京都 近現代建築ものがたり

最近オンライン講座にちょこちょこアクセスしている。先日参加したフランソア喫茶室の話*1も聞き手の京都市京セラ美術館ディレクターの前田尚武さんの聞き方もとても良くて、前田さんから「まいまい京都『あつまれモダン建築部』」

www.maimai-kyoto.jp

に引き寄せられ、そこから、↓の本の著者倉方俊輔さんに導かれ、著書も読んでみることに。

80年代にレトロブームというのがやってきて以来、明治に建った建物も昭和初期に建った建物も一緒くたに「洋館、素敵!」というミーハーな気持ちで眺めているだけ、建築家の名前は断片として入っているだけの自分だが、この本は歴史、それぞれの建築家の個人史から入って、意図を踏まえた形で建物をみることを教えてくれる。

伊藤忠太やヴォーリズ*2のエキゾチックな姿かたちには惹かれるものの、旧都ホテルなど一見飾り気のない建物、京都信用金庫など菊竹清訓のお好きな方は追っかけておられるけれど、日常的に利用している市民としてはその見どころがよくわからなかった建物のことなどを、どういう思想でこういう形をしているのかということがわかりやすく書かれており楽しめた。

にやっとしたのは京都タワーの章、長谷川博己の父建築評論家の長谷川堯が書いたという

「山田守といえば、晩年にあの悪名高き京都タワーをデザインしたひとだ」

という言葉から始まる文章。建つときに大変反対されたことは知っているし、子ども心にもなんかサエない建造物だと思っていたのだけど、

長谷川氏の文章の続き

しかしこれも完成してから十年以上経過してみると、山田守のデザインはなかなかのものであったことを思い知らされる。<中略>山田さんは、とにかく建築の外形ということに関しては誰よりも本気であった建築家だ。そして、その形がひとの心になじむことをいつも真剣に考えていたひとであったことに、やっと最近になって私は気付いた。

に頷いてしまった。少し年齢が上の友人とも話して同意してもらったのだが、京都タワーの60年代風のデザイン、年齢とともに愛すべきものにどんどんみえてきているのだ。長谷川氏の書いておられるのもそういうことだろうか?

最終章の京都市京セラ美術館、こちらの建物は1933年に建った元の形も良く、リニューアルを心配していたけれど、とてもいいものになっている。それは展示場の配置をかえることで、収蔵物に光が当たる心配をすることなく、外の世界をとりいれられる構造になったからだったんだなと再認識。

この広々とした眺めは今までにはなかった。

レトロでかわいらしい!と感激してしまった二階バルコニーは新設らしい。私は写真を撮ってなかったが、この横の螺旋を描いた階段も新設された場所だけどバルコニーと同じくクラシックな空気が流れ、写真がよく撮られているスポットらしい。

色々と身近で楽しい読み物だった。ところどころ、文章だけの説明だとどこを指しているのかわからず難しく感じたところがあり、オンライン受講で補完したくもなった。

*1:京都の文化サロン フランソア喫茶室 - 日常整理日誌

*2:素人っぽいので一般市民発で彼の建築の評価が高まっているものらしい