死刑執行人もまた死す

 

 大傑作。ふや町映画タウンのおすすめ度も高く、父もビデオ録画版もあるのにDVDであえてさらに買っていてこれは・・と鑑賞したが、本当に観てよかった。

タイトルから重々しい話なのかと手に取るまでに時間がかかったのだが、とってもうまい作り。「死刑執行人」というのは、チェコを支配していた人間の異名。チェコの人々が強いられている状況が冒頭少しの描写でわかるようにしてあり、あとはどんどん話にのっていくだけ。そしてパズルのようにたくみに人や人の動きが配置され、それがご都合主義でなく皆その人の必要にかられての自然な行動として感じられる。すばらしい配置。暗殺ものだけど、その実行を描くのでなく、暗殺が起きたあとのチェコの人々の対応を描くユニークさ。脱走もののようなハラハラ感を味わっている中に人の持つ崇高さが描かれその加減がすばらしい。影の使い方、モノクロ画面の美しさなどこういうのをドイツ表現主義と呼ぶのだろうな・・と味わう。「フリッツ・ラング」「ドイツ表現主義」などの単語から、敬わなきゃいけないけれど気合いのいるもののように勝手にハードルを設けていたが巧みな話術によって退屈させない作品で、自分の先入観は誤解だった。「THE END」の文字の前に流れる「NOT」の大書。力強い。(論座に載せておられる藤崎康さんという方の記事を読むとナチスとの戦いが現在進行形であるという意味と書かれていたが、自分には作られた時を超え、こういう闘いは観ているあなたの前でも現在進行形なんだよ、と自分にダイレクトに迫るものがあった。)

wikipediaによると、当初は120分版だったが、134分の完全版が1987年に公開されたそう。ふや町映画タウンでは120分版が★★★(むっちゃ、おすすめ!!!!)、私の観た134版(完全版)は☆☆☆(かなり、おすすめ!!!)評価。