盆の国

 

盆の国 (トーチコミックス)

盆の国 (トーチコミックス)

 

このコミック、 何年か前に話題になって家の者が購入、私も読みかけたのだけど、その時はふわっとした線に時々ついていけなくなり、途中までしか読めなかった。

今年は自分にとって落ち着かない気分になることが多く(職場にも家庭にも高齢者がおり、気を引き締めなければならない状況が続きすぎ)自分の身近で亡くなった人たちは今のこの世界をどう見ているのだろうと考えたり、心の中で話しかけたりすることがしばしばで、お盆も今までとは少々違った心持ちで迎える感じになっている。こちらの状況が整ったもので、今日はじめから再読したこの作品はすごく自分に寄り添ってくれ、きっとこの作品を読んだこの夏を忘れないだろうという気持ちになった。

まさにまさにこの暑さとともに読むとよい作品。季節感込みで楽しめるし、主人公は中学生だからひと夏の冒険譚ぽくて、しんみりしすぎる心配はない。だからといってお祭り騒ぎではなく、あの世に行った人のこと、この世においていかれた人のことなどをとても身近に感じられ、あの世とこの世はこうつながっているのではないか?とオカルト的でなくごく生活の続きとして感じられる作品であった。京都に住んでいると井戸であの世と行き来した話やら、送り火やらほんとに身近だし。そして、しばらくこの作品を読んだ後の心持ちで過ごしてみようという気持ちになった。京都では今年はものすごく縮小した形で五山の送り火があるけれど、とりあえず行われることになってよかったな、とも強く思った。

読み終わった後、あの世の人ともこの世の人とも対話をしようとしている魅力的な夏夫さんが先日観た映画「ユマニテ*1の主人公とも重なって見えてきた。

あっちの世界にいきっきりでない設定もとても好感がもてた。タイのアピチャッポン監督の作品をみているとあの世とこの世のまじりあいがごく自然に描かれるが、ちょっとそのことも思い出す。こわがらせるとかでなく、気持ちも彼岸にいったきりでもなくて、この世はこの世の暮らしがしっかりあって、無理やり割り切るのでなく、あくまでも溶け込んでいる感じ。

架空の街っぽくもあるが、街並みやら電車に乗っていく隣の街の絵(大阪らしき風景)やらみていると、京都のこととして読んでいいはず。作者のスケラッコさんも京都在住だし。