プチ沢島忠監督まつり

この秋は時代劇まつり、みたいな様相に。戦前の松竹の映画もだけど俳優さんの顔とか覚えだすと次々みるのが楽しくて。あと、なんかモヤモヤしがちな日常、すっきりできるというのもあって。沢島忠監督の映画をつづけざまに三本鑑賞。

 

まずは「酔いどれ無双剣

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ふや町映画タウンおすすめ作品。友人windshipさんに「『赤ひげ』より面白い」とのたまわったそう。*1確かに「赤ひげ」的な医師を武道まじえ娯楽色豊かに描いている。 *2

私が注目したのは敵役の近衛十四郎氏。

画像ご子息松方弘樹さんともやはり似ておられる。

敵役がしっかりしていることで物語って楽しくなる。泥のような世界に漂いながらギリギリおのれの守りたいものを持っている男。立ち回り姿もセリフもかっこいい。彼の存在でずいぶんストーリーに厚みが増している。

そして、千秋実氏演じる落ち着いた看護係。彼の存在、そしてこの彼が!という展開でみているものの心をとても動かす。

 

 もうひとつみたのが「暴れん坊兄弟」

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 橋本治氏の「完本チャンバラ時代劇講座」*3にも楽しげに紹介されているが、私もこの作品とても気に入った。ぼんやりしているけれど考え方のしっかりしている兄に東千之介。武力に頼らない知的で美しい人。現代でいうと高橋一生があいそうな。。

そこつだけど兄思いの中村嘉葎雄演じる弟侍、この元気があふれているのも楽しい。親友の遺児ということで千代乃介を大事に思い、身びいきになる進藤英太郎演じる家老、人を大切に思う愚直なまでの様子が笑いを誘いつつも胸をうつ。(この塩梅が肝心。)

クライマックスシーンも笑いつつうなずかされるし、なんとも楽しい気分になる逸品。

人文書院の「時代劇映画とはなにか」

 

 

筒井清忠氏いわく、邦舞出身で、歌舞伎出身者に比べるとおとなしくみえてしまう(意訳)東千代之助さんの資質を最大限に生かした沢島監督自身の脚本とのこと。ほんと私、どれかひとつ沢島監督作品をといわれたらこれをすすめるな。(筒井さんとも同意見)

 

もう一本はふや町映画タウンのおすすめ

右門捕物帖 地獄の風車」

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テンポはすごくいい。大友柳太朗の右門も二作目でライバルあば敬が、「犬神家~」の加藤武さんみたいな立ち位置だったり子分のおしゃべり伝六の右門のむっつりとの対比が面白かったりなど、定番的なたのしみ。

ザ・ピーナッツが風車売りで登場。風車の幻想的な場面。大友柳太朗氏は役柄通りのまじめな人とどこかで読んだけれど、先日最期の日のことなど読んで*4、遺作となった「タンポポ」だとか、近衛十四郎の敵役をしていた「十兵衛暗殺剣」*5だとかもっとちゃんとお仕事再見したくなっている。

*1:酔いどれ無双剣 - windshipのブログ

*2:ふや町映画タウンの大森氏によると、山本周五郎沢島忠監督は親しく、これは正式に山本周五郎の「赤ひげ」の話の沢島版映画化として作られたとのこと。東映時代劇なので武術がまじえてあるのだそう。こちらのほうが黒澤の「赤ひげ」より早く作られている。

*3:橋本治さん - 日常整理日誌

*4:時代劇ざんまい - 日常整理日誌

*5:春日太一さん〜十兵衛暗殺剣 - 日常整理日誌