舞台

現代の「人間失格」というか、「人間失格」や太宰の生き方を下敷きにした小説。もともと西さんの登場人物の気持ちの描写はいつもおもしろくてひきつけられるし、うまいけれど、そこがまた太宰の持っている軽妙なタッチなんだけどシリアスというところとも重なって。。この本の主人公はベクトルは違うかもしれないが、どうみられるかをすごく計算するという意味では太宰的な作家の息子。父親のことを「しゃらくさい」と思ってみていて、でもやっぱり自分も「人間失格」の葉蔵のようで自意識過剰で、自分の演技的な部分をいつも意識、またそれを見破る「人間失格」に出てくる、あのおそるべき同級生のような存在を常に脅威に感じている。物語はNYを舞台に「地球の歩き方」をうまい具合に引用してすごく軽妙におもしろく展開していき、悩んだ末の結論、西さんなりの「人間失格」への答は納得のいくものだった。ロードムービー的なところもあり、NYの風景が巧みに使われており、NYに行きたくなるくらいだ。

舞台

舞台