映画黎明期入門

11/1のTBSラジオ「アフター6ジャンクション」の18時台、東京国際映画祭2022の「山崎バニラ活弁小絵巻2022」というプログラム*1に日比麻音子アナウンサーが行かれた話が出てきて、そこに登場したのがロスコー・アーバックル(通称デブ君)の名前。かねがね、ふや町映画タウンユーザーの方のtweetに出てきていて気になっていた人だ。

最近ふや町映画タウンのオーナー大森さんがサイレント映画を熱心に観ているなあと思ってはいたけれど自分はなかなか足を踏み込めていなかったのだけど、良いチャンスと関連作品を二つ鑑賞。

 

一つ目は「シネ・ブラボー!」

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この作品は二部に分かれていて、↓映画.comの紹介を引用させてもらうと

第1部はイギリスのフィルム・インステチュート提供のオリジナル・フィルムを日本で20分に編集した活動写真の創世期を語ったもの。ナレーターは小沢昭一、構成は山田宏一、デザインは和田誠、編集は武市プロダクション。第2部は、サイレント映画の醍醐味である喜劇と連続活劇のアンソロジー。製作・編集は「喜劇の黄金時代」「喜劇の王様たち」を製作したロバート・ヤングソン、音楽はジャック・シェインドリンが担当。

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一部の和田誠さんのデザイン、小沢昭一さんのナレーションが嬉しい。(二部ナレーションは三國一朗氏。)特に二部はサイレント時代の映画俳優が多数紹介されちゃんと知っていきたい気持ちに。一部か二部か忘れたけれど、ロスコー・アーバックルも少し出てくる。ただ本当にメドレーで観ているような感じで紹介は断片で一作品ちゃんと観たくなる。「音響 赤塚不二夫」の文字には驚いたが、漫画家とは違う同姓同名の音響の方だった。

二つ目はバスター・キートン傑作集より、ふや町映画タウンのおすすめ印のついている「コニー・アイランド」(1917 監督・脚本ロスコー・アーバックル 21分)の含まれている第5集を。

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  • ロスコー・アーバックル
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他には「自動車屋」(1920 監督・脚本ロスコー・アーバックル 15分)と、ロスコー・アーバックルの出てこない「馬鹿息子」(1920 ハーバート・ブラーシェ監督 70分)を収録。

キートンやっぱりいい。あの品のいい顔。

「コニー・アイランド」は妻と海辺に来たアーバックルがしつこい妻を逃れてコニー・アイランドへ。そこで同行したガールフレンドを横取りされたキートンたちと合流。ドタバタの末にアーバックルの女装なども披露されるがそのかわいいこと。またキートンが美しいすまし顔なのに納得のいかない立場になってしまう、それを品のあるポーカーフェイスでなんとかして潜り抜けようとする定石が本当に心地いい。

自動車屋」はキートン&アーバックルが自動車屋兼消防署という場所で繰り広げる騒動だけど、動きがエレガントで流れるようで、落ちてくる人間が走っている自動車にぱさっと納まるなどの動作もきれいに決まって気持ちいいし驚嘆する。この辺日本の古いコメディをみていると高いところでのやりとりなどちょっと動きや撮影がこれからの感じでリアルといえばリアルなんだけど映画の夢からは醒めてしまうところがあるなあと思ったりする。また「シネ・ブラボー」で解説があったけれど、共演する人たちもこの神業的動きにあわせられるよう決まったメンバーだったということだったけれど、「自動車屋」のオーナーなど巻き込まれの表情が最高で作品の楽しさを増している。

「馬鹿息子」は一番の長尺。ドタバタというよりストーリーでみせる話。こちらもやっぱりキートンの品。とんでもない浮世離れなんだけど、人間がかわいらしくて、関西歌舞伎のつっころばし的魅力。

DVD付録の日野康一氏の解説もキートンの芸名の由来がフーディーニと関わっているという話など興味深いものだった。

 

山崎バニラさんもブログ*2喜劇映画研究会/編・発行の『サイレント・コメディ全史 The Complete History of SILENT COMEDY』というにサイレント・コメディのあらゆるスタッフ&キャストが紹介されていて大変参考になったと書いておられるのだけど、ロスコー・アーバックルについても喜劇映画研究会の講演記録がとても参考になる。

www.kigeki-eikenn.com