森の石松鬼より恐い

 

森の石松鬼より恐い [VHS]

森の石松鬼より恐い [VHS]

  • 発売日: 1997/05/21
  • メディア: VHS
 

 戦前の映画「續・清水港」*1のリメイク。脚本のところに戦前と同じ小国英雄氏の名前も。「森の石松」の劇を演出している現代の演出家が劇の中にワープしてしまう物語。戦前版、とても楽しかったのは覚えているのだけど、細かいことはかなり忘れていて、ほかの方の記事(こちらこちら)を参考に思い出す作業を。参考にさせてもらった記事にも載っていたが、自分の感想をみていてもラストの方に出てくる七五郎役(←石松の物語では有名な人物のよう)の志村喬さんに感心していて、これはもう一度戦前版をみなければと思った。新しいほうでは、七五郎を鶴田浩二がしているのだけど、鶴田浩二はただまともなあにさんという感じで面白味とかはない。現代劇の方で鶴田浩二が芝居好きの寿司屋をやっているのはちょっと珍しかった。あまり鶴田浩二の軽妙な芝居をみたことがないから。

それと参考にさせてもらったブログにあるけれど、「續・清水港」の方では広沢寅造の浪花節がよい感じで、「すし食いねえ」の舟のあたりの虎造が相手のやりとりもとても良かったので舟は使ってもあの有名なシーンがまるごとなかったのは寂しかったな。

石松のおはなしでの最後を知っているからこその石松に転生してしまった錦之助の恐怖表現はとてもひきつけられる。でもそこからの踏み込みがなかなか感動的である。

戦前版に比べ、現代のパートに力を入れているように思われる。(バイクをふかす芝居があったり・・時代の空気?)それだけに、現代のあの人が時代劇パートではこの人、という風にわかりやすくもあり、その笑いもある。一番感心したのは照明主任の長さんと清水次郎長を演じた山形勲氏。山形氏、重厚な役をよくみているもので、次郎長親分役の時、現代と混同した石松になっている錦之助にめちゃくちゃ失礼なふるまいをされるシーンの困惑ぶりが新鮮でとてもとてもチャーミングで。

錦之助、もともと陽気なスターという感じだと思うのだけど、自分はしょっぱな「反逆児」*2みたいなシリアスなものをみてしまい、それはそれでよかったのだけど、比べるとやはりこの映画みたいな滅法元気なのがいいかもしれないなあとも思った。結婚しておられた有馬稲子の寸評なども思い出しつつ。

1960年のこの作品、ヌーベルバーグで石松を、なんて所長の掛け声もおかしい。