四連休中もふや町映画タウンから時代劇を色々借りてきて観ている。少し前の記事にも載せた橋本治氏の「完本チャンバラ時代劇講座」や春日太一氏の「時代劇入門」を読むことによって以前とは違うところにも目がいくようになった。
↑みたのはこちらのVHSにて。出演は、嵐寛寿郎、美空ひばり(杉作少年役)、そして、杉作とさらに新吉という少年が預けられている国学者香取の娘に岸恵子。アラカンさんとの間にほのかな恋心みたいなのが表現されていてこれには驚いた。(べたべたしたものではなかったが・・なにか取り合わせとして珍しい気がして。)
春日さんの著書には、アラカンさんについて、「運動神が物凄くよくて俊敏、体が柔軟だった」と、さらに斬り上げる時の姿勢の美しさについて触れられている。橋本さんの著書には伊藤大輔監督の「鞍馬天狗横浜に現はる」で、300メートルの疾走、大移動撮影において、裾が乱れるほどの臨場感を監督は狙ったけれど、歌舞伎出身のアラカンさんは裾を乱さずに走り切ってしまった・・それは監督の肉体を持たない観念は、技術を持った肉体に負ける、ということと書かれている。そんな話を念頭にこの映画をみていると、今まで、自分はアラカンさんの持つ飄々とした空気が好きでアラカンさんの映画を観てきたけれど、立ち回りの姿本当に美しいなと、わくわくする気持ちで映画鑑賞ができた。毎年10月22日に行われる鞍馬の火祭の風景ももちろん取り入れられ、迫力を出している。
(みたのはVHS版)
山中監督の映画*1にも出て来たこけ猿の壺の話。丹下左膳というと大河内傅次郎が有名なのだけど、こちらはバンツマさん版。大河内さんの名台詞の言い回しの真似をきいて育ってきた自分にはちょっと違うなという感じがあった。淡島千景が丹下左膳の彼女役なんだが、これが物凄く良い。淡島さん、「自由学校」みたいに変に元気良すぎる役でなく、よくわかった、そして色気のある女というのがなかなかはまり役のように感じた。「夫婦善哉」の蝶子もちょっとこの系列ではないだろうか。。
オールスターキャストもの。だけど薄まるという感じもなく心地よい。
一番心の歓声をあげたのは、錦之助の出番。短気な火消しが黄門さまに・・という笑えるしテンポもよい場面。ずっとすごい早口で江戸っ子ぽさを振りまいていた。
そして個人的に嬉しいのが左卜全の易者。長屋の一人なんだが、左さんはそういう時いつも特別の光があたっているかのようなおもしろさ。二度もその場をさらう場面あり。
先日初々しい右門姿(むっつり右門というニックネームだけに無口に推理して解決していくクールな役)を観た大友柳太朗*2がTVの花山大吉風というかなんとも親しみやすいお人よしの浪人役。こういうのもされるんだ。新鮮。大友さんのことをwikipediaで読んでいたら伊丹監督の「タンポポ」のラーメンの先生役だったか!そして、「タンポポ」の自分の場面を全部撮り終えていることを確認されて自殺されたとは・・右門でもまじめな雰囲気が漂っていたが、今さらながら、いや、家族や自分が年齢を重ねていくという現実を見つめている今だからこそつらい。
脚本は小國英雄。テレビの水戸黄門に慣れた目には新鮮な展開であり、とても楽しめた。