吾輩は猫である(市川崑 75)

すごく市川崑風味が前面に出ている。原作はもっとのんびりしたイメージだったけど、画面にコントラストつけたり、得意の仄暗い日本家屋の廊下を映してみたり。現作を読んだとき何故か好きだった衒学的な迷亭を演じていたのは伊丹十三。洒落者で和服の着こなしがとてもかっこいい。みんな一見同じような和服なのに。

ちょうど市川崑版の「細雪」の美意識についてまとめた「細雪のきもの」を読んでその美意識を再認識していたのだが、

 

伊丹十三もデザイナーとしての仕事もされていた方でそんな個性がここに光っているように思った。いかにも漱石を思わす主人公のところに集う人々のよもやま話が他愛もなく続く中、主人公が拝金主義者として軽蔑し妙な具合にこじれている金田という家の話。これは奥方を岡田茉莉子が演じていて彼女が出てくると場面が引き締まる。ここの部分は原作より良い印象。現作を読んだのがあまりに若年期でそこの面白みが体感できる人生経験が不足していたのかもしれないが。