火花

こちらも文藝春秋9月号で。
はじめ少し読みづらかったのだけど、すぐ夢中になった。受賞者インタビューの中で又吉さんは

世の中には自分の中に新しい感覚をぶちこんでくるようなおもしろい本があるとわかってからは、ひたすら本を読むようになりましたね。

と書いておられるけれど、読んでいて文学の世界に連れていかれるっていいなという感覚を味わった。
自分の信じる道を(表現を)突き進む師匠。ずっと読んでいると、何かを表明するとき表面取り繕う形でなく表現してみたくなる。
映画化の話も出ているらしいけれど、井の頭公園の太鼓のところと、ラスト熱海の花火の箇所は映画のワンシーンのように頭に残っている。それは観客と我という問題、狭義の漫才師ということを超えて、人が人と人の間をどう生きていくか、相手の反応との兼ね合いはどうするか?という問題で、この作品のテーマと思われるのだけど、その答えがとてもいい。脳内で出来上がった映画を壊すのがこわいので、他の人の手で映画になったものをみないほうがよさそうな気になった。

火花

火花