国立文楽劇場 11月文楽公演

第1部 午前11時開演
近松門左衛門=作
心中天網島 (しんじゅうてんのあみじま)
  北新地河庄の段
  天満紙屋内の段
  大和屋の段
  道行名残の橋づくし


第2部 午後4時開演 
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
(八段目より十一段目まで)

八段目 道行旅路の嫁入
九段目 雪転しの段
山科閑居の段
十段目 天河屋の段
十一段目 花水橋引揚より      
光明寺焼香の段    

心中天網島」をみていると、立派な妻おさんは女の意地をみせているのかなと思ってしまう。できた人、というのはそういう側面ないだろうか?こたつに入っている治兵衛をみていると、何年か前の朝ドラ「てるてる家族」で、治兵衛風にこたつで泣いていた岸田五郎を思い出す。あれはほんものの大阪のエッセンスがたくさん入ったドラマだったなあ。

 

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今回は、人形遣い桐竹勘十郎さんが、「天網島」では、心中の張本人治兵衛、二部の忠臣蔵でもその段の主人公といえるだろう加古川本蔵をつとめられ、一部二部入れ替えの時間は台風被災への募金のためにロビーに立たれ、また4月から通しで「忠臣蔵」に行ったお客さんへのプレゼントの手ぬぐいの絵柄もご担当。八面六臂のご活躍だった。

ロビーでは、咲太夫さんが、ご著書の「心中天網島」のサイン入りの本を販売されていた。かたわらには織太夫さん、咲寿太夫さん。写真をお願いしたら咲寿太夫さんが「僕なんかは・・」と辞去された。咲寿太夫さん、普段ラフな感じのtwitterで親しんでいるのだけど、ご両人を敬っておられるのがとても感じられた。

 

近松門左衛門名作文楽考2 心中天網島

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「天網島」で治兵衛の相手、小春は簑助さんと簑二郎さんのダブルキャスト。ご高齢の簑助さんへの体調配慮もあるだろうな。簑助さんが舞台に立たれると、本当に場内が沸く。治兵衛の奥さんおさんは豊松清十郎さん、この方の女方にはいつも簑助さんとはまた違った可憐さを感じる。簑助さんの方がかわいらしげで、清十郎さんのは、さびしげな魅力があるというか・・

忠臣蔵」の加古川本蔵、いろいろなバージョンの「忠臣蔵」をみるにつけ、「忠臣蔵」の中で一番好きな人物かもしれないなどと思い始めている。自分の主君が暴走しそうなのをこっそり裏で賄賂を使って動き止めたことにより、高師直(吉良)の怒りの矛先が赤穂に、ということになり、途中ズルいひとみたいな扱いを受けたりもあるのだけれど、こんな腹芸ができるひとって優秀だし貴重だと思う。

今回は普段カットされがちな「天河屋の段」が上演され「天河屋義平は男でござる」という有名な言い回しの由来がわかり嬉しい。