の不幸を利用する、わりと人間のやってるどこの集団でもあるかもしれないしな。

オーディブルでの朗読者もいくつもの声色を使い分け、基本的な空気的は伊藤沙莉風で愉快。

 

その前に聴いていた町田康の「令和の雑漠なマルスの歌」

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人に優しくない人を厳しく糾弾するという集団。その集団の「人に優しくしましょう」って歌に何とはなしに心を持っていかれる人びと。なんだかクロード・シャブロルの映画「ドクトル・エム」みたいな空気も。みんなで一斉に何かの方向に行くって内容の如何を問わずこわい。

町田康氏の描く世界はわやわやで自分の表面的な理解は越えてしまうような泥沼がありそう。だが、とりあえず表面的に味わっていても楽しい。上に貼ったあらすじだけ読んでいても筒井康隆風の口調だ。