箱入り息子の恋

夏帆、映画「天然コケッコー*1でもナチュラルな愛らしさがあったし、ドラマ「いだてん」では志ん生の妻としての生活苦&たくましさがとても良かったがこちらでも透明感があり上品でしっくり来る。

彼女が演じているのは視覚障害者。主人公の箱入り息子は星野源

福祉映画的な感じでないところはとても良いけれど、映画全体をみるとところどころ大雑把な作り方になっている気も。スマートさへのアンチテーゼというテーマはとても良いのだけど、ラフスケッチのままGOみたいな気配も。最後の協力のところに弱視者問題研究会という名前が載っていて一応取材はされたのだろうけれど、自分が視覚障害のある人と接していると、ドラマの中ですんなりいってるシーンももっと細かい不便があるように思うし、このおはなしはちょっと都合よく描かれているような気もしてしまった。どこかテレビドラマ的な軽さも感じた。

箱入り息子の恋

箱入り息子の恋

  • 発売日: 2019/04/01
  • メディア: Prime Video
 

 

殿さま弥次喜多 捕物道中

 

殿さま弥次喜多 捕物道中 [VHS]

殿さま弥次喜多 捕物道中 [VHS]

  • 発売日: 1995/10/21
  • メディア: VHS
 

 「森の石松鬼より恐い」*1錦之助の明るい芸って観ていて気持ちが良いなと思い、ふや町映画タウンのおすすめに入っているこの作品も観てみる。こちらも同じくふや町映画タウンでは人気の沢島忠監督作品。

森の石松~」に引き続き、山形勲氏がコミカルな役を。そういうイメージなかったなあ。みかけの重厚さとのギャップが楽しくすごい魅力に。かわいらしく見える。

そして、何より嬉しくなったのは中原ひとみ氏。旧作邦画を観はじめるまで、はみがきのCMに出ている健全なお母さん風、みたいなイメージを持っていたが、「姉妹」*2での可憐さにびっくり、その後とても注目している。この映画でも「姉妹」に引き続きの、正しいと思っていることを主張しようとしているのに理解されない時の悔しそうな表情ががかわいくて仕方ない。

f:id:ponyman:20200810124247j:plainダークダックスの皆さんも登場。スーツ姿のイメージなのでこういうのもされているんだ・・と。

蜜蜂と遠雷

 

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

  • 発売日: 2020/03/08
  • メディア: Prime Video
 

 

youtu.be

CMの時によくかかっていたピアノ*1に惹かれ、原作*2より劣るような評判を危惧しながら観てみた。

監督はきっと原作が大好きでそれを咀嚼してわかりやすく提示しているのだと思うけれど、鹿賀丈史演じる個性の強い指揮者のくだりとか、斉藤由貴演じるコンテスト審査員の、審査員とは思えないようなセリフをコンテストを受けている当人に吐く場面とか、原作にはなかったように思うし、悪い意味で漫画的というか、メリハリつけすぎというか・・安っぽくまとまっている感じがしてしまう。

原作を読んでいたから映画で説明していない背景も感じ取りながら観たけれど、原作を読んでいない人だと簡単にまとまりすぎていて原作の真意が伝わらないように思う。

キーになる4人の俳優は良い。最初、松岡茉優演じる亜夜の水筒の設定など細かいところに気が配ってあり、これは!と期待したのだが・・松坂桃李は家の設定もよかったし、大変魅力的だった。あと、原作でも気になっていたコンテストの仕切りをする人の存在が映画でしっかり描かれていて、演じる平田満氏によってさらに印象深くなっているのは好ましかった。平田氏、80年代に紀伊国屋ホールで「蒲田行進曲」で風間杜夫演じるスター俳優を支えるややマゾヒスティックな大部屋俳優ヤスの役で初めて出会い、その後情けない役をさせたら絶品!というイメージであったが、最近ではドラマ「宮沢賢治の食卓」で、宮沢賢治の父親を演じられたり、社会的に信用されているようなポジションの役をされているのが一緒に年を重ねてきたような感じがして、みていて嬉しくなる。

www.wowow.co.jp

光石研さんや片桐はいりさんも出演されていて、私はお二人のことを好きなのでそれは嬉しいのだけど、光石さんが出ている、とか片桐さんが出ているだとか、それで喜んでいるようでは気が散っている感じがするし、全くの娯楽作ならそれでもいいけれど、そこもどうなのかなとも。受付にいるはいりさんは、もぎりをされていたという経験と重なって微笑ましいものではあったが・・

全体的に考えると、この作品は絶対原作で味わってほしい。映画だけで「蜜蜂と遠雷」ってこういう話か、と片づけられるのはもったいない。

 

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

 
蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

 

 

*1:プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番ハ長調 Op.26~第3楽章よりコーダ らしい

*2:蜜蜂と遠雷 - 日常整理日誌

盆の国

 

盆の国 (トーチコミックス)

盆の国 (トーチコミックス)

 

このコミック、 何年か前に話題になって家の者が購入、私も読みかけたのだけど、その時はふわっとした線に時々ついていけなくなり、途中までしか読めなかった。

今年は自分にとって落ち着かない気分になることが多く(職場にも家庭にも高齢者がおり、気を引き締めなければならない状況が続きすぎ)自分の身近で亡くなった人たちは今のこの世界をどう見ているのだろうと考えたり、心の中で話しかけたりすることがしばしばで、お盆も今までとは少々違った心持ちで迎える感じになっている。こちらの状況が整ったもので、今日はじめから再読したこの作品はすごく自分に寄り添ってくれ、きっとこの作品を読んだこの夏を忘れないだろうという気持ちになった。

まさにまさにこの暑さとともに読むとよい作品。季節感込みで楽しめるし、主人公は中学生だからひと夏の冒険譚ぽくて、しんみりしすぎる心配はない。だからといってお祭り騒ぎではなく、あの世に行った人のこと、この世においていかれた人のことなどをとても身近に感じられ、あの世とこの世はこうつながっているのではないか?とオカルト的でなくごく生活の続きとして感じられる作品であった。京都に住んでいると井戸であの世と行き来した話やら、送り火やらほんとに身近だし。そして、しばらくこの作品を読んだ後の心持ちで過ごしてみようという気持ちになった。京都では今年はものすごく縮小した形で五山の送り火があるけれど、とりあえず行われることになってよかったな、とも強く思った。

読み終わった後、あの世の人ともこの世の人とも対話をしようとしている魅力的な夏夫さんが先日観た映画「ユマニテ*1の主人公とも重なって見えてきた。

あっちの世界にいきっきりでない設定もとても好感がもてた。タイのアピチャッポン監督の作品をみているとあの世とこの世のまじりあいがごく自然に描かれるが、ちょっとそのことも思い出す。こわがらせるとかでなく、気持ちも彼岸にいったきりでもなくて、この世はこの世の暮らしがしっかりあって、無理やり割り切るのでなく、あくまでも溶け込んでいる感じ。

架空の街っぽくもあるが、街並みやら電車に乗っていく隣の街の絵(大阪らしき風景)やらみていると、京都のこととして読んでいいはず。作者のスケラッコさんも京都在住だし。

ユマニテ

 

ユマニテ [DVD]

ユマニテ [DVD]

  • 発売日: 2002/07/25
  • メディア: DVD
 

 1999年カンヌ国際映画祭審査員グランプリ 最優秀主演男優賞・主演女優賞受賞。

ユマニテ」というのは「人間性」という意味だとDVDパッケージに載っているが、フランスの田舎町で起きた事件をきっかけに被害者、捜査を指揮する上司、隣人、仕事で出会う罪を犯した人への主人公の刑事の解釈が分かれそうなレベルの寄り添いをみていて、私には主人公がキリスト(みたいなもの?)の姿にみえてしまった。(人間というよりは神の子になってしまうが。。でも自分の中ではそれが一番合点がいく考え方。加害者のつらさ、俗な人間にも寄り添うけれど、目指すのは魂の救いであって現世利益的なものではない。→「僕はイエス様が嫌い」*1や「沈黙」*2にも通じるものありか?)主人公の生活は曇り空のようなグレーのイメージもあるけれど、菜園で育てた花の鮮やかさが心に残る。花への接し方も天上からのなにかのように思えてしまう。

役者には全くの素人を起用しているという。私がそういう映画を観た最初は濱口竜介監督の「ハッピー・アワー」*3かなと思うのだけど、1999年から世界ではこんな映画が作られていたんだな・・

森の石松鬼より恐い

 

森の石松鬼より恐い [VHS]

森の石松鬼より恐い [VHS]

  • 発売日: 1997/05/21
  • メディア: VHS
 

 戦前の映画「續・清水港」*1のリメイク。脚本のところに戦前と同じ小国英雄氏の名前も。「森の石松」の劇を演出している現代の演出家が劇の中にワープしてしまう物語。戦前版、とても楽しかったのは覚えているのだけど、細かいことはかなり忘れていて、ほかの方の記事(こちらこちら)を参考に思い出す作業を。参考にさせてもらった記事にも載っていたが、自分の感想をみていてもラストの方に出てくる七五郎役(←石松の物語では有名な人物のよう)の志村喬さんに感心していて、これはもう一度戦前版をみなければと思った。新しいほうでは、七五郎を鶴田浩二がしているのだけど、鶴田浩二はただまともなあにさんという感じで面白味とかはない。現代劇の方で鶴田浩二が芝居好きの寿司屋をやっているのはちょっと珍しかった。あまり鶴田浩二の軽妙な芝居をみたことがないから。

それと参考にさせてもらったブログにあるけれど、「續・清水港」の方では広沢寅造の浪花節がよい感じで、「すし食いねえ」の舟のあたりの虎造が相手のやりとりもとても良かったので舟は使ってもあの有名なシーンがまるごとなかったのは寂しかったな。

石松のおはなしでの最後を知っているからこその石松に転生してしまった錦之助の恐怖表現はとてもひきつけられる。でもそこからの踏み込みがなかなか感動的である。

戦前版に比べ、現代のパートに力を入れているように思われる。(バイクをふかす芝居があったり・・時代の空気?)それだけに、現代のあの人が時代劇パートではこの人、という風にわかりやすくもあり、その笑いもある。一番感心したのは照明主任の長さんと清水次郎長を演じた山形勲氏。山形氏、重厚な役をよくみているもので、次郎長親分役の時、現代と混同した石松になっている錦之助にめちゃくちゃ失礼なふるまいをされるシーンの困惑ぶりが新鮮でとてもとてもチャーミングで。

錦之助、もともと陽気なスターという感じだと思うのだけど、自分はしょっぱな「反逆児」*2みたいなシリアスなものをみてしまい、それはそれでよかったのだけど、比べるとやはりこの映画みたいな滅法元気なのがいいかもしれないなあとも思った。結婚しておられた有馬稲子の寸評なども思い出しつつ。

1960年のこの作品、ヌーベルバーグで石松を、なんて所長の掛け声もおかしい。 

 

あさドラ! 2,3

 

あさドラ! (2) (ビッグコミックススペシャル)

あさドラ! (2) (ビッグコミックススペシャル)

  • 作者:浦沢 直樹
  • 発売日: 2019/09/30
  • メディア: コミック
 

 

あさドラ! (3) (ビッグコミックススペシャル)

あさドラ! (3) (ビッグコミックススペシャル)

  • 作者:浦沢 直樹
  • 発売日: 2020/02/28
  • メディア: コミック
 

 2巻を読んだのは、緊急事態宣言下。自分の家族が入院したりして混乱の中で。

逆境の中で弱音を吐かない女の子の主人公あさの姿に高度成長期に育ってきてこの混乱に適応できない自分にとり見習うべきものを感じてしまった。最近、インフラの整っていないような世界で生き抜くことに思いを馳せていることが多い。たとえば、「風と共に去りぬ」なんかでもその辺が気になって「100分de名著」で解説しておられた新訳を手掛けられた鴻巣友季子さんのご著書を読み始めたりしている。

3巻は1964年。東京オリンピック直前。主人公は伊勢湾台風の日に飛行機に出会い操縦を喜びとしていて、ブルー・インパルスと背後でつながる。大河ドラマ「いだてん」の副読本的な楽しみ方ができた。空に描く五輪のマーク、オリンピック当日の天気、そして、1巻から走りの得意な子が出てくるのだけど、その子の走っている時の「スッスッハッハッ」という呼気。

変人の研究者の卵みたいなのも出てきてここからの展開が面白そうだけど、浦沢直樹の作品いつも初期のいろんな要素が出てくるところは大いに期待させられるのだけど、理解力不足のせいか、急に結論がでたり、結局なんだかわからなかったりもあるのでどこまで楽しめ続けるだろう・・と思いながら読んでいたりしている。