にごりえ

 

樋口一葉の「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」の三作品をオムニバス風にまとめたもの。

最後に入っていた「にごりえ」が一番長く力がはいっていたが、「大つごもり」も「十三夜」もいい話。

にごりえ」の淡島千景の素晴らしさにはっとなる。今まで「自由学校」*1での元気すぎる姿、「夫婦善哉*2で苦労女房が過ぎる姿などを目にしてきたが、これは彼女の魅力がちょうどいい按配に発揮されている。客あしらい、店での振る舞いもちゃんと心得た頭のいい、店の看板酌婦お力。気前もよくてジェントルマンの山村聡と馴染みになるが、忘れられないのは。。という滋味ある作品。彼女の心のなかでいつまでも気になってる宮内精二の貧乏で先の見込みもなさそうなさま。まさによく文楽なんかでみる心中もののようなシチュエーションだが、彼らが笑いあっている短いシーンの見事さでその気持ちがすごくわかるようにできていた。

「大つごもり」のおはなしは並木鏡太郎監督の「樋口一葉*3という、作品と著者本人が混ざりあったような映画でみて好ましく思っていたところ。こちらの今井監督版では久我美子演じるお女中さんの健気さが目を引いたが、主家の娘役は岸田今日子だったらしい。wikipediaをみるとノンクレジットで錚々たるメンバーが並んでいて豪華。(「ガラの悪い酔客 神山繁」など。)それにつけても、この作品の結末や「十三夜」のいい味。樋口一葉の文章、何度かトライしかけて挫折しているが味わえたらいいだろうなあと思う。