美わしき歳月

1955年小林正樹監督作品。最近やっとポツリポツリと小林正樹監督のものをみているけれど、かなり好きかも。これは戦後10年後の若者たちと、親世代、祖父母世代の物語。その葛藤やら相手を思う心やらは今でも変わらない。また中学時代の友人が社会に出てそれぞれ思うところあって・・という「リアリティ・バイツ」な感じも永遠のテーマだ。
久我美子とおばあさんが営んでいる花屋さんが、起点になって出てくるのだけど、戦後、まだまだ若い犠牲者も身近にいた人が多い中、花の命や次世代での再生、みたいな話も伴奏のように描かれていて堪能した。
佐田啓二がドラマー役で、「嵐を呼ぶ男」みたいなシーンがあるのだけど、こっちのほうが早いんだな・・普段堅実な役をみている気がして、ここでは結構表面上はスカした、ちょっと拗ねたような役で新鮮だ。そしてなかなかかっこいい。彼が働いているクラブのようなところでドラムの演奏や、ダンスの相手を黒人男性に代わってくれ、といわれるシーンがあるのだけど、なんだか、「日本の戦後」っていうものを仄かに感じた。
東京の風景がたくさん出てくるのだけど、ここだとはっきりわかるのは国会議事堂前くらいで・・まだまだ車が少なく広々した景色をみられるのも楽しい。田村秋子さん扮する久我美子の祖母が、小沢栄太郎(この時は芸名小沢栄)と雨に濡れた赤れんがが美しいという道の話をするのはどこだろう・・佐田啓二木村功と待ち合わせする広々とした美術館前のような風景とか*1、鉄道にかかった橋の上からのシーンとか・・川本三郎さんあたりのご著書に載ってないかな・・すごく知りたい。
木村功の妹役の女優さんが可憐だなと思っていたら野添ひとみさんだったらしい。

美わしき歳月 [VHS]

美わしき歳月 [VHS]

  • 発売日: 2001/06/21
  • メディア: VHS

*1:twitterで拝見した記事によるとその美術館風は絵画館前だとか・・映画内で田村町といっている花屋の場所は今の内幸町とのこと