「悪名縄張荒らし」、「悪名」

NHKBSプレミアムで再放送している田辺聖子がモデルのドラマ「芋たこなんきん」をすごくゆっくりゆっくり観ているのだけど、國村準氏演じるパートナー、カモカのおっちゃんの父を演じる小島慶四郎さんのとぼけた味が気になり、小島さん出演作の「悪名・縄張荒らし」(1974,増村保造監督)を鑑賞。(小島さんは勝新演じる朝吉の遊び仲間役。)

「悪名」と「続・悪名」(両方1961年 田中徳三監督)のリメイク作とのことで、オリジナルの方はずいぶん前に観ていて、田宮二郎演じる弟分モートルの貞が軽妙な魅力にあふれすごく良かったことだけ記憶にあった。リメイク版では貞を北大路欣也が演じているということでちょっと心配しながらの鑑賞であったが、欣也さんの貞も悪くない。勝新太郎の披露する河内音頭も大層魅力的だし、二代目鴈治郎さんの台詞のこく。義父との対峙か・・なんて思いながらの鑑賞も楽し。杉村春子氏の親分役も珍しいのでは?

かなり忠実なリメイクだそうで、オリジナルももう一度観てみる。

 

オリジナルの方は勝新の若さに驚く。まだまだかわいらしい感じ。田宮二郎の貞はやはり魅力的。「縄張荒らし」は二作をまとめたものとのことで、オリジナルの方が説明が丁寧。「縄張~」の方の杉村春子の女親分とのやりとりのシーンはオリジナルでは浪花千栄子が演じているが、こちらの方が経緯がきちんと描かれていて、説得力がある。この女親分のエピソードは因島が舞台だけど、杉村春子の地元広島アクセントは聞きどころ。

勝新演じる朝吉の妻になる道頓堀の食堂づとめの女の子 お絹の役はオリジナルでは中村玉緒。オリジナルの方が可憐でいい。両方のストーリーとも朝吉が足抜けを手伝う娼妓の物語がメインになっているのだけど、この娼妓の役、「縄張荒らし」では十朱幸代、オリジナルでは水谷良重で十朱幸代は本当にはかなげ。朝吉に妻がいることを彼女が知るシーン、妻役の望月真理子がちょっとキツい感じなのも相まってとてもつらい。水谷良重の方がうらぶれ感が強く、話の流れが自然にみえる。そして哀れさがあった。

朝吉の妻の友人役(貞の彼女役)は、「縄張荒らし」の方では太地喜和子。出色。

朝吉がわらじをぬぐ、モートルの貞の元の親分吉岡は、山茶花究演じるオリジナルの方がまだ体裁を整えた設定。増村版ではものすごく情けなく描かれ容赦がない。全体に増村版の方がコントラスト強め。吉岡の子分の台詞などは一緒なのだが増村版の藤田まことが口にすると面白さ倍増だった。因島の旅館の仲居も、「縄張荒らし」では樹木希林が演じ、滑稽味がかなり加わっている。

トータルにみると「悪名」と「悪名 縄張荒らし」それぞれ甲乙つけがたい魅力があるが、描き方の丁寧さから考えるとオリジナル。増村リメイクで際立つメリハリ、「暖流」や「千羽鶴」に引き続き感じる。

両方闘鶏のシーンが出てきて、河内、今東光の世界という感じ。「盗まれた欲情」*1でも確か鶏出てきたな・・(闘鶏というより食用にみえたのだが・・)