昭和

女の座

久しぶりの成瀬映画。久々だったものでビターさに驚く。笠智衆が父を、その後妻を杉村春子、死んだ息子のお嫁さんの高峰秀子・・成瀬流「東京物語」みたいなものも感じる。子どもも元の奥さんとの間、また杉村春子との間にもおり、その妻、さらに孫なども出…

俳優になろうか

笠智衆さんが日本経済新聞「私の履歴書」に書かれたものをまとめたもの。笠さん、子供の頃予習復習とか大嫌いだったらしく、中学で落第してみたり、ちょっと元気な子と友人で、柔道も得意だったものだからこわがられたり、大学もあんまり勉強したくなくとり…

番場の忠太郎

「瞼の母」のおはなし。サイレント版*1、錦之助版*2とみてきて、今度のは中川信夫監督、忠太郎は若山富三郎。「日本映画隠れた名作」*3でほめてあっての鑑賞。母親役の山田五十鈴が大層いい。たずねてきた忠太郎と対峙する時の三味線の伴奏が後ろで響いてい…

日本映画の若き日々

私の中の稲垣浩監督のイメージは伊丹万作の盟友として一緒に明朗時代劇やスパイスもきいたヒューマニスティックな映画を作ってこられた方。京都・出町商店街に出来た古本屋さんでこの本をみかけ、パラパラっとみたところおもしろいけれど、父の本棚に並んで…

股旅 三人やくざ

オムニバス作品。ビデオパッケージに書いてある順番と違っているのだけど*1三話目の錦之助さんの分がもうとても良くて!今までいなせなキビキビした役、あるいは後年のエネルギッシュな役しかみたことなかったが、これは何とも力のないかわいらしい若きやく…

日本映画 隠れた名作 昭和30年代前後

先日息子の引っ越し手伝いの折、西荻窪 忘日舎にて購入。 これは買って本当によかった。小津、黒澤などの巨匠級ではない監督たちの作品を川本三郎氏と日本近現代史と歴史社会学がご専門の筒井清忠氏のお二人が辿っていかれるもの。 ロケ地巡りの好きな川本さ…

昭和55年のこの映画、公開当時から気になっていた。自分は公開当時17歳なんだけど、背伸びしたい気持ちにぴったりだったんだろか・・ 今や軍艦島から出てきて東京で働く青年を保護者目線で鑑賞することにあいなってしまった。「それでもボクはやってない」…

青幻記

沖永良部島の話。wikipedeiaによると、奄美群島ではあるけれど、沖縄本島と近い文化を持つという。三線が出てきたり、大和とは違う場所という雰囲気(意識、住まいや霊能者のユタ、洗骨という葬制)など、ほぼ沖縄という感じだった。 原泉、戸浦六宏、藤原釜…

ジャコ萬と鉄

1964年深作版。すごい躍動感。モノクロの画面作りも素晴らしい。ニシン漁の漁師頭一家の話だが、そういう男の現場に無縁な人間でも入り込める表現のうまさ。ジャコ萬のすごい存在感。精悍で、今までみた丹波哲郎の作品の中で一番輝いているかも。後年の飄々…

麗猫伝説

大林宣彦版「サンセット大通り」*1であり、「悲愁」*2でもある。「雨月物語」や「ドラキュラ」みたいなテイストもある。火曜サスペンスで放映されたらしい。火曜サスペンスにしては、大林色満載というか、映画への思いであふれている。(私が大林色と感じる…

ピカレスク 太宰治伝

興味深く読めた。猪瀬直樹の本、「日本凡人伝 二度目の仕事」や「ミカドの肖像」もおもしろく読んでいたのだけど、この本も、太宰治伝といいながらその背後の井伏鱒二のことにかなり鋭く切り込んで読ませる。1999年9月号からの連載であったようで、ずい…

赤い殺意

春川ますみ演じる主婦貞子は、口べたで大地や縄文土器を連想するような女性。すべてを受け入れてのみこんでしまうが、自然そのもののような感じで、それを慈しんでいるつもりのものの手におえるものでは実はない、という感じ。「神々の深き欲望」*1でも、ヴ…

グラマ島の誘惑

川島雄三のカルトムービーってことで、がちゃがちゃしているのは覚悟の上でみはじめる。前衛的で挑戦的。森繁久弥が宮様、フランキー堺がその弟というなんか大胆な設定だけど、割合それ風にみえる。フランキー堺が上品な感じで。原住民的な役の三橋達也、全…

大地の子守歌

とてもよかった。映像もシャープだし、とにかく原田美枝子の圧倒的な生命力、存在感がもう最高! 最初の方に出てくる田中絹代も良い!かねがねふや町映画タウンの大森さんもおっしゃってるのだけど、田中絹代は枯れてからの方がずっといい!大地の子守歌 [VH…

お嬢さん社長

どこかでロケ地のことが書いてあったような気がしたのだけど、どこだったのか・・必死で調べていたらこちらのブログで隅田川の東武の鉄橋のことが・・こちらのブログ、なにか自分が気になっていることがいろいろ書かれている模様・・これからじっくり拝見さ…

