F・W・ムルナウ

twitterでお年寄り映画のオススメとして「最後の人」が挙げられていて

お年寄り映画に目のない私、twitterに投稿されたおすすめをみて、観てみることにした。

すっと重々しい映画だと思い込んでいたのだけど、すごく見やすい。サンタさんみたいな風体でホテルで働いているエミール・ヤニングス。ベルボーイの制服に誇りを持っているし、周りの人も金ピカの制服を着ているときはちゃんと敬意を持って接してくれている。それが。。寄る年波で荷物をきちんと運べないとみなされ配置転換。そこからの悲喜劇。近所の人がまた服装や地位だけで人を判断する連中で本人も新しい仕事に誇りを持てない。そのことの描写がいわゆるドイツ表現主義的に妙に重々しくアクセント強めで可笑しい。配置換えからすべてに自信をなくしてしまう主人公の姿は現代に通じ、リストラもののさきがけぽいし、定年年齢に近づいている自分の身につまされること。

どうもラストは2種類用意してあるらしく自分はハッピーエンドの方を観たが、「普通ならここで終わるのだがあまりかわいそうなので」という注釈つきですんなり夢見られない。あれは作った人間の含羞?ほとんど字幕も出てこないこの映画、言語の壁を越えて楽しめるものになっている。

とにかく予想以上に楽しめたので、同じくムルナウ監督の作品でふや町映画タウンのおすすめ☆☆☆の「サンライズ」も。

以前テレビで放映していた澤登翠さんの活弁がついたもので鑑賞。活弁版だと映像字幕版と受ける感じが違ってしまうこともあるが*1この放映は活弁版もさりげなく、邪魔されることなく味わえたように思う。活弁でないバージョンを観ていないのでなんともいえないのだけど。

田舎の若夫婦のもとにヴァカンスでやってきた都会の女の魔の手、という映画だが、ジャネット・ゲイナーという女優さんの演じる若妻がもう可憐で可憐で。*2出かける遊園地などドイツ表現主義らしい重ね映しなどの凝った映像で楽しませてくれる。ユーモラス表現も随所に入り、全体にわかりやすい表現、とても堪能できた。

ドイツ表現主義無声映画、ということで勝手に敷居を高くしていたが先入観で判断はもったいないな。

*1:ふや町でおすすめの「結婚哲学」は、うっかり活弁版で観たらテンポが悪く、正当な評価ができなかった。

*2:第七天国』、『街の天使』と共にアカデミー主演女優賞