赤い殺意

春川ますみ演じる主婦貞子は、口べたで大地や縄文土器を連想するような女性。すべてを受け入れてのみこんでしまうが、自然そのもののような感じで、それを慈しんでいるつもりのものの手におえるものでは実はない、という感じ。「神々の深き欲望」*1でも、ヴァンプというわけでもないけれど、天然自然のまま結果的に男を振り回すことになる女性が出てきたが、今村監督の女性観ってそういうものがある気がする。
春川ますみのモノローグが、無学でもう流れるままに生きているけれど、結果的に図太い感じとか出していておもしろい。
北林谷栄の演じる老婆や差し込まれるぼそぼそ語りの老人のことばが因習的な土地の空気を感じさせ、なにか、神がかり的で予言的な効果を出している。その古典劇的色彩と、それをひきずりつつも、電化製品が出回りはじめている高度成長期の日本のアンバランスな様子の味わいが、そこからさらに時間を経過した今みることで、多層的なおもしろさも味わえる。
北林谷栄、ずいぶん早くから老け役を演じておられたんだなあ。wikipediaで彼女のことをみてみると30代後半から老婆といえば北林谷栄という定評を得たことや、衣装は自前で、盛岡の朝市のおばあさんの着物などを使っていたなどおもしろい記載をみつける。

舞台は仙台や松島。撮影も心に残る。姫田真佐久という人。調べたらこの人の撮影作品たくさんみている。

赤い殺意 [VHS]

赤い殺意 [VHS]