国立文楽劇場 初春文楽公演

第1部 午前11時開演
花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)
 万才・鷺娘

平家女護島(へいけにょごのしま)
 鬼界が島の段

八代目竹本綱太夫 五十回忌追善
豊竹咲甫太夫改め 六代目竹本織太夫 襲名披露
口上


追善/襲名披露 狂言
摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
 合邦住家の段


第2部 
南都二月堂
良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい)
 志賀の里の段/桜の宮物狂いの段/東大寺の段/二月堂の段


傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく)
 新口村の段

「平家女護島」は、俊寛と一緒に流された成経という少将が千鳥という鬼界ヶ島の女性と恋に落ち、赦免の船がやってきたとき、千鳥を連れて帰れるかどうかということが問題になる筋。以前故勘三郎さんの歌舞伎でみていたので、ストーリーが頭に入っており、もうはじめの、千鳥が出てきて俊寛が喜ぶ芝居の段階からその後のことを思い既にいたたまれない気分になる。でも大いにこっちは盛り上がる。古典はきっと、こういう、あらかじめ知っているからこそさらに楽しめるっていうの多分にあるだろうな。
勘三郎さんの舞台を初めてみたときは、古典で習った平家物語との差に驚いたが、あちらは悲劇仕立て、こちらは、俊寛が運命を自分で選んだもの、とはいうものの凡人ゆえの寂しさよ、という設定が入り込みやすい。
父が悪役として出てくる妹尾太郎兼康が、史実とえらい違う役回りにさせられているとかで憤慨していたのが面白かった。毎回これを観る度気の毒でならなくなるらしい。また調べよう・・

どうかすると、たとえば昔の冒険ものなんかで、足手まといになる女、っていうようなストーリがあるけれど、蓑助さんの千鳥は可憐でそんな感じにちっともならないのがとても良い。

「傾城恋飛脚」は近松門左衛門の「冥途の飛脚」と同じ題材ながら、かえてあって、近松版のクールさが目立つ。「平家女護島」も近松作だけど、近松作品の雰囲気、こうして同じ題材の他の作家のものとくらべると際立つな。「傾城恋飛脚」では、大坂からの追手が色々姿を変えて登場し、その探索シーンがちょっと導入部として笑いをとったり、入り込みやすくはしてある。

追善/襲名披露 狂言の摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ) 合邦住家の段は、切が咲太夫、後を襲名された新織太夫だったが、咲太夫はもちろんだけど、織太夫の落ち着いて堂々としていて聞きやすい様子、立派な襲名披露興行だったと思う。

今公演は満席も多いらしく、よい感じで落ち着いた掛け声が要所要所でかかり、とてもよい空気が流れていた。