カツベン!、大河内傳次郎乱闘場面集

 

カツベン!

カツベン!

  • 発売日: 2020/06/10
  • メディア: Prime Video
 

 公開された時、周りで賛否両論だった作品。周防監督好きだし、活弁という素材も好きだし・・で、私もみるのを本当に楽しみにしていたのだけど、「否」の意見の中で、今活躍している活動弁士を使ったカツベンが聞きたかった・・という意見もあり、私も活動弁士特集のこの↓番組をみたとき、澤登翠さんや片岡一郎さんの活弁が本当に面白く、確かにああいうの聞きたかったという思いは持った。

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「カツベン!」も、片岡一郎さんの指導がはいったということで、主役の成田凌氏の活弁はなかなか魅力的であったが、監督や素材への期待が大きすぎて、ストーリーにはもう少しうねりが欲しいかなという気持ちになった。ドラマで好きになった黒島結菜さんの活躍は嬉しかった。

最後バンツマの「雄呂血」の場面が出てくるのはかっこよかった。二川文太郎監督も作品中出てくる。(←このことを確認しようと調べていて、山本耕史が演じていたのは牧野省三だったと知る。)

竹中直人が「それでもボクはやってない」に引き続き、青木富夫(=小津安二郎の突貫小僧の役者さんの名前)という役名で、「靑木館」という劇場が舞台なのはニヤっとした。

 

「カツベン!」を観たあとマツダ映画社から出ている「大河内傅次郎 乱闘場面集」というビデオを観た。弁士松田春翠さんの解説付き。「忠治旅日記」「血煙高田馬場」「新版大岡政談」「素浪人忠弥」など伊藤大輔監督、唐沢弘光カメラマンと組んだ傑作、断片しか残ってないものも多いらしいが、それらの断片がこのビデオには収まっており、佐藤忠男*1も「時代劇映画とは何か」で、以下のようにほめておられる。

マツダ映画社がいろんなフィルムの断片を集めて作った『大河内傳次郎乱闘集』というビデオが素晴らしい。ここには、すでに伝説と化している伊藤大輔の『新版大岡政談』〔1928〕や『素浪人忠弥』〔1939〕の、たぶんサワリと言ってもいいのではないかと思える部分が見られるのだ。大河内傅次郎がどんな凄い形相でスクリーンをのたうちまわったか、それをまた、唐沢弘光のカメラがどんなに不思議なアングルから、その空間にねじ込んで行ったか、これらはやはりマツダ映画社が保存したマキノ正博の『浪人街・美しき獲物』〔1928〕のクライマックスの大立ち回りの断片ととともに不朽の宝物と言うよりない。

このビデオのラストには、活動弁士のテレビでも澤登翠さんや片岡一郎さんの活弁の違いを味わえた「血煙高田馬場」がおさめられている。生き生きとしてとても愉快だった。

*1:このビデオの監修もされている