根岸吉太郎監督

 根岸吉太郎監督作品を三本連続で観た。

 

1.「ウホッホ探検隊」(1986)

 

先日 田中邦衛さんご逝去のニュースの時、twitterでこの映画のことが話題になっていた。私はつい小悪人役の仕事をまず頭に浮かべてしまう邦衛さんだが、この映画では「北の国から」に続くくらいメインな役回りをされており、しかも息子から「ブレーザーの似合うかっこいいお父さん」として扱われている。立派な家を構え、単身赴任先では藤真利子と付き合ったりして、冷静に妻に話を切り出すあたり憎ったらしいくらい。←誠実に話しあおうとしている結果のようだが、余計腹立たしい感じも。

つかみあいなどはない平常モードで進む離婚劇。淡々とした手触りが新鮮。田中さんの妻を演じた十朱幸代さんももちろん良いが、カメラマン役の時任三郎も地味に徹していて好感。加藤治子氏や斉藤慶子氏と十朱さんとのかかわりのシーンはコリーヌ・セローの映画みたいな女同士の気持ちの良さ。前半田中邦衛扮氏扮する男性のペースであればあるほど、そのフラストレーションエネルギーが後半カタルシスを生み出す。

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ビデオパッケージの絵のタッチ、見覚えがあるなあと思ったらサインから峰岸達さんという方の作品と知る。

minegishijuku.com

 

2.「キャバレー日記」(1982)

ほんとに面白い。チェーンの風俗店で幹部が成績に血道をあげ、鼓舞しまくる様子、業種を超えてどこも同じだ。

冒頭から伊藤克信さんが「の・ようなもの」的空気で登場。

オフビートと軍艦マーチが加減よく溶け合う大傑作。

店長役の上田耕一さん、よくお見掛けするけれどどこでおぼえているのかなと経歴を調べて

eiga.com12人の優しい日本人」(1991)だったかな、と「12人~」を観返すと、討論とか嫌いな世話好きのおとなしい男性役で(町会とかで時々みかけるタイプ)「キャバレー日記」で演説しまくっていた姿との落差にとてもおかしくなる。両方素晴らしい表現力。「12人~」はモーツァルトの音楽がぴったりだなと再認識。

「キャバレー日記」では北見敏之氏も光っている。あきらめとやけくそと妙な優しさ・・魅力的だ。

eiga.com

 

3.「永遠の1/2」(1987)

movies.yahoo.co.jp

 

こちらは1983年の第7回すばる文学賞受賞作品が原作。発表当時原作を読んだはずだが、映画を観てこんな話だったかな?という感想。個性の強いドッペルゲンガーの幻影に振り回される話で、心理学で習った「無意識にのぞんでいる自分の影」という話を思い出した。「ウホッホ~」に続き時任三郎氏が活躍(今度は主役。)。リゲインのCMのあと、あまり拝見しないと思っていたら子育てのため仕事をあまりいれずニュージーランドで過ごしておられた時期があったらしい。*1

映画の方は仕事を簡単にやめてしまってふらふら生きている感じ、80年代、ほんとにそういうことに危機感がなかったなと痛感。

高校生役の中島朋子氏がものすごくかわいい。

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大竹しのぶ氏の祖母役で小夜福子さん。母から宝塚の人としてその名をきいていた記憶だけど映画にもたくさん出ておられたのだな。