ナチュラルボーンチキン

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金原ひとみ

良いタイトル。とんでもない根性なし、冒険なんかしたくない自分に向けられているような。。

主人公の超ルーティン人間ぶりが自分の肌にあって心地良いスタート。自分は日常を丁寧に描写してある事物が大好きで、そういうブログも好んで読んでいる。冒険したがらない主人公の振る舞いをすっと聴きこの主人公は自分だと思い込みながら聴く。

金原さんの本を読んだことないのに、なにかとってもエッジがきいて凡人には近寄りがたいハードなものと勝手に思い込んでいたが、ごくごく入りやすく気持ちもいれやすい。

中盤主人公の意外な本音発言(狭量と感じられるもの)が出てきて驚き、その瞬間首を傾げてしまったがその後彼女に起こったできごとを聞き及ぶにつれすべてが腑に落ちる。金原さん自身の境遇とは違う主人公の追い詰められた状態の描写が卓越していており、しかしながら使う比喩がとてもポップで飲み込みやすい。ところどころここまでポップにしなくてもいいと思うくらいではあるけれど。でもこのポップな表現でこそ金原さんであるとも思う。

傷つきたくないから距離をとったつきあいという現代風の知恵で生きていってる主人公に肉薄しどん底までみせての後半。表面だけ整えるのとは反対の人生の格闘をきちっと読者にみせ、それが重苦しいものでなく、ごく隣のあり得るできごととして読者の人生に届くように書かれている姿勢の真摯さにとても好感を抱く。