ETV特集 映画監督 羽仁進の世界 ~

先日ETV特集で「映画監督 羽仁進の世界 〜すべては“教室の子供たち”からはじまった〜」という番組を放映していた。

「教室の子供たち」という新しい手法のドキュメンタリーで、羽仁進監督の助監督を務めた羽田澄子監督やドキュメンタリー出身の是枝監督も出演。新しいというのは、それまで例えば教育のドキュメンタリー作品であっても脚本というものがあり、それを現場で演じてもらうような形をとっていたのを、脚本を排除し、いろんな状況を設定し、何かが起きた瞬間の子どもたちの反応を撮ることを目的とした撮影方法ということだ。

羽田澄子氏の著書「私の記録映画人生」*1には文部省の仕事だった「教室の子供たち」に従来にない撮影方法のGOサインを出したのは、当時の文部省視聴覚教育課の担当官工藤充氏で、その後文部省をやめ、フリーになって、岩波映画で羽仁さんの「絵をかく子どたち」「動物園日記」*2法隆寺」など、多くの作品のプロデュースをすることになったという。そして、その後羽田さんとご結婚されたとか。

番組の中では、羽仁監督の「教室の子供たち」や「絵をかく子どもたち」「不良少年」に映っている子どもや少年の現在の姿を撮っていて撮られる側からの話が面白かった。被写体になった子どもたち集めての羽仁監督を囲んでの上映会。貴重な良いものを見せてもらった。

「不良少年」の助監督は、のちに水俣病ドキュメンタリーで有名になる土本典昭監督。不良少年たちは、少年院でしてきたパンを隠す方法などをカメラの前で再現したり、ケンカも本気でしているようだった。巻き込まれている感じの土本氏の姿も楽しい。

番組では、小さい時から決まりにノレなく、ユニークなものが撮りたくてそれをまっすぐに追及する羽仁監督の姿を映し出していた。じーっと観察することが好きで、動物好きになった話、そこからのアフリカでの仕事。。「初恋・地獄篇」*3などのアングラな作品と、動物ものや、初期の教育ものを結ぶのは目の前で起きたリアルを映したいという考え方、そして、羽仁監督の楽しく撮りたいというキャラクターかとなんだか納得がいった。

そして、この番組がきっかけで、ふや町映画タウンの在庫の中でまだ観てない羽仁作品を借りてみた。

ひとつは

 

午前中の時間割り [DVD]

午前中の時間割り [DVD]

  • 発売日: 2019/02/13
  • メディア: DVD
 

 (観たのはVHS版)

もう一つは

 

アフリカ物語 [DVD]

アフリカ物語 [DVD]

  • 発売日: 2000/12/06
  • メディア: DVD
 

 こちらもVHS版で。

 

「午前中の時間割り」は、いかにも70年代、ディスカバージャパンやアンノン族、ヒッピーという単語が頭に浮かぶような作品。17歳の少女二人の8mmの旅の記録。自主映画的なノリ。国木田アコという女の子の70年代っぽいメイクにも惹きつけられる。国木田独歩の曾孫とか。。

「アフリカ物語」は、ジェームズ・スチュアーが老人役で出てくるが、彼の劇映画最後の作品とのこと。(アニメの声の出演の仕事がそのあとあるようだ。)ジェームズ・スチュアートを使ったことで、彼の俳優人生、彼から想像する空気がプラスされ、この映画の価値がかなり上がっていると思う。原案が寺山修司という割に、いかがわしさはない。製作・著作はサンリオ。サンリオの映画や文庫、ユニークで評判がいいが、これも独特の情熱とパワーを感じる作品だった。