恋三味線

アラカンさんの関西ことばがきけるということでみてみたのだけど、そちらの方より、伝統芸能もの、歌舞伎の舞台の三味線の方の物語として楽しめた。 GHQの命令でチャンバラものが作れない時代の作品なもので、アラカンさん演じる杵屋庄太郎が舞台にたてなく…

愛のお荷物

少子化対策が叫ばれている今みるとどういうことかと思うのだけど、人口問題から来る産児制限の話。昭和30年。 いろんな人の生活が絡み合って・・という運びで、和製「ハンナとその姉妹」*1って感じ。もう少し表面的だけど。三橋達也の長唄シーンがあるけれ…

3人がいっぱい 1

小説新潮昭和48年1月号から昭和51年6月号に連載していたもの。前半は3人選んで、和田誠さんが質問して絵の横にその答えを書いている形式。途中からは写真のように和田さんは絵担当で、その時々の書き手が同時代の3人を「一見弱そう」とか「キザな三人」と…

女は二度生まれる

靖国神社あたりの風景が出てくるとのことでそれ目的で、川島雄三監督は振幅があるときいているので、あまり期待せずにみたのだけどとてもおもしろかった。映し方もモダンでおもしろく、作品全体もドライなんだけどかわいらしい、そして味わいもあるという得…

銀山温泉と「乱れる」

お盆に銀山温泉に行って撮った写真をInstagram経由でtwitterに流したりしていたら、キネマ洋装店のたかぎさんが、成瀬巳喜男監督の「乱れる」検証で銀山に行かれたことがあると教えてくださった。乱れる 【東宝DVDシネマファンクラブ】出版社/メーカー: 東宝…

妻二人

今読んでいる金井美恵子の「映画、柔らかい肌。映画にさわる」(平凡社刊)に 岡田茉莉子も小津や吉田喜重作品に比べて、成瀬作品(と、増村保造の若尾文子と共演した『妻二人』'67年)においてキラリと小さく輝く という文章がある(p406)のだけど、それがよ…

お嬢吉三

先月まつもと歌舞伎で「三人吉三」をみた*1もので、映画化作品もみてみた。登場人物は同じで、部分部分歌舞伎で出てきたエピソードが出てくるけれどお話はかえてある。歌舞伎のかっこいい形とかをみたあとなので、どうしても歌舞伎の舞台が恋しくなってしま…

こねこのらくがき もりやすじの世界

「わんぱく王子の大蛇退治」*1で森康二さんという方の作画のかわいさにたいそう惹きつけられほかの作品もみてみたいと思っていたらこんなビデオがあった。 長編作品については画面ちょっとずつの紹介、短編は一本ちゃんと入っている。特に好きだったのは も…

お嬢さん乾杯!

中野翠氏の本に紹介されていたのと、友人かなさんのすすめもあってみてみる。 今までみてきた佐野周二の出演作の中で一番魅力的にみえたかも。なんだかかわいらしくいじらしい。まったくお嬢さん周辺の人物たちといったら!だからこそのお嬢さんか。。子分役…

安寿と厨子王丸

「わんぱく王子の大蛇退治」*1がとてもよかったもので引き続きその前に作られた東映動画を。 wikipediaによると 人物モデルに演技を行わせ、その実写フィルムを下敷きに、アニメーション作画を行う「ライブ・アクション方式」が一部採用されている。 とのこと…

一心太助 天下の一大事

中野翠さんの「ぺこぺこ映画日記 1993-2002」に 当時二十六歳(!)の萬屋錦之介(中村錦之介)がうまいわ、きれいだわ、かわいいわ。江戸っ子弁が鮮やか。 と評されていたのだけど 今まで錦之介さんのもうちょっと後の時代の映像をみていたもので、すごくフ…

警察日記

中野翠さんの「ぺこぺこ映画日記」に「東北を舞台にした郷愁映画ベスト3」として挙げてあった作品。(あとは「女中ッ子」*1と「小原庄助さん」*2)わたしは「カルメン〜」にくらべてこちらの方がずっとよかった。まっすぐで。 森繁久弥演じるところのおまわ…

女は男のふるさとヨ

70年代初めの新宿の風景がみられると中野翠さんが書いておられて*1みてみた。西口は自分が80年に上京したときの風景に似ている。東口の紀伊国屋の並びは建設中のような画面が。そして、線路跡がものすごくノスタルジックだけど、ネット情報によるとゴール…

カルメン故郷に帰る

すごく素朴な絵のタイトルバックかわいらしい!でも、それについている曲が小学唱歌みたいな感じで、木下恵介監督ってマジメだし、ノリがあうかなーと不安がよぎるも、小学唱歌的世界×高峰秀子演じるストリッパーという組み合わせが最高で、図式的かもしれな…

綱大夫四季

巻頭には永六輔さんの口上、外函にも味。 生田家の家紋 丸に十。息子さんの咲大夫さんが名前をもらわれるときの逸話で出て来る紋の話ともつながっていて趣深い。 山川さんによる絵。など、凝ったつくりになっている。ソフトカバーの本は読みやすくていいけれ…