読んだのは単行本版。
この作品が映画化された時の音楽に惹かれ、その作品世界が知りたくなり読んでみた。
私の好きなコンクールもの。そこで奏でられる音楽自体が語る感じ。これを映画化するのは無理といわれていたのもよくわかる。
映画の予告編で見知った配役のイメージで、栄伝亜夜(なんと「ガラスの仮面」的なネーミング!)は、松岡茉優の姿、高島明石は松坂桃李の姿で小説をなぞった。
今、ウィルス騒ぎや、またたまたま身内も病気になったりして、ともすると凹んでしまいそうな日々の中で、とりあえず自分には帰る場所(小説の続きの世界に入れること)がある、という気持ちを読んでいる間持ち続けられた。登場人物たちが一度は心を塞がせながらもそれぞれの相互作用で前に進む姿がわざとらしくなく、リアリティのある感じで描かれているから。日本の学校生活の中では、ともすると、才能があるということを隠して生きていった方が楽、みたいなくだらないことがあるような気もするけど、そんなことはねのけるような国際的なピアニストたちの希望がとても気持ちのよい作品だった。予選に力が入り、本選はさらっとまとめてあって、結果だけ読者に伝える感じもスマートだ。