ロマンポルノ三篇

根岸吉太郎祭りの続きで吉太郎監督のロマンポルノ二篇と武田一成監督の一篇を鑑賞。

 

1.「狂った果実」(1981)

 ↑不敵な表情でこちらを向いている女性は蜷川有紀氏。蜷川幸雄氏の姪っ子で、猪瀬直樹氏の妻らしい。

彼女が本間優二氏演じる主人公を振り回すこと振り回すこと。本間氏演じる哲夫は田舎から出てきてガソリンスタンドと風俗店での仕事を掛け持ちしており、やはり本間氏が主演を務めた「十九歳の地図」*1の孤独な主人公と似たような境遇でありながら「十九歳~」のような独りよがりさがなく、こちらの方がずっと共感できる造形になっている。

蜷川有紀氏演じる千加という女も影やらすねているところやら理解できる雰囲気で魅力を感じさせ、この話にリアリティを持たせている。

本間優二氏の風俗の方の先輩の妻を演じる永島暎子氏がものすごくかわいい。彼女の演技が終盤へのバネとなっている。

凄惨なところもあるがそれがなぜか嫌な感じのしない作品だった。起承転結の「転」の部分の自然なカメラの回し方などもとてもいい。

 

2.「オリオンの殺意より 情事の方程式」(1978) 

 根岸監督27歳のデビュー作。谷崎の「鍵」みたいにわざと日記を読ませてあおる形式。サスペンス的な部分もありとても楽しめた。戸浦六宏氏の昭和っぽい頭ごなしな父親ぶりが憎々しく主人公に寄り添う気持ちでみられる。

亜湖氏が、アフリカにあこがれる不思議少女風で出てくる。カリンバを鳴らしてみたりエスニックっぽい部屋の雰囲気に70年代ぽさを感じた。亜湖さん、名前は記憶があるのだけど、調べたら「桃尻娘*2に出ておられたらしい・・

脚本のところに名前の書いてあったいどあきおさんという名前に記憶あり。調べたら「マル秘 色情めす市場」*3の方なんだ・・

大分の映画館シネマ5さんのFBにいどさんに関する記事があったので貼らせてもらう。(こちら

 

3. 「青い獣 ひそかな愉しみ」(1978) 

 こちらは武田一成監督作品。今までにみた作品*4にどれもほんわかした抒情が感じられ好きだったので借りてみた。こちらは家庭内暴力事件がベースになっていて、深刻なテーマにもかかわらずエリート校に通う主人公の理論武装的空回りが滑稽でもありおかしくなってしまうところもあるのだけどやはり題材が題材だけに楽しみ切れなかったり、結構画面に向かってツッコんでる自分がいた。

父親役の三谷昇氏の情けない演技は大層魅力的。なので主人公に対して三谷氏をいじめるな的な気分になってしまった。

家庭内暴力のさなか、柱時計が大写しになる瞬間は「田園に死す*5風味。

井の頭公園のロケあり。主人公の家の職業である肉屋と檻の動物、関わりを持つ女の交際相手の鳥の密猟、そこからくる籠の鳥のイメージなどをまるめてあるのは面白い構成なんだけどな。

高校生を演じていた水島美奈子氏はかわいらしい。

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