国立文楽劇場 第139回文楽公演

第一部 親子劇場 
ふしぎな豆の木
解説 ぶんらくってななに
東海道中膝栗毛

第二部
生写朝顔
 宇治川蛍狩の段
 真葛が原茶店の段
 岡崎隠れ家の段
 明石浦船別れの段
 薬売りの段
 浜松小屋の段

第三部
きぬたと大文字
生写朝顔
 嶋田宿笑い薬の段
 宿屋の段
 大井川の段

第一部の新作「ふしぎな豆の木」、工夫がされていて素晴らしかった。まずは主人公の名前の「本若丸」。大夫さんが「ほんわかまる」と語られるとその音がかわいらしくてかわいらしくて・・主人公は普通の子供。失敗した時のお母さんとのやりとりもリアル。地に足着いたまじめなこどもが物語に巻き込まれていく感じがとてもよくて、楽しめた。黒子さんも背中は迷彩になっていて木とまぎれてみたり、白い衣裳を付けたり、本若丸たちが戦う時の武器もこどものおもちゃだったり、お母さんとハイタッチの所作なんかしたり・・本当に工夫が楽しい。会場からもその仕事っぷりに大きな拍手。目頭が熱くなってしまった。

第二部の朝顔は、「浜松小屋の段」だけ蓑助さんであとは一輔さん。一輔さんの雰囲気が好きなのでご活躍はうれしいが、文雀さんも嶋大夫さんもおみかけしなかったし、世代交代の空気を感じた。蓑助さんが演じられたのは盲目になってからの朝顔。所作がなめらかでリアルだった。勘十郎さんが第二部第三部を通して萩の祐仙という滑稽な役をつとめておられ、はじめ意外な感じがしたが、よく考えたらとても似合っておられる感じがした。しっかりと場内の心をつかんでおられた。

今まで文楽をみてきて、「わかりやすい」語りをする人に惹かれがちだったけれど、今回は咲大夫さんのオーソドックスでなめらかな(という風に私にはきこえる)語りのありがたさを実感した。

ほんわかまる!

萩の祐仙も主人公たちの横に

☆7/30付 朝日新聞夕刊に宮辻政夫さんという演劇評論家の方の劇評が載っていた。宇治川蛍狩の段で、祐仙がなりすましをしているところで、

勘十郎の遣う祐仙が恥ずかしがって門の戸に抱き付きもじもじするなど躍動。祐仙の名手だった先代勘十郎は、ここでは門柱をなぜていたが、それをダイナミックに再創造した。深雪の父弓之助(玉輝)に怒られ柱に飛びつくのも、動きが大きく効果的だ。

とのこと。確かにもじもじしているところ本当におもしろかったし、モダンな感じがしたけれど、先代との対比が書いてあるとますます説得力がある。宮辻さん、以前読んだ吉田玉男さんの本「人形有情」*1聞き書きされた方なんだ・・