「ナオミ」、「赤いスキャンダル・情事」

高林陽一監督作品を二本。

先日いとうせいこう氏と奥泉光氏の文芸漫談というものに出かけた。

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谷崎潤一郎記念館主催でお題は「痴人の愛」。

 

なかなかに面白く、映画化作品も京マチ子版と増村保造版(安田=大楠道代版)は観ていたはずなので観ていなかった高林陽一の「ナオミ」を観ることに。

 

その前に同監督の「赤いスキャンダル・情事」も。

赤いスキャンダル・情事 <にっかつ名作映画館ロマンシリーズ> VHS

高林陽一監督は京都市出身で今までに京都舞台の「西陣心中」*1や「蔵の中」*2「たま遊び・ほうこう」*3などを観たことがある。それらの作品ではじっとりした湿度のこもった京都を感じたが、この監督初のロマンポルノ作品は意外や意外、一般作品よりからっとしてわかりやすいし、予想してなかった後味の良い結末にびっくり。脚本はいどあきお氏。「マル秘色情めす市場」*4ピンクサロン好色五人女*5などちょっといいな、と思うロマンポルノ、結構な割合でこの方だ。

哲学の道やこれは吉田山中かなと思われるような風景も出てくる。

戸川昌子氏も高級娼館マダムとして登場。懐かしい。

 

「ナオミ」の方は、ヒロインが「赤いスキャンダル・〜」と同じく水原ゆう紀。こちらは全編安っぽく感じてしまった。まず音楽 以前サカナクションの山口氏の番組「シュガー&シュガー」*6で同じ映像でも音楽によってストーリーまで違ってみえる実験をしていたが、安手のテレビ番組みたいなただ興味本位な音楽は、ひどくチープな実録ものでも観ているような気にさせられる。二人が居を構えるという設定になっている鎌倉の邸宅と鎌倉の風景だけは立派だった。今まで観た高林作品の陰は何処へ?陰こそが谷崎潤一郎のエッセンスであろうに。

いとうさんと奥泉さんの漫談があったから持ちこたえられた部分もある。男の「マイ・フェア・レディ」や「若紫」願望があざ嗤われるという構造、英語の勉強や男三人を交えての寝苦しき夜などの滑稽さ。二人の語り口や、最後に披露された多分物語を表現している奥泉氏のフルート演奏の真摯だからこその可笑しさを思い出し、ひたすらいまひとつの料理を耐え忍ぶみたいになってしまった。ブニュエルの「欲望のあいまいな対象」は同じような主題でも面白く撮っていたよなあ、と、くっきり思い知らされたりしながら。