女帝 小池百合子

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著者の石井妙子さんは「おそめ」*1や「原節子の真実」*2満映と私」*3など今まで映画界に近い世界のあまり知られていない事柄を丹念に調べ上げる仕事をしてきた人。この本で現都知事などという生々しくもチャレンジングなテーマを素材に選ばれたことにまずびっくり。いつも納得の著作ゆえ、なぜこのテーマ?と驚きつつ後回しになっていたがオーディブルで聴けることがわかり聴取。

一にも二にも小池百合子知事がエジプト時代同居していた女性のたくさんの裏付けのある勇気ある告発がベースになっている。単行本が発行された時はちょうど都知事選の頃でこの本に詳細に出てくるカイロ大学卒業疑惑が多少報道されるも結局本人からのなんだかはっきりしない証拠の提示だけでうやむやになった。文庫化にあたって、その時のマスコミや小池氏側のリアクションも加筆されているが、全編多くのマスコミの長いものに巻かれろという姿勢がよくわかり、自分の友人のTV記者もよく危惧している権力への追及より損得勘定が優先されてしまうマスメディアの体質を肌でリアルに感じた。文庫化に当たっては単行本の時は仮名だった告発者の名前が実名になりさらにリスクを賭けた著作になっている。

石井さんの書くものはとにかく読ませる力、面白みがあり、素材も素材なので興味深くどんどん聴ける。また読み手のリアルな表現で、何につけ横文字の名前をつけたがり派手にぶち上げることは得意だけど政策はぶれまくり彼女を信頼し応援していた人々を失望させる小池氏の姿が活写され聴きながら何度も「また出た」と思わず何度もつぶやいてしまった。

 

石井さんの仕事については購読しているブログ「2ペンスの希望」で「満映と私」が絶版を経て改題、角川新書から再刊された「満映秘史  栄華、崩壊、中国映画草創」について取り上げられている。映画界で仕事をしておられる神戸山さんも石井さんのまとめたあの本のことをこういう風にとらえられている、と嬉しかったのでリンク。

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