twitterで名前をみてなんとなく気になり仏映画「料理は冷たくして」(1979 ベルトラン・ブリエ監督)を観た。
無人の地下鉄駅での二人の男の会話から始まり、主人公と誰かのやりとりが不思議なユーモアと不条理に包まれながら進行する。監督の父のベルナール・ブリエがいい味で、抽象的とも思えるような場面場面を彩る色彩、形状も凝った画面デザインも面白く、観終わったあと説明はできないけれど心に不思議な痕跡を残す舞台劇のような感触だった。リュック・ベッソン セレクションとして出ていたビデオで鑑賞、彼の作品解説映像もついていたが、色んな風合いのフランスを知ってほしいと挙げられていた作品群*1、観てみようという気になった。
そこで手に取ったのが「チャオ・パンタン」(1983 クロード・ベリ監督)。
ふや町映画タウンのオススメにも挙がっていてずっと気にはなっていたもののとっかかりが生まれなかった作品。
ランベールは、ガソリンスタンドの夜間給油係。孤独でアル中のこの男は40才くらいに見えるが、彼のこれまでの人生については誰も知らない。
ビデオジャケットのストーリー紹介の冒頭を読み、好きな世界を感じ、早速鑑賞。
基本ブルーグレーに彩られた、シックで、パリのヤバそうな場所を表現しつつなぜか美的な映像*2、中年男ランベールを演じたコリューシユという役者さんの味。身寄りのないアラブ系の青年との出会い、二人のあの日、この日を淡々と綴っていくカメラからの展開。饒舌でないのに男のプロフィール、心情をきっちりわからせてくれ、感情移入させられる。粋な描き方なんだけど全然くさくなく、自分、「フィルム・ノワール」って言葉に近寄りがたさを感じ、苦手分野と思い込んでいたが、先日から感心しているジョニー・トーの作品*3だとか心情に寄り添えるノワールはかなり好きなのでは?と思い直した。
コリューシユという俳優さんのことはまるで知らなかったのだけど、wikipediaでその人生を読み、
この映画の空気そのまま?とも思った。ユーモリストとのことで、北野武とも空気が重なるな。最近神田伯山のラジオを古いものも含めポッドキャストでずっと聴いているせいか、勝手に自分の頭の中では彼の声でこの映画を絶賛していたのだけど、笑いの世界の人の持つ鋭敏さに刺激されていたのかな。
ともあれ良い作品に出会わせてくれたリュック・ベッソンとふや町映画タウンに感謝。確かにフランスのいろいろな側面に出会わせてもらっている。引き続きおすすめを観てみよう。
※「チャオ・パンタン」は2024年6月現在 DVDは中古のみ 高騰している。