ひとりごはんの背中

2009年1号から2011年42号に連載された「モーニング」に連載していた「ひとりごはんの背中〜独身男女の自炊と暮らしの手帖」という連載から抜粋し、加筆・編集したものとのこと 一人暮らし生活している人の部屋でごはんを出してもらって食べるという企画、な…

お家賃ですけど

能町さんの書く仕事が軌道に載る前の、実家を出て牛込の一人暮らしをし始めた頃からの暮らしの話。住まいの描写の丁寧さ、そして贅沢でなくても古い建物をきれいに磨きながら維持している大家さんを描く愛情のこもった筆先などから能町さんの生きる姿勢が伝…

ねこの秘密

「わたしのノラネコ研究」*1の山根さんの新書。学際的なアプローチによるねこの話。読んでいてとても楽しい。 開催された北九州いのちのたび博物館でのまるごと猫展も、博物館的なアプローチのみならず、文化面からやまちの活動(長崎の町ねこ調査隊塾など)…

火花

こちらも文藝春秋9月号で。 はじめ少し読みづらかったのだけど、すぐ夢中になった。受賞者インタビューの中で又吉さんは 世の中には自分の中に新しい感覚をぶちこんでくるようなおもしろい本があるとわかってからは、ひたすら本を読むようになりましたね。 …

スクラップ・アンド・ビルド

文藝春秋9月号にて。 少し前に読んだ同じ作者の「ワタシクハ」*1の主人公と、重なるものを感じる。努力は怠らない。他人の観察が冷静。どこかしら漂うユーモア。 二十代で転職求職中の主人公と同居するディに通う祖父とのかかわりを描いているが、出てくる…

三谷幸喜のありふれた生活13 仕事の虫

この朝日新聞のコラムの中で特にいいなと思う話題が、名優、名作の紹介。今回のメモ ウィリアム・ワイラー「必死の逃亡者」 みてからまた読もう・・ジェームズ・ガーナ― 「大脱走」の「調達屋」。三谷さんの「大脱走」でのもう一人のお気に入りは、砂の処理…

わたしのノラネコ研究

著者は九大理学研究科の生態学研究室というところで、福岡県新宮町相島というところのノラネコの調査をしたひと。一応児童書の分類で、こどもたちがノラネコの研究をしようとしたときにどうすればよいかノウハウが書かれている。大人が読んでも十分楽しいし…

「ワタクシハ」

又吉氏と同時芥川賞受賞の羽田圭介さん。信頼できる友人に紹介してもらって読んでみた。就職活動の話なんだけど、ちょうど息子が今それで、興味深くどんどん読み進んだ。主人公は、高校生の時ギタリストとしてデビューしたという特殊な設定だけど、地に足着…

山とそば

「きょうの猫村さん」*1のほしよりこさんの、イラストと文による松本、岩国〜宮島、鹿児島の旅行記。それぞれ、「山とそば」「ヘビに巻かれて」「カルデラのある町へ」というほしさんらしいタイトルがついている。自分もそこを一緒に旅行している気分になる…

回想の太宰治

津軽の斜陽館の近くの物産館マディニーの本のコーナーに太宰の妻だった津島美知子さんのこの本が「10年も一緒にいた美知子さんならではの、そしてほかの本にはない、クールな距離からの太宰」というようなポップがついて置かれていた。 読んでみて本当におも…

ピカレスク 太宰治伝

興味深く読めた。猪瀬直樹の本、「日本凡人伝 二度目の仕事」や「ミカドの肖像」もおもしろく読んでいたのだけど、この本も、太宰治伝といいながらその背後の井伏鱒二のことにかなり鋭く切り込んで読ませる。1999年9月号からの連載であったようで、ずい…

現代、野蛮人入門

これはもしかして若い人に向けた本なのかな・・松尾さんの今までを振り返りながら書かれたこの本、これから社会人になる子供に読んでもらい、これからの航路をなんとか乗り切っていく参考にしてもらいたくなるような文章だった。気持ちよく共感しながら読み…

京都おしゃれローカル・ガイド

京都タワーとバス乗り場の表紙の上には「new kyoto」の文字。年々町を逍遥する機会が減っている自分には、そんな店ができてるんだなあというような、新発見多し。とりあえず現時点の京都にある著者のお気に入りの、個性的な場所を紹介している本。メモ佐藤初…

走れメロス

新潮文庫の今の字組、手触りが大好きで、雨の中ずっと太宰治の作品を読み続けるのが本当に楽しくて。太宰治、若いころは書いてある内容にぐっときたりしていたけれど、今は文章のリズムや終わりの文章のとめかたなどに気持ちがいく。「駆け込み訴え」は何度…

この世は落語

落語に詳しくない自分でも楽しめるかなと思いながら読み始めたが、そういう私が楽しめる本で、さまざまな噺を噺家さんによるバージョンの違いも説明しながら、中野翠さんのいつもの、実人生で感じたことをうまくまとめるコラムタッチで読みすすめていける。…

岡本太郎の東北

秋田、岩手、青森について岡本太郎氏が書いたものと撮った写真をあわせて再編集したもの。以下ふむふむと思ったところ秋田の項 秋田の風俗は「すきとおっていてほゝ笑ましい」のに、泥臭くして世に広めようとするのかという怒り村の人が自分たちで作ったなま…

晩年

太宰の処女作品集ということで、コラージュみたいにして難解に仕上げてあるものもあるけれど、太宰の文章や構成の確かさに触れ、軟弱の化身みたいなイメージをもたれているけれど、なかなかどうして、土台がしっかりしている人だったんだとつくづく感じ入る…

読まされ図書室

読まされ図書室作者: 小林聡美出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2014/12/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る自分の好きな本でなく、人に薦められるままに自分では選ばなかったような本を読まされ、その本で読書感想文を書いていく企画。常…

津軽

読んでいる間ずっと太宰治と一緒に津軽を旅行しているような気分に。すばらしい文章。なんともいえないかわいらしさ。幸せなひととき。 渡部芳紀さんというかたの脚注もとても丁寧で、若い人にも向けられた編集の仕方がしてあると思う。調べたら渡部さんは太…

円卓

「人間失格」の子供時代のエピソードを違った角度から描いたようなお話。冷静な観察者は敵じゃないというすてきな展開。こどもが調子に乗る感じ、調子に乗っていると誤解されて心外な感じ、夏のやってくるとき、思春期に差し掛かろうとしている時の空気・・…

マイ京都慕情

表紙は違うが、中身はちょっととんぼの本のシリーズみたいなつくり。思い出の写真の横に本人の著作から引用した文章と編集部がつけたような解説が載っていて。。素材がみうらじゅんだけにすごいパロディーになっている。そして書き下ろしのみうらじゅんの文…

舞台

現代の「人間失格」というか、「人間失格」や太宰の生き方を下敷きにした小説。もともと西さんの登場人物の気持ちの描写はいつもおもしろくてひきつけられるし、うまいけれど、そこがまた太宰の持っている軽妙なタッチなんだけどシリアスというところとも重…

西加奈子と地元の本屋

とてもおもしろい小冊子だった。大阪の本屋をもりあげようという気迫に満ちていて、当該書店に限ってなぜか売れる本の調査をしたり、地元の作家の本のとりあげかたもとてもよい。この冊子をまとめた一員でもある大阪のスタンダードブックストアというお店に…

きょうのできごと、十年後

「きょうのできごと」*1で大学生だった人たちの十年後。現代の「ふぞろいの林檎たち」みたいで楽しめる。前作のことは結構忘れていたけれど、ところどころ思い出す程度で大丈夫。家族はここから読んだけど、いけたらしい。はじめは単音だけではじまったリズ…

ふくわらい

はじめ設定にちょっとついていけなかったのだけど、途中からすごく入り込め読書する楽しみを味わえた。途中からというのは主人公の仕事の話がはじまってから。個性的な育ち方をした主人公が、世間一般的な心の動かし方というものがとんとわからない、でも、…

スピンク合財帖

「まめねこ」*1を読んで以来、なにかオスとメスの性差について実感することが多くなった。 この本もいかにもオスの町田さんが描いたワンちゃんの飼育日記。動物に対しては一切辛辣なところがなくて、愛すべき感じで、心身ともに弱っている時にゆっくり読めた…

大阪建築 みる・あるく・かたる

エルマガジン社のまとめ方、同じ素材を扱ってもとてもシャープでおしゃれでいいなと思っているのだけど、この本も読みやすくおもしろかった。 話と写真のあわせ方がわかりやすいしかっこいい。北浜あたりのレトロ建築は歩いたことがあるけれど、この本を読ん…

晴れた日に永遠が

毎年大晦日、中途半端にひねくれて紅白以外のチャンネルをみたりしていたのだけど、中野さんのコラムにいつも出て来るので昨年末はみてみた。曲自体は今年のものとは限らないけれど、今の時代どういう人が出てきているのかショー的に楽しめてなかなかよかっ…

京都のパン物語

利用しているけれど、詳しいことは知らなかったお店、はじめてきかせてもらう情報・・いろいろ詰まっていた。この本きっかけで知ったこと 白川通の「ちせ」に(隔週)金曜並んでいるパンのAOWさんのお店が、「東風」のあとにできたタイ風のお店だった!(…

仏果を得ず

再読。前回読んだときの自分の感想を読後読んで、ずいぶん印象が変わっているのが新鮮な気分。ほとんど文楽をみたことがない状態で前回読んだのだけど、何度か舞台に行ってからこの本を読むと、各章のタイトルになっている作品と現実とのうまい関連がよくわ…