牡丹燈籠(1968)

 

山本薩夫監督の「牡丹燈籠」は社会派監督らしい趣きだと友人が言っていたのに興味を持ち鑑賞。確かに主人公である旗本の三男坊新三郎が教育の機会均等を目指して裏長屋で寺子屋のようなものを開いて子どもの面倒をみていたり、関係を持つことになってしまう幽霊お露との出会いも義侠心の発露ぽい描き方になっていて、愛欲に溺れたり恋い焦がれたりという感じではない。

2019年にに新三郎を中村七之助が、お露を上白石萌音が演じたNHKドラマの「牡丹燈籠」を観たがもっと恋愛に浸りきっていたし、とにかく尾野真千子演じるお露の義母が悪くてこわくてつらいほどのものだった。

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もう一つ自分が今まで観た「牡丹燈籠」で印象に残っているのが、中川信夫監督のTV映画*1

新三郎の長屋にいる伴蔵という男を演じた戸浦六宏とその妻の神(仏?)をも恐れぬ俗悪ぶりが一番心に残っている。なので、山本薩夫版で私の好きな西村晃が伴蔵として登場、ピュアな善人とかではないが、とりあえずは新三郎のために一生懸命やっている姿に、この伴蔵は最後までこうであってくれるのか?というハラハラ感で一杯に。何度も演じられてきた古典だけに伴蔵という人物がだいたいどういう人間かというのはわかって観ていた人が多いだろうし、こういう料理の仕方が面白いなと思う。

メインキャストに小川真由美の名前が載っているのだが、なかなか登場しない。そして、彼女の登場とともに話が勢いづく。その造形が面白い。ワルはワルなんだけど、テンポが良くて嫌な感じがしない。脚本は依田義賢

大映におられ、父の友人で優しくて洒脱なプライベートのお人柄を拝見していた土井茂さんのお名前がスタッフロールの助監督のところに流れる。こういう現場におられたんだな、ご存命中にもっとお話をうかがいたかったと思いながらの鑑賞。