こちらの三本もふや町映画タウンのおすすめ作品。
「殿さま弥次喜多 捕物道中」*1が楽しかったので同じく中村錦之助、中村嘉葎雄の兄弟が明るく活躍する「家光と彦三と一心太助」を。
中村錦之助が家光とそっくりさんの一心太助に扮する「王子と乞食」みたいな話。お殿様と町のチャキチャキが入れ替わる面白さ。錦之助の演じ分けがうまく楽しめる。一心太助が親分と仰ぐ大久保彦左衛門の頼みにより命を捨てる覚悟で家光に化けてお城で過ごすのだけど、何も考えないで楽しくみりゃいいものをつい現代の眼で人の命の軽重というか、封建社会の厳しさというかそんなものもちょっと感じてしまう。ま、感じていいのかな、実際歌舞伎の「寺子屋」みたいにそうなんだし。(あんなシリアスな展開ではないけれど。)
「森の石松」は美空ひばりが石松を演じる和製ミュージカル風味の作品。
今、橋下治さんの「完本チャンバラ時代劇講座」
をちょっとずつ読みながら沢島監督の東映時代劇なども次々観ていて、橋本さんに読み解き方を教えてもらっているような次第だけど、セット中心で作りこまれた東映時代劇というのはどこか世話物歌舞伎っぽいというか、とにかく観て面白いショー仕立てという感じを受ける。
「ひばりの森の石松」では竜宮城まで飛び出したり趣向が楽しい。若き里見浩太朗が軽妙でよい感じ。
「右門捕物帖 片眼の狼」は、むっつり右門というアラカンさんがやっていた時代劇推理シリーズを大友柳太朗が引き継いだもの。
堺駿二氏演じるおしゃべり伝六という腰ぎんちゃくを使いながら、進藤栄太郎演じるあば敬+喜美こいしというライバルチーム(と勝手に先方がそう思っている)との対比で話が進む。右門氏、変装して潜入捜査して、アル・パチーノの「セルピコ」みたいな感じも。この映画でも里見浩太朗がほっそりいなせな雰囲気。春日太一氏の新書「時代劇入門」によると、里見氏はもともとは錦之助、大川橋蔵に次ぐ形で出てきた、東映期待の若手美剣士系二枚目のスター候補生だったらしい。この映画では堺駿二氏に注目してみた。息子の堺正章氏、やはり駿二氏と目元とか似ているように思う。大好きな山形勲氏が伊豆守という華々しい役で嬉しい。「雁の寺」*2の住職、三島雅夫氏が暗躍。ちょっと今観るとびっくりするような設定あり。
2020年10月追記:アラカンさんのバージョンで、1951年に新東宝で「右門捕物帖 片眼狼」というのがあるが、みてみたらまるで違うはなしだった。*3