「次郎長と小天狗 殴り込み甲州路」、「喧嘩笠」

先日観た「悪名 縄張荒らし」での北大路欣也さん、元々田宮二郎さんが素晴らしい評判をとった「モートルの貞」を悪くない感じでリメイクされていて、そういえばとても若き日の「水戸黄門 助さん角さん大暴れ」なんかもよかった*1なとこれまた欣也さん若き日の「次郎長と小天狗 殴り込み甲州路」(1962)というものも観てみた。

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この欣也さんはところどころこなれていない感じもあり「小天狗」ゆえか、まあ愛嬌はあるんだが、少々天狗発言もあったり、それが二世の役ゆえ、みる方が現実と勝手に重ねてしまうところもあり、喝采をあげたいというほどのものではなかった。首の動かし方などに、踊りをやってこられたかなという気配は感じられたが。

「若き日の次郎長」のシリーズの四作目ということで次郎長一家とからませてある話なのだが、石松を演じていたジェリー藤尾は大層良い。カワイイ感じが出ているし、小天狗にくらべると、石松が大人にみえてしまう鷹揚さ。ジェリー藤尾ケーシー高峰は、私の中で、「テレビで変なイメージが定着してしまったが、映画ではいい仕事をしている」お二人となった。

 

どうせならと、同じくマキノ監督が大川橋蔵の小天狗もの「喧嘩笠」(1958)も観てみる。

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こちらの方が断然いい。大筋はほぼ同じ。台詞なども重なっているものも多い。ただ構成上も、62年版はえらく簡単にまとめてあって、この58年版の方が、歌舞伎や文楽なんかによくある「その時は意図を図りかねたけれど、こういうことか!」という筋回しが良いと思った。そのまだるっこさを排除してしまったのが62年版でわかりやすいけれどコクがない展開のように感じてしまった。戦後の歌舞伎衰退という話とも関係あるのだろうか?

大友柳太朗の次郎長、さわやかで良い。薄田研二氏が両方に同じ役で登場。渋い面構え。そして、堺正章の父、堺駿二が軽快に映画を盛り上げている。

タイトルの「喧嘩笠」を感じるシーンは、両作品とも良い。そこに至るまでの楽しさその後の流れなどは断然58年版が良かった。大川橋蔵氏の踊り。調べると、橋蔵氏は歌舞伎出身で歌舞伎の鍛錬を怠らなかった方とのこと。あの踊りで納得がいったし、踊りから立ち回りに至るシーンが楽しい。62年版は観くらべると、ドンパチと解決しただけみたいにみえてしまう。

次郎長ものあんまり観ていないので、石松以外のメンバーは大政、小政の名前くらいしか知らないが、この映画で「法印大五郎」に興味が。調べると最近気になっている田中春男さんの当たり役とのこと。

「喧嘩笠」、原作は同じで萩原遼監督の1953年、大河内傳次郎の次郎長と片岡千恵蔵の小天狗バージョンもあるらしい。ストーリーをみていると大元の話は同じでも、マキノ版とは流れが違う。

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