デルス・ウザーラ

黒澤不遇の時代あたりに作られ、製作に苦労したような話も仄聞しており鑑賞が後回しに。

漫画家ヤマザキマリさんが息子さんにこの作品の主人公の「デルス」という名をつけておられることは知っていていつか観ようと思っていた。

Xでソ連のモスフィルムの映画の話をしていたとき、この映画の話題が出て、どうにもならなかったんだろうなと思ってしまうようなシーンもあれど、全体には素晴らしい映像も観られる名作ということだったので鑑賞。

とても誠実に作られており誠実すぎるゆえに観ているものをワクワクさせるような派手さには欠けているけれど、自然に敬意を持って生きるデルスの生き方を尊ぶ心は十分伝わった。そしてあとで作品の沿革を調べて、デルス・ウザーラは実在の人物だったことを知る。

デルスに敬意を持つ探検隊隊長や武装した彼の指揮下の人間たちをみているとジョン・フォードの映画のようなあたたかい気品を感じる。

人間が上、とかではなく、敬意をもって森と共生していくデルスの姿勢は石牟礼道子さんの著作に流れるものと共通するものが流れていると思う。

アカデミーの外国語映画賞なども受賞しているこの作品、なぜ自分はちょっとぱっとしないのではないかというようなイメージを持っていたのかな。代表作と挙げられるような作品の躍動感を期待してみた人の何か違うという気持ちがそういうイメージを醸成したのかな?