細雪(大映59,新東宝50)

大映版(1959)と新東宝版(1950)の「細雪」を原作を再読したばかりの家族と再見

東宝の方が良かった印象なので大映版から

 

大映版、山本富士子演じる三女の雪子がとてもいい感じに描かれていて、原作とイメージが違う。山本富士子を良くみせるための映画だなあ。芦屋の川沿いの風景などは良く生かされていた。去年の夏谷崎潤一郎記念館主催のイベント*1に行くため歩いた時のながめを思い出す。

妹たちから居心地良いと思われている次女の家庭。夫の山茶花究好演。山茶花究って嫌みな役を巧みに演じているところをよく拝見するがここでは実利にも長けているが相手の話も受け入れる人物としての頃合いがうまい。こういう人いるなぁって感じ。

大阪の中心部にある実家がビルに建て変わるシーンなど作られた50年代後半の物語になっているのかなとも少し思った。が→*2

 

東宝

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こちらはくっきりと戦前の物語として始まる。これは四女を演じた高峰秀子の映画だ。何度観ても魅力的。冒頭の次女が演奏会だかに行く帯を次女、三女、四女があれこれいいながら選ぶシーンでもうそれぞれの性格が巧みに表現されている。じーっと観察していて後から問題点をいう慎み深いとも人が悪いともとれる三女、現実的な四女、妹のいうことをよくきいておろおろしたり世の中の動きに自分を合わせていく次女。

帯のシーンは大映版にもあったが新東宝の方が姉妹の性格描きわけがくっきりとしている。

高峰秀子の10代からの恋人奥畑、以前観た時*3も印象が良かったが、少し前に追っかけていた東映時代劇で軽妙な役を巧みに演じておられる姿を度々拝見する田中春男さんと判明。嬉しかった。彼のばあや役は大映、新東宝ともに浦辺粂子。新東宝で次女を演じた轟夕起子大映では長女鶴子だったな。年代とともに移動。そんな変遷も楽しめる。

鶴子のキャラクターも映画会社によって変えてあったが、新東宝の山根壽子さんの芯はあってはかなげな感じとても良い。そして花井蘭子演じる三女雪子、自分の中では原作イメージ通り。辛辣さと辛気臭さを持ち合わせ、雪子はこうじゃなくっちゃという感じ。やはり全体的にみて新東宝版がいいな、となった。

細雪」を反芻していて、ふと、向田邦子の「阿修羅のごとく」も多分「細雪」の子孫っていう部分あるなあと。姉妹それぞれの生き方、悩み。特に家のみんなを驚かせるけれどやはりあの家族の一員であると意識させられるTVでは風吹ジュンが演じていた四女、冒頭パートナーがいなく、頑なにみえるいしだあゆみが演じていた三女。

*1:「ナオミ」、「赤いスキャンダル・情事」 - 日常整理日誌

*2:80年代の市川崑のをこの後みて、戦前の話だけれど船場にあった本家の家屋がビルディングになるといなう話が出てきて、じゃあ大映版も戦前か!となった

*3:細雪 - 日常整理日誌