沈黙

沈黙 -サイレンス-(字幕版)

沈黙 -サイレンス-(字幕版)

  • 発売日: 2017/07/12
  • メディア: Prime Video
イッセー尾形さんがすごいということを購読させてもらっているブログ*1で拝見し、録りだめしていたこの作品をみた。彼が演じたのは物事の本質をつかまえられる本当に頭のいい人物であった。
日本の庶民が英語でコミュニケーションをとっていることをのぞいたら日本製の映画のように日本の描写がしっかりしていて違和感なく作品に集中。
公立の小学校からカトリック校に進学した自分は当初、思想というより修道院での生活やマリア像の美しさなど平時のキリスト教の美にうちのめされ、この映画の最後の読経みたいなもの(それは京都で育つとあまりにも日常的)から逃れたい一心で傾倒し、その流れで「沈黙」も読んだのだけど、心を惑わすとんでもない問いかけをしている本という印象を持ち、ただ事象を読んだだけで終わっていたように思う。
今もわかっているかどうかだけど、(それが教会であっても)人間の作った制度に従うのでなく、目の前の人間とどう対峙するか、それがイエスの伝えた「愛」だということだという風に私はこの映画を理解した。神の沈黙ゆえに無神論に走るというような話ではない。
先日「いだてん」で、浅野忠信氏が保守系議員のいやな感じを上手に演じている姿に驚きかつ感心したのだけど、こちらの映画でもそっち系の人間をうまく演じている。
またイチゾウという切支丹村の精神的支柱になっているような人物を演じている笈田ヨシという俳優さんの神々しさにもうたれた。塚本晋也氏と彼のコンビネーション、素晴らしい。
現世と天上をつなぐ象徴のような窪塚洋介もほんとに適役。彼の持つものをとてもうまく引き出して生かしている。
マーティン・スコセッシの映画のカトリック的な悩みが描かれたものって、みた瞬間は地味な印象だったり、この映画で語られるそれこそ沼の日本に生活している自分にはそこまでピンと来なかったりもするのだけど、生活の中でじんわりと迫ることかある。以前みた「救命士」*2なども、みたときの感想を読むとさえないけれど、救わなきゃいけない相手が無限に発生する中での無力感とか、ふと客のすごい高齢化が進んでいる近隣のショッピングセンターにいるときに思い出してしまったりすることがある。