ディア・ピョンヤン

 

大阪で生まれ育った在日コリアン2世のヤン・ヨンヒ監督。父は朝鮮総連の幹部、三人の兄は北朝鮮帰国政策で北朝鮮へ。

そんな監督の家族を軸にしたドキュメンタリー。

日本から生活の支援をして、マンギョンボン号に乗って家族に会いにいく様子。そこで映される90年代と2000年代の北朝鮮の姿も貴重な映像と思われる。

兄たちが帰国した当初は、現地の生活にレベルを合わせるよう、仕送りなどしなかった母が、孫が凍傷になった話をきいてからカイロや文房具などをどっさりと送ることにしたそう。

監督自身は北朝鮮のありかたには疑問を持ち、イデオロギー的には賛同できないが、人間としての父母のことは敬愛しており、複雑な気持ちで続ける撮影。終盤、カメラに映る父の小さな変化に心を動かされる。

あくまでも家族の姿を描く、その向こうに北朝鮮の姿がみえるという形がすっきりしていて、撮影姿勢も基本はナチュラルでとても観やすい。

冒頭に説明があった戦後の在日の人びとの北朝鮮籍韓国籍の選択は出身地によるものでないこともはじめて知った。監督の家族も地縁的ルーツが北朝鮮なのではなく、済州島だということ。

監督の著書を読んでいる家族によると、朝鮮大学校時代の暮らしを描いた著作も面白かったらしい。

この監督の家族を撮るシリーズも以降何作かあるらしく、何より描き方が面白いので続きも見ていきたい